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【悲報】勇者に転生したワイ魔王の娘に好かれる  作者: shiyushiyu
りんご市の襲撃

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第十一章その4

スカーレットの死後どれくらいの日にちが経っただろうか。


ワイは相変わらず抜け殻のように部屋の片隅に居た。


何もする気力が起きない。


メンバーのみんなはきっと街の復興作業を手伝っているのだろう。


ワイはもう。全てがどうでもよくなった。


「太郎。話があるんだが。」


カルドンが声をかけてきたが、返事をする気力もない。


「どくのだカルドン。ダリアが話すのだ。」


元気いっぱいだなダリアは。


「タロー。スカーレットを倒した犯人が見つかったのだ。タローに話しを聞く気があるなら、下でみんなと一緒に食事を摂るのだ。」


ダリアが手を差し伸べてくれる。



え?スカーレットを殺した犯人を見つけた?


そうか。ワイは復讐をしてスカーレットの無念を晴らすことができる。


ダリアの手を取って下の食堂へと向かった。


カルドンが一言、すごいな。と呟いたが意味は分からなかった。


食堂に着くと、そこには見覚えのある2人が座っていた。


「太郎。来てくれたのね。」


チーゼルが気づいて声をかけてくる。いつもより優しいトーンだ。チーゼルも気を遣ってくれているのだろう。


「こちらの2人、覚えているわよね?」


そう紹介された。もちろん覚えている。<ミニブルードラゴン>からワイらを助けてくれた2人だ。


戦士の男はヤグルマソウという名で、吟遊詩人の女はモナルダと名乗った。


「あの時はありがとうございました。で、チーゼルスカーレットを殺した犯人は?」


今のワイにとってこの2人はどうでもいい。


確かに命の恩人だけど。


「タロー。ちょっと失礼なのだ。」


ダリアに咎められるが無視した。


「実はね、あの後2人が街の異変に気がついて戻ってきてくれたの。で、街から逃げようとする6人組を発見したんだけど、なんとそいつらモンスターだったのよ。」


モンスターが人間に変身して街に潜り込んでいただと?


「かたき討ちをしたいという君には悪いけど、モンスターだったから倒させてもらいました。」


ペコリとヤグルマソウに頭を下げられる。


だんだんとワイも冷静になってくる。


「つまり、スカーレットはモンスターにやられた?モンスターが人間に化けて街に侵入してた?」


「それなんだが、俺たち全員の情報を合わせてもそんな事例聞いたことないんだ。」


カルドンが隣に座りながら言う。


かなりやつれている。毎日情報を集めてくれていたのかもしれない。


「魔族達モンスターは確かに人間達を襲う。だが、今までこういった姑息な手段を使うことはなかった。だからこそ、我々人間も魔族を滅ぼそうとはしなかった。」


カルドンが次に何て言うのか想像できた気がする。


「だが、魔族達が俺たち人間を、手段を選ばず滅ぼそうとするのであれば、俺たちもそれに抵抗する必要があるだろう。」


チーゼルが強く頷いている。


思えばチーゼルは長年スカーレットとコンビを組んでいたんだ。


ワイよりも付き合いが長くて深い。その悲しみはワイよりも大きいかもしれない。


辛いのはワイだけじゃない。


そして怒っているのもワイだけじゃない。


「ウチ的には、勇者もいることだし、魔族を全滅させる戦いを開始してもいいんじゃないかと思うんだよね。」


ローゼルだ。


「俺たちも同感だ。」


ヤグルマソウが頷く。


「幸いにもこの街のギルドは残ってる。ギルド長と私が話した結果、他の街とも連携して魔族を滅ぼす戦争を仕掛けることが正式に決まるわ。」


モナルダがヤグルマソウの隣でワイに向かって言う。


「そうなると、エルフとの契約やドワーフとの契約は白紙ってことになるわ。あの種族たちは魔族の味方だからね。」


ふん。とチーゼルが鼻を鳴らす。


「チーゼルさんから話を聞いたよ。いずれは神の村へ向かうつもりだったとか。確かにあそこなら噂に名高い神様をも味方につけて魔族を滅ぼすことができるかもしれない。」


ヤグルマソウが身を乗り出して言う。更に、俺たちなら神の村まで案内できると。


「俺は…」


ワイの口から言葉がポロポロ零れ落ちる。


今までの空っぽだった感情が急に出てきたかのようだ。


「魔族を滅ぼしたい。スカーレットの仇を討ちたい!」


こんなに感情的になったのは、友達がワイのゲームのデータを消去した時以来かもしれない。


「噂だけどね。魔族を滅ぼす力を神様が与えてくれるんだって。で、その神様に会えるのが神の村って言われてるの。」


チーゼルが詳しく教えてくれた。


決まりだ!仲間を殺されて黙っていられる程ワイは腐っていない。ましてや好きになった女をだ!ワイにできるなら復讐でも何でもしてやる!


しかしこの場に待ったをかける人物が居た。ダリアだ。


「タロー。ダリアは魔族が悪とか人間が善とかそういう考え方は出来ないのだ。確かに魔族が襲ったかもしれないけど、いい魔族もいるのだきっと。」


ダリアは泣きそうな顔をしていた。


だがワイの決意は変わらない。


「ダリアは、スカーレットが殺された事実を見てもそう言えるんだな?それなら俺たちとはもう行動を共には出来ない。」


ダリアに冷たく当たったが、他のメンバーもワイの考えと同じようだ。


1人食堂でポツンと立つダリアを置いて、ワイ達はその場を後にした。



ワイ・グラジオラス・カルドン・ローゼル・ヒゴタイ・アヤメ・チーゼルの7人に加えて、ヤグルマソウ・モナルダが加わった。


「まずはこの街の討伐隊と行動を共にして、ラベンダー山を制覇しよう。」


カルドンが意見を出した。


「<ブルードラゴン>がいなくなれば、この街の脅威も無くなって、他の場所に戦力として送り込めるものね。」


チーゼルが頷く。


そのためにワイ達はギルドへ向かった。


「太郎ちゃん。これ。」


ヒゴタイがワイに何かを渡してくる。


これは!スカーレットにあげた髪留め。


「スカーレットちゃんが握りしめていたから、何か大切なものなのかな?って思って。太郎ちゃんが辛い時は、僕が傍で支えるから。だから1人で悩まないでね?」


心につっかえたものがすっと取れたような気持ちになる。


「ありがとう。今度スカーレットのお墓を案内してもらってもいいかな?」


泣かないように我慢しながらワイはそう言った。


ヒゴタイは笑顔でもちろん!と言ってくれた。


スカーレットと一緒に居れた時間はわずかだった。


でも確実にワイとスカーレットは気持ちが1つになれた気がする。


スカーレットに前に進むように言われている気がする。


魔族を滅ぼして欲しいと。


街に吹く風がワイの中にも吹き荒れた気がした。

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