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第十七章その5
「これが勇者だけが知らずに、他の人族が知っている真実じゃ。」
老婆が最後に付け加えた。
「オラは…勇者は元々は魔族を滅ぼす者だと教えられただ。」
中年男性が言うと、老婆はそうじゃ。と頷いた。
「んだども、ババ様が言うように、勇者がオラ達を自由にしてくれる。神殺しをしてくれる。とも聞いていただ。」
再び老婆が、そうじゃ。と頷いた。
「儂らは、勇者を使って神を殺してもらう。そして儂ら人族がこの地の支配者となる。先祖達の願いを叶えるために、こうして語り部を受け継いでいくのじゃ。」
老婆に言われて中年男性は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
事の重大さが理解できたようだ。
人族は悪意に満ちていた。その悪意を持って他の種族を殺せる狡猾さも持っていた。
人族は支配者になりたかった。
そのための手段を揃えていた。
人族の目的、それは勇者を使って神も魔族も滅ぼすこと。
そのために、何代にも渡って語り部が目的と意志と執念を伝えてきた。
今日ここに、人族の語り部がまた1人産まれた。




