第十三章その4
時は少々遡る。
「ゼウス様。私の息のかかった者が2名、勇者と接触したようです。」
ジントニックが言う。
ゼウスは、そうですか。とだけ応えて気にも止めていない様子。
『神の村まで勇者を連れて来なければ意味がないということか…』
ジントニックがそう考えるように、息のかかった者が勇者と接触しようと、カリモーチョの扇動が成功しようと、神の軍勢の計略が勇者にバレようとゼウスにはどうでもいいことだった。
ゼウスにとっては、勇者が神の村まで来てゼウスと対面さえすれば魔族を必ず滅ぼすと分かっていた。
だからこそ、魔王ブッドレアもダリアを城に戻そうとした。
魔王なら娘の命を最優先するはず。そして勇者たち人間は自分達の命を優先するはず。
人間は本当に愚かで扱いやすい。そんな人間だから魔王の首も取れるというもの。
ゼウスがニヤリと笑った時、世界に大きな衝撃が走った。
「魔王の娘が覚醒したか…」
ゼウスの小さな呟きは誰にも聞こえなかった。
急がねば。という呟きもまた、誰にも聞こえなかっただろう。




