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【悲報】勇者に転生したワイ魔王の娘に好かれる  作者: shiyushiyu
それぞれのスタートとゴール

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第十六章その3

有頂天になっていた。


スカーレットといい感じになった時依頼の高揚感を感じる。


人とはこんなにも簡単に感情が変わる生き物なのか。


「タロー。ローゼルと付き合ったのか・おめでとうなのだ!」


なぜか夕飯の時はみんなに祝福までされた。


スカーレットの時は怒られてたのに。


「言ったでしょ?カルドンの計画だって。あんた以外みんな知ってるのよ。ヒゴタイがあんたにカミングアウトすることも、ウチが告白することもね。みんなで話し合って決めたことなの。」


ローゼルが隣に座って笑ってくる。


ドッキリみたいなもん?


「で勇者。今夜だけどウチと一緒に寝る?」


ブー!


飲んでいたシチューを吐いてしまった。


「ねねねねねね寝る?一緒にぃ?」


声が上ずってしまった。


「何驚いてんのー?」


あははーと笑われる。からかわれたのか。


耳元で、勝負下着だよ♥


と囁かれてからは、食事に集中できなくなった。


「一緒に寝る寝ないは別にして、今夜は祭りがあるらしいから、2人で行ってくるといい。」


そうカルドンに言われて、早速ローゼルと向かうことにした。


「ローゼルは浴衣に着替えるからタローはちょっと待つのだ。」


ヒゴタイとダリアがローゼルの着付けに向かう。


「さて、すまなかったな。太郎、君をのけ者みたいな扱いにしてしまって。」


カルドンが素直に謝って来る。


こういうところで、大人だなと痛感させられる。


ワイは、チーゼルにもヒゴタイにも謝ることは出来なかったな。


そうだと言って、カルドンもトイレに向かい、何気に初めてグラジオラスと2人きりになった。


あぁ、これも計画か。


「勇者様…」


相変わらずのカワボだ。


「私は、勇者様のことがずっと好きでした。憧れの存在でもあり、目標でもあり、尊敬でもあり、私の全てでした。でも、こんな私に勇者様が振り向いてくれるはずもなく、そんな私を受け入れてくれたのがマスターでした。私は、今でも勇者様のことが好きです。でも、マスターと共に歩む道を選びます。」


ぺこりとお辞儀をしてくる。


「ありがとう。」


そんなグラジオラスに向かって手を差し出し、感謝の握手をする。


こんなワイを尊敬してくれて目標にしてくれてありがとう。


ローゼル達が戻ってきた。


カルドンも一緒だ。


ローゼルはいつもと違って髪をあげて両サイドでお団子にしている。


浴衣は意外と似合っている。


「どう?」


照れながらワイに聞いてくる。


こんな時に気の利いた言葉が浮かばないワイが情けない。


「いんじゃない?」


「太郎、そこは綺麗とか似合ってるよだ。」


カルドンに咎められるが、後の祭りだ。


ヒゴタイとグラジオラスが笑っている。


「気を付けるのだぞ。」


ダリアの声がワイとローゼルの後を追いかけてきた。


金魚すくいにヨーヨー釣り、射的に輪投げ、懐かしいものがたくさんある。


「あんたってあれだね。やっぱり優しいんだね。」


りんご飴を頬張りながらローゼルが言う。


「優しい?」


「ウチと付き合ってくれてるし、お祭りデートもしてくれる。」


「いや、俺は別に優しさで付き合ったりデートしたりしてるわけではないけど?」


そう答えると、ふーん。と曖昧な返事をされた。


なんだ?機嫌を損ねるようなことをしただろうか?


手か?手を繋げばいいのか?


だがワイの両手は金魚にヨーヨーにスーパーボール、射的や輪投げの景品で塞がっている。


ローゼルの両手はりんご飴とわたがしで塞がっている。


ワイがオドオドしてると、ローゼルが笑ってくる。


「別に無理に手を繋がなくてもいいっしょ。今は難しいこと考えないで、今を楽しもう。」


あれ?ローゼルってこんなに可愛かったっけ?


恋は盲目って言うけど、やっぱり好きになったり付き合ったりすると、マイナスの部分がプラスに見えちゃうもんなのかな?


お祭りを満喫したワイとローゼルは、夜遅くに宿に帰る。


ここらでちゅーか?


なんて思っていると、


「んじゃね。また明日おやすみ♪本当に夜に襲って来てもいいんだからね?」


ローゼルはウインクして部屋に戻って行った。


ワイも部屋に戻るとカルドンがいなかった。


あれ?まだ出かけてるのか?


でも眠すぎて考える余裕もなかった。


翌朝カルドンがグラジオラスと一緒に朝食の席に来た。


あぁ、一緒の部屋だったのか。


妙に納得する。


さて、今日は何をするんだ?


「ふむ。準備も出来たことだし、太郎とダリアは山脈へ向かうべきだろう。」


唐突にカルドンに言われた。


え?準備ってなんかしたっけ?


ダリアは、分かったのだ。


とか言ってるし。


町の入り口でカルドンに呼び止められる。


「太郎。君は勇者だ。俺は勇者一行として仲間になれたことに誇りを持っている。願わくば、君は君の心のままに進んで欲しい。道に迷った時に、勇者だからという理由で行動を取ることがないように。俺も最大限、君をサポートするよ。」


勇者だからこういう行動を取らなければいけない!ということがないように?


ちょっとよく分からないけど…


「分かりました。」


そう返事していた。


カルドンと入れ替わるようにローゼルが来た。


しばらく離れることになるからな。寂しくさせてしまう…


「勇者。ありがとね。昨日はウチの人生で最高の日だったよ。」


ワイの首に抱き着いてくる。


「だからさ、ウチら別れよう?」


え?


思わずローゼルを離していた。


「なんで?」


自然と言葉が口からこぼれ落ちる。


「最初から決めてたことだから。1日だけ付き合って別れるって。これもみんなで決めてたこと。あんたは無自覚かもしんないけどさ、あんなの中には常にダリアがいるんだよ。スカーレットだってずっと気が付いててあんたと付き合ってたんだよ?たった1日でもさ、幸せな時間を貰えてウチは嬉しかったよ。ダリアを幸せにしなかったらウチが許さないからね!」


涙を浮かべながら笑顔でそう言うローゼルにワイは何にも言えなかった。


さぁ。とカルドンに促されてワイとダリアは先を進むことにした。


心に穴が空いたような、逆に妙にすっきりしたような不思議な気持ちになった。


ワイの中には常にダリアがいた。


出会ってから最初からずっと。


ワイは認めていないだけでダリアのことをずっと好きだったのだろうか?


ヒュイと、ティムがワイの近くに飛んできて頷いたように見えた。


「タロー?」


少し前を歩くダリアがこちらを振り返る。


朝日を背にしたその姿は、なぜか神々しかった。


あぁワイはきっと、この子を守るためにこの世界に転生してきたんだ。


勇者に転生したワイは魔王の娘に好かれたけど、ワイも魔王の娘を好いてしまったんだな。


これが悲報なのか朗報なのかは、今のワイにはまだ分からないことだった。


ワイはそっとダリアの手を握ってゆっくりと歩きだす。


驚いた表情を見せたダリアも、にこりと笑ってからワイと共に歩む。


目指すは山脈だ。


日の光が筋となって、ワイ達の進むべき道を照らしてくれているような気がした。

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