第十話その4
咆哮したドラゴンは、巨大な翼を広げて飛翔した。
「気を付けて!空中から攻撃を仕掛けてくるわよ!」
チーゼルが注意する。
気を付けろと言われてもなぁ。
ある程度飛翔したドラゴンは、ワイらを見下すように見て水の塊を吐いてきた。
「これが青い竜のブレス攻撃か。」
カルドンが避けながら呟く。
やっぱドラゴンにはブレス攻撃があるんだ。
青は水を操るとか言ってたし、水の塊を吐いて攻撃してくるってことか。
複数の水の塊が地面に振って来る。
地面に当たった瞬間、大きな穴が空いた。
「水の塊ってレベルじゃないぞ…」
カルドンが絶句する。
とにかく一発でも当たれば即死だ。
幸いにも、落ちてくる水の塊は複数とはいえ少量だし、飛んでいる高さが高いから、落ちてくる場所のおよその検討はつく。
つまり、避けやすいのだ。
しかしドラゴンもドラゴンで、ワイらを黙って見ているわけではない。
上空より滑空してきて鋭い牙で噛みついてくる。
その速さは、<スピード>の魔法をかけられたローゼルよりも断然早い。
ギリギリ反応できてかわせる感じだ。
「あの滑空攻撃の時に狙って攻撃を当てないと倒せないわね。」
チーゼルが、軽くひっかけられた肩に手を当てながら言う。
滑空攻撃をする時以外、ドラゴンは空から水のブレス攻撃をしてくる。その時はこちらの攻撃は当たらない。
魔法なら別だが距離的に大した威力にならないとのことだ。
何かないかと無意識に背負い袋の中を漁ると、いいものがあった。
「チーゼル。これ使えないかな?」
ワイはチーゼルに<閃光花火>を見せた。
滑空攻撃してきたところをこれで目くらましし、地上に墜とせないだろうか?とワイは訊いた。
「いけるかもしれないわね。ついでに<煙玉>も使いましょ。あいつが上空にいる時には<煙玉>、滑空攻撃してきたら閃光で視界を塞いでみましょ。」
よかった。何だかんだで、アイテムがあれば何となくなるってスカーレットの言葉は案外本当なのかもしれない。
<火打石>で火を起こして、木の枝に火を灯す。
ドラゴンはと見上げると、空をまだ飛んでいる。
<煙玉>に火を点けてドラゴンの下で破裂させる。
煙がモクモクとドラゴンの方へ上がっていく。
よし!
ドラゴンは、煙から出るが、煙は広範囲に渡って登っていた。
「閃光もやっちゃって!」
チーゼルが言うので、そのまま<閃光花火>も破裂させた。
眩い光が迸る。
パーティーは恐らくみんな目をつむったはず。
目を閉じても強烈な光が瞼の裏に映る。
これだけ強烈な光なんだから、ドラゴンは堪らないだろう。
チラリと薄目を開けてみた。光は止んでいた。
キョロキョロとドラゴンを探すと地面に落ちていた。
閃光に目がくらんだのだろう。
「はぁ!」
すかさずダリアがパンチを食らわせる。更にアヤメとスカーレットが剣で斬りつける。
ガキン!
金属と金属がぶつかる嫌な音が鳴り響く。
「物凄く硬いのだ。」
ダリアが拳をさする。
私の大剣も刃こぼれしてしまいました。
アヤメが言うとスカーレットも、こっちもだ。と呟いた。
どうやら<ミニブルードラゴン>は、攻撃力よりも防御力に優れたモンスターのようだ。
「<火付石>を使って!これかなり疲れるんだけど…ぬぅん!」
ドスの利いた声で雄たけびのような声をあげたチーゼルが思いっきりパンチした。
殴られたドラゴンを中心に衝撃波のような物が飛び、砂が円形に外に飛んだかと思えば時間停止でもしかたのように円状になって砂が止まった。
その後、砂の塊となってドラゴンに降り注いだ。
技の名前が<破砂>だと後から知った。
更に、砂の塊の本当の目的はドラゴンへのダメージではなかったことまで分かった。
砂の塊にドラゴンが埋もれる一方で、地面の土が蔓のような形となりドラゴンを捕獲した。
「<捕縛土>だと?かなり魔力を持っていかれるぞ。」
カルドンが驚く。
消費魔力が半端ないのだそうだ。
だがその分効果は絶大だった。
馬鹿力の<ミニブルードラゴン>が身動き取れずに捕まった。
そこに、火を纏った剣でスカーレットとアヤメが切りかかり、火を纏った弓矢をローゼルが射って攻撃する。
<ミニブルードラゴン>は水を司るが、火が効かないわけではない。
それはあくまでもゲームや創作の世界での話。
普通に切れなくても、火を纏えば火傷もするし皮が焼き切れることだってある。
身動きの取れなくなったドラゴンを怒りを露にした。
大きく口を開く。
あれは正しくさっきと同じ咆哮の予備動作!
さっと耳を塞ぐ。
「グゴォー!」
塞いだ手と耳の隙間から咆哮が体に侵入してくる。
体の硬直は?よし!ない。大丈夫だ。
侵入してきた咆哮が少なかったからなのかは分からんが、ドラゴンの咆哮を防いだ。
チラリと周りを見ると、他のメンバーも咆哮を防いでいた。
そのままスカーレットがドラゴンに火を纏った剣を突き刺す。
ゴムが焼けたような嫌な匂いが鼻をつく。
ドラゴンが嫌がる。
「よし!効いてる!」
スカーレットがガッツポーズをする。
ドラゴンは身動きが取れないが、水のブレスと咆哮はできる。
チーゼルは時折地面に手を着いて魔法が解けないように、断続的に<捕縛土>をかけていた。
「さすがに精神力が尽きそうだわ…」
魔力や体力は<精神薬>で回復できるが、いわゆる気力とは精神力などはアイテムでは回復はできない。
「火は効いているがかなり硬いのだ。」
ダリアの手からは血が出ていた。
ドラゴンの動きを止めたはいいが、どうしても決定打がなかった。
攻めあぐねていると、ドラゴンの目が光ったような気がした。
野生の勘とでも言おうか、嫌な予感がした。
「今、ドラゴンの目が光った気がした!何か来るかも!」
「何?一旦引いた方がいいか?」
カルドンがチーゼルに訊く。
「距離を取りましょ。」
チーゼルが頷く。
その瞬間、上空から大量の水の塊が降ってきた。
雨を降らせた?
「避けて!」
スカーレットが叫ぶが遅かった。いや、避けられる速さではなかった。範囲も広範囲だった。
注意を促したスカーレットですら、避けれなかった。
ボギッ。
太い木の枝が折れた。
あれに当たるのは危険だ。
「頭を守れ!」
カルドンが言うがそれどころではなかった。周囲は水の塊の雨で埋め尽くされた。
ワイは両手両足がダメージを受けた。ピクリとも動かないところを見ると、骨が折れたのかもしれない。
他のメンバーも倒れたきりピクリとも動かない。
<ミニブルードラゴン>はワイらが想像していた以上に強力なモンスターだったようだ。




