第十七章その2
みかん町ではカルドン達が情報を集めていた。
「どうだ?」
カルドンがグラジオラス・ローゼル・ヒゴタイに問う。
3人とも首を横に振る。
「まぁこの町は小さいからな。情報がなくても仕方ないが、それにしても魔族についての記述があまりにも少ないな。」
カルドンが口元に手を当てて考える仕草をする。
「僕たちは許されないことをしてるんだよね…」
ヒゴタイが俯きながら言う。
それに応えたのはローゼルだった。頷きながらローゼルが言う。
「そう。自分たちの幸せのためだけを考えている。他人なんてどうでもいいって考え、それが人族で人族らしいからなんだってさ。ウチらは勇者を傷つけて苦しめることを知ってて行動を共にしてたんだから…」
「チーゼルも言っていただろ?人族が長年求めていた勇者が今やっと現れたんだ。我々人族は勇者を利用して神になる。」
カルドンが慰めるように言う。
「ただ、勇者があれ程いい奴だったとは予想外だったな…」
と付け加えた。
「私は、勇者様を裏切ることはやはりできません…」
グラジオラスが言うと、カルドンが頷いた。
「俺も気持ちは同じだ。だが俺は自分の幸せを優先したい。すまないなグラジオラス。俺と君の幸せが俺には何よりも大事なんだ。」
カルドンの言葉を聞いてヒゴタイもローゼルも頷いた。
「僕も太郎ちゃんもダリアちゃんも好きだけど、やっぱり自分の命が一番大切。」
「ウチも。勇者には悪いけど死にたくない。最後にいい思い出ももらったし、ウチらの神殺しを勇者にしてもらいたい。」
ローゼルの言葉にカルドンは、それが普通だ。と言った。
「カルドンさん。」
4人のところにギルド長がやって来た。
「やっぱり魔族の情報は全然なかったよ。人を襲うということも書かれてなければ、危険とも安全とも書かれてない。分かっているのは、魔族がこの世界で一番最初の生物ってことだけだ。」
「やっぱりウチらが親から代々聞いてきた話しと一緒だね。この世界の成り立ちについての話しと。」
ローゼルが、ギルド長の話を聞いてカルドンに言う。
「あぁ。そしていつか勇者がこの世に現れた時、魔族を滅ぼして人族が安心して暮らせる世がやって来るって話だったな。」
カルドンが頷く。
「で、神についてなんだが、見たという人もいなければ、神なんて創造上のものだとする人がほとんどだな。特別な宗教などでは、神の存在を認められているが、見たとか話したなんて人は1人もいねぇ。一応、<神の村>には神がいるという噂はみんな聞いているみたいだが…」
ギルド長が一番の報告をするが、やはり神の軍勢とやらの存在については分からなかったようだ。
「でも変だよね?それなのに、僕たち人族は勇者が現れた時に歓喜したんだよ?これで神を恐れる心配がなくなったって。」
ヒゴタイが声をひそめて言う。
「勇者という存在が何なのか。知らなければいけないかもしれませんね。」
ヒゴタイの言葉を受けてギルド長が言う。
「私が聞いたのは、勇者という存在は魔族を滅ぼすのが責務だということだけでした。でもマスターから聞いた人族の願いを聞いて、少しその見方が変わりました。」
とグラジオラス。
人族の願いこそが神殺しなんだと付け加えた。
ところが、先ほどのギルド長の話によれば、その神殺しすべき神という存在がいないのでは?となっているのが現状だった。
「俺たちの仲間が<神の軍勢>と名乗る者に殺されたわけだが、それすらも魔族の策略という線もあるのか?」
カルドンが疑問を抱くのも無理ない。
「そもそもなんで人族は神殺しをしたいんだ?神が創造上のものなら、神殺しも創造上で行って人族を神と勝手にすればいいんじゃないのか?」
カルドンの言葉にギルド長がはっとした顔をする。
「そういえば、我々人族が神を生み出したという言葉をよく聞きますよね?創造上ではできない何か原因があるってことですかね?」
「やっぱり、勇者たちと一緒に<神の村>に向かうのがベストっぽいね。で、ウチらの目で見定めるのが最適だよ。」
ローゼルは結論を先延ばしにしたいと言う。
「僕はもうこれ以上太郎ちゃんを苦しめたくないよ。ここでお別れするのがいいと思う。」
ヒゴタイはここで太郎たちと別れて、自分たちは自分たちの生活に戻りたいと言う。
カルドンとグラジオラスはまだ結論を出せないでいた。
不穏な空気が辺りを包んだ。




