第十三章その2
出発の朝。
天候は雨。気温はやや低い。
カルドンに言わせると、<レッドドラゴン>が弱体化する天候らしくちょうどいいらしい。
魔法はそんな簡単には覚えられないが、行軍中も習得は続いていた。
ヒゴタイがあと少しで習得出来そうらしいが、魔法の知識が全くないワイにはよく分からない。
雨で地面がぬかるみ、<ラベンダー山>の時と比べると行軍は非常にゆっくりだった。
「だ・か・ら!内なる気を見つけるのよ!」
「何?内なる気って。分かるように説明して。」
「キー!何なのよこの子はもう!あなた弓矢魔法使ってるんでしょ!その時に使う魔力のことよ!それを土とか砂とかにイメージして使うのよ!」
「わかんない。ウチいつも何となくやってるもん。気がついたら弓矢魔法も使えるようになってたし。」
後ろではローゼルとチーゼルがワーワーギャーギャー言ってる。
前ではカルドンが、グラジオラス・ヒゴタイ・アヤメに対して魔法の講義をしている。
あれ?カルドンの方がハーレムルートか?
「いつもこんなに賑やかなの?」
隣でモナルダが微笑みながら言う。
「そうですね。だいたいはこんな感じです。緊張感とかない感じで。」
「いつ死ぬかも分からないアチ達冒険者にとっては、常にこうやって元気でいることの方が大切よ。仲間割れなんて絶対にしたらダメよ?」
ワイが答えると今度は、アザミがそう言ってきた。
仲間割れか…そういえば事情を知っていたのはワイだけなのにダリアの意見を無視しちゃったな。
帰ったら謝るか。
それにダリア。1人で街の復興を手伝っているのか。ダリアなりの罪滅ぼしなのかもしれないな。
ダリアに謝って、そうした上でワイらの気持ちを理解してもらおう。そしてまた行動を共にしてもらう。ダリアが望むなら、ダリアとは笑顔でお別れもいいだろう。
「太郎!」
カルドンの鋭い声で我に返った。
<レモグラライオン>がそこにはいた。
懐かしいな。あの時はダリア・グラジオラス・ローゼル・カルドンしか仲間がいなかったっけ。
蛾に追われてたヒゴタイとアヤメを助けたんだよな。
今ではこんなにたくさんの仲間がいるのに。ダリアだけが抜けてるのはやっぱダメだよな。
ワイはナイフを構えた。
構えたがアヤメがライオンを一刀両断にしていた。
「え?」
「また力が漲ってきたんです。」
アヤメが手をグーパーグーパーしながら言う。
またか。ワイは全く感じなかったけどな。
ふと思った。
前にここは結構探索したけど、ドラゴンらしきモンスターはいなかった。どこにいるのだろうか?
「中央に<レモングラスの泉>があるんだけど、そこが<レッドドラゴン>の住処だと言われているわ。」
とアザミが教えてくれた。ちょうどすいかシティ付近らしい。
それはつまりワイらが今いる付近。
言われてみれば遠くの方に何やら影が見えるような見えないような。
「あれが泉ね。」
さすがはローゼル。弓矢を扱うだけあって目がいい。
遠くからドラゴンの咆哮も聞こえる。
どうやら戦闘が始まったようだ。
「いいこと?<レッドドラゴン>は火を使う。最悪の場合にはこの森が燃える可能性もあるの。そのことを頭に入れて戦いましょ。」
そうチーゼルが言って、この場でワイたちのパーティーは展開した。
付近には、蜘蛛や蛾、ライオンなどのモンスターがうじゃうじゃいる。
それらをドラゴンと戦っている部隊に近づけないのがワイ達の役目だ。




