第十五章その2
<ラベンダー湿原>を抜けると、目の前に大きな山々が見えてきた。
<ラベンダー山脈>だ。
「ここの山脈の東側に<ドワーフの洞窟>があるらしい。俺達は西側のみかん町で食糧とかを補給する。」
カルドンが皆に言う。
ワイ達は、人間以外の他の種族を味方につけつつ、<神の村>を目指す。
りんご市から討伐隊が出ているからだろうか?
強敵に会わずに山脈へとたどり着いた。
山脈の一部からは水が流れているのか、大きな川となっている。
この川が<レモングラス川>と呼ばれており、川を渡る橋や船はないらしい。
「この川は、<レモングラスの森>の脇を通っていて、そのまま<レモングラスの海>に繋がっているらしい。」
カルドンが地図を見ながら説明してくれる。
カルドンの説明によると、その川が山脈の途中で細くなっているらしく、そこから川を渡って山脈の脇を通りながら、<ラベンダー砂漠>へと入るらしい。
砂漠を東に向かうと山脈があり、山脈の向こう側には<ドワーフの洞窟>が、砂漠の西側には平野があり、その先にみかん町がある。
砂漠の北は川、南は草原となっている。
「みかん町で新しい地図を買わないとな。」
カルドンが言うには、ここら一帯はもう持っている地図では載っていないらしい。
「お金もないし、モンスター退治の依頼をすることになるかもしれないけどいい?」
ローゼルがワイとダリアに訊いてくる。
ダリアが魔族だと知ってから、みんなモンスターと戦う度に聞いてくれる。
嬉しいが、そこまで神経質にならなくてもとも思う。
何度も言っているのだが、慣れるまでは時間がかかりそうだ。
「ぐるる…」
<レッドドラゴン>の子供が威嚇した。
もう袋にはなかなか入らなくてなっている。
一応竜騎士という職業があるから、ドラゴンを連れても問題ないらしい。
だから今は空を自由に飛ばしている。
そんなドラゴンが前方に向かって威嚇した。
「む。ティムがモンスターを発見したようだ。」
カルドンが言うティムとは、ドラゴンの名前だ。
もちろんカルドンが名付けた。
目の前に<ラベンダースコーピオン>が現れた。
「いきましょう!」
みんなに確認される前にワイが全員に号令を出す。
<ラベンダースコーピオン>は、その名の通りサソリと同じ姿をしていた。
両手にハサミを持ち、明らかに毒がありそうな尾を持っている。
大きさは人間と同じくらいなので、巨大なサソリといった印象だ。
「毒消しが効くか分からん、尾の針には注意しろ。」
カルドンがみんなに注意を促す。
ローゼルが遠くから弓矢を打つ。
最近はローゼルの矢の命中率がかなり向上している。
――!
サソリは驚く早さで矢を避けた。
「早いのだ!」
パンチを仕掛けようとしたダリアが呆気に取られた。
「ダリア!素手じゃ不利だし危険だ。一旦下がれ!」
ワイがダリアにそう指示を出した瞬間、サソリがダリアを襲う。
間一髪、針は避けたもののハサミで腕を切り裂かれる。
ダリアの腕から真っ赤な血が噴き出る。
「俺がやろう。」
ヒゴタイが<リカバリー>の魔法を唱えようするのを制止して、カルドンが進み出る。
「我らを守りし女神さま。その呼び声に応え給え。我が精神力を媒介にその子らに祝福を。」
長ったらしい詠唱の後に回復魔法でダリアの傷を治した。
ヒゴタイは、<スピード>の魔法で味方みんなの素早さをアップさせた。
ローゼルが提案した、戦力の底上げが見る見る出来ている。
カルドンは<リカバリー>を覚えたし、グラジオラスも<風の刃>を習得している。ローゼルは地面系の魔法をいくつか覚え、ヒゴタイも<プロテクト>を習得した。
更にグラジオラスの魔力は確実に上がってきている。
<フレア>が使える程ではないにしろ、<ファイア>一発で空になることは無くなった。
「もう少し魔力が増えれば、<風の刃>なら打てそうです。」
と前にカルドンに報告もしていたな。
ティムがサソリに向かって火球を吐く。
もうティムはブレス攻撃を少しずつ覚えていた。
火球がサソリに当たり、さらにグラジオラスの<ファイア>が炸裂した。
サソリが止まった場所にピッタリと火を付けた。
「留めは任せな!」
ローゼルが矢を放つとサソリは動かなくなった。
最近、ワイたちの連携もかなり順調だ。
砂漠を西に進んで<ラベンダー平野>へとたどり着く。
みかん町はもう目の前だ。
思った以上に順調な旅だった。
しかし順調な旅はそこで終わりを告げた。




