第十四章その1
「こっちだ勇者さん!」
嫌な予感はこのことだったのか。
ダリアが瀕死の重症だと?
また魔族に襲われたのか?
焦る気持ちを抑えつつ、ダリアの様子を見ると、お腹にぽっかりと穴が開いていた。
ダリアは安らかに眠っている。
――死んでいる?
「大丈夫。ギリギリだけど生きてるよ。」
医者のおじさんがそう言ってくれる。
とはいえまだ予断を許さないようだ。
「俺は、間違っていた…」
わなわなと震えながらワイは、パーティーのメンバーに言う。
「さっき、<ブルードラゴン>の子供を殺した時は、そこまでやらなくても。って正直思った。でも、もし今ダリアを襲ったのが魔族だったらって考えると、やっぱり魔族は根絶やしにしなければいけないんだって思う…」
「そうだな。しっかりと気持ちを整理して、次の討伐に参加しよう。」
ヤグルマソウが慰めてくれる。
ワイは1人部屋に戻る。
革袋にはドラゴンの子供がいるが、今は魔族は見たくもない。
そのまま部屋の隅に放置しておく。
ダリアは大丈夫なのだろうか?
この日の夕食は何にも喉に通らなかった。
数日後、チーゼル・ヤグルマソウ・モナルダ・オミナエシ・アザミの5人は<レモンバームの丘>のモンスター討伐に参加した。
この討伐チームの目的は、すもも村までの動線の確保だ。
グラジオラス・カルドン・ローゼル・ヒゴタイ・アヤメは魔法の習得を目指すため、りんご市に待機した。
ワイは、お見舞いをしつつアイテムを集める。
『スカーレット。俺は絶対に魔族を滅ぼしてみせるからな。』
スカーレットのお墓参りも終わり、ダリアが入院している病院へと足を運んだ。
コンコン。
どうせノックしても声は返って来ないんだがな。ここ数日、ダリアが目を覚ます気配はない。
「どうぞ。」
懐かしい声がする。
勢い良くドアを開けてしまった。
「タロー。ドアはそっと開けるものだぞ。」
弱々しくダリアが言う。
うるせい。心配かけやがって。
まだ起き上がれないらしい。
ん?いつもとダリアが様子が違う。弱っているからだけではない。辺りを気にしている気がする。
「どうした?」
ワイが聞くと、少し慌てたようなびっくりした表情をする。
「タロー。ダリアのことを気にかけてくれるのか?いつものタローなら絶対に気にかけないのだ。」
「あからさまに周りを気にしてたら何かあると思うだろ?」
「タローは1人で来たのか?」
少し考えてからダリアがそう言う。なんだ?何かあるのか?
ワイは黙って頷く。同時に部屋のドアを閉めた。
きっと聞かれたくない話があるのだろうと、直感した。
「実は話しておきたいことがあるのだ…」
そう前置きをしてダリアは、自分が襲われた状況を教えてくれた。
…
神の軍勢?神たちは魔族を滅ぼしたい?
「神が俺たちに魔族を滅ぼさせたいと思うなら、何で俺たちの仲間を殺したんだ?」
ワイの呟きにダリアは首を横に振った。
なんだ?もう何を信じていいのか分からなくなってきた…
魔族が悪という考えは、神たちによって植え付けられた印象操作ってことか?
でもそれなら、ワイ達に直接魔族を倒せと言えばいいのにそれをしない理由は?
ワイがダリアと仲良くしているから?いや、そうだとしても魔族を滅ぼすのが正しいと言う方法はいくらでもあるはずだ。
わざわざ他の人間を扇動する必要はないはず。
「何か他に大きな目的があって、この扇動を俺に知られたくなった。だからダリアを殺そうとしたってことか…」
「ダリアはずっとタローを守るのだ。だから傍にいたいのだ。」
何を言ってるんだよ。今はダリアの方が重症でワイに守られているじゃないか。
守ると言えば、そうだ。
「ダリア。これもみんなに秘密にして欲しいんだけど、実は<レッドドラゴン>の子供を1匹拾ったんだ。」
今度はワイが2匹のドラゴン討伐の様子を話して聞かせた。
まだ起き上がる力もないはずなのに、ダリアは拳をぎゅっと握った。
ただ、ワイ達はこのことをすぐにはみんなに話さなかった。
特に意味があったわけではないが、誰が怪しいか分からないというのも1つの理由だし、わざわざ言う必要がないというのもあった。




