第十二章その2
行軍は驚くほどスムーズだった。
先頭は街の自慢でもある討伐隊の銃士隊と呼ばれる部隊だ。
銃はこの世界では特殊な武器らしく、最高峰の飛び道具のようだ。
そんなレア度の高い武器を装備した部隊が最前列に組み込まれ、目標の魔族を発見すれば敵の攻撃の射程範囲外から銃で攻撃をした。
「随分と楽だな。ワシらが以前ラベンダー山を登った時は大変な思いをしたぞ。」
オミナエシが隣を歩くヤグルマソウに言う。
「俺はラベンダー山に登ったことはありませんでした。強力なモンスターがはびこっていると聞きましたが?」
「強力なモンスターだらけよ。それに、この地形がモンスターに合っているのよ。」
アザミがオミナエシの代わりに応えた。
地形がモンスターに合っている?どういうことだろう?
「それはどういう意味ですか?」
ワイの疑問をモナルダが聞いてくれた。
ワイらは山を登っているが、きちんと整備されている街道は1本しか通っていない。
他はいわゆる獣道というやつだ。
「この街道は細くて狭い。魔族たちはわざわざ街道を通る必要がない。周囲の獣道から攻撃をしてくるし、上空からも攻撃ができるのよ。」
とアザミ。
なるほど。道が決められている以上、こちらの方が圧倒的に不利なのか。
なのにここまでスムーズに侵攻している。
「りんご市の討伐隊が余程優秀なのだろうな。」
隣でカルドンがワイにそっと呟いた。
ワイもそう思う。
「太郎ちゃん。上から攻撃されたらどうしよう…」
ワイの服を後ろからヒゴタイがキュッと摘まんでくる。
可愛いなぁ。
「いざとなったら俺が盾になってやるよ。」
かっこいいワイ!ポイントアップ。
「あんた言うようになったわね。」
ローゼルから茶化された。
進軍が停止した。
今日はここで野営をするようだ。
冒険者はそれぞれ自分達のグループで手慣れた手つきで野営の準備をしていた。
「あれ?討伐隊の人達は野営の準備とかしないんですかね?」
討伐隊の人達が右往左往している姿を見てワイが訊いた。
「あぁ。討伐隊は普段野営なんてしないから、何をしたらいいのか分からないのだろう。」
オミナエシがヤレヤレと言いながら、討伐隊の方へ野営の準備を手伝いに行った。
ワイはそんな様子を見ながらせっせと木をくべる。
ワイも手慣れたもんだ。
ダリアと冒険を開始した頃なんか全然そういった準備とか出来なかったのに。
そういえばダリアはどうしたのだろうか?城に戻ったのかな?
「太郎ちゃん。隣いい?」
そんなことを考えていたらヒゴタイが声をかけてきた。
「ヒゴタイ。そうだ。ありがとね。スカーレットの髪飾り。」
まだお礼を言ってなかったことを思い出したのだ。
ヒゴタイから受け取ったスカーレットの形見は、ヒゴタイに教えてもらったお墓に供えてきた。
帰ってきたら、スカーレットが好きだったお菓子を供えてやろう。
「ううん。スカーレットちゃんのことを考えてたの?」
「ん?あぁ。」
曖昧な返事をしてしまった。
「やっぱりそう簡単には吹っ切れないよね?」
「どうなんだろう?正直、しっかりと受け入れられるかと聞かれたら、答えはノーなんだよね。でも、いつまでも立ち止まってちゃいけない気もするんだ。俺の役目が魔族を滅ぼすことなら、俺はしっかりと魔族を滅ぼしたい。」
ぐっと拳を握る。
「それに、あの時の光景を今でも夢に見るんだ。その度に魔族への怒りがこみ上げてくる。」
「スカーレットちゃんはほんとにいい子だったよね。僕みたいな人にも優しく接してくれて。」
本当にそうだ。スカーレットはみんなに優しかった。
「もしも太郎ちゃんが1人で押しつぶされそうになった時は、僕が支えになるからね?だから、僕が押しつぶされそうになった時は太郎ちゃんが支えになって?」
そう言ってワイの手を優しく両手で包み込んでくれた。
「もちろん!」
そう応えて密かにワイは、もっと強くなろうと決意したのだった。




