第九章その4
りんご市を北へ進むとミント洞窟がある。
「この洞窟は上に向かう層と下に向かう層に分かれてて、今のところ上は5階まで下は7階まで踏破されてるの。」
チーゼルが簡単に教えてくれた。ミントスライムは入り口すぐの1階層に出現するらしい。
「1階層は比較的弱いモンスターしかいないから安全のはずよ。」
と締めくくった。
入り口は外からの灯りで明るいが、奥に行くにつれてだんだんと暗くなってきた。
購入しておいた松明に灯りを灯して先に進む。
奥でも酸素があるということは、所々穴でも空いているのだろうか?
「いたぞ。」
周りをキョロキョロしていたワイにカルドンが教えてくれる。
いかにもスライムという感じのモンスターが目の前をぷよぷよしていた。
「この世界で最も弱いモンスターの1匹だな。」
両腕を組んでカルドンが説明する。
ああいうのならワイでも倒せる気がするな。
「2階に上がれば<グラスランドタイガー>もいるから、その依頼もこなしちゃいましょ。」
チーゼルがそう言って、ワイとダリア、カルドンとグラジオラスでこの階のスライムをなるべくたくさん倒すことにした。
他の5人は2階層へ上り、<グラスランドタイガー>を倒してくることになった。
1階層のモンスターはすでに見たことあるモンスターばかりだった。
大きめで毒がない<レモングラスの蛇>。あのダリアが非常食とか言って捕まえてたやつだ。
巨大な毒蜘蛛<レモグラスパイダー>や、集団で毒鱗粉攻撃をしてくる蛾<悪意の蛾>などがいた。
強敵と言っても、<レモグラライオン>くらいで、以前は苦戦したが1匹ならダリアとグラジオラスで楽勝だった。
「アイテムがあるとここまで違うものなんですね。」
素直にワイは喜んだ。
グラジオラスの魔法が連発できるのは非常に助かった。
「あぁ。だが資金稼ぎをしているからアイテムの連発は控えた方がいいだろうよ。」
カルドンが釘を刺す。
確かに、お金を稼いでいるのにお金を使うようなことをしていては意味ないな。
<精神薬>は意外と高めのアイテムだし。
「なるべくダリアが倒すのだ。」
倒したライオンの肉は、食用となるので、カルドンが器用に燻製に仕上げる。
洞窟内が煙いが肉のためだ!
「む。煙いのだ。前が見えなくなるのだ。」
とダリアも文句言ってるがまぁ気にしない。
ダリアが2匹目のライオンと戦っている間にワイも2匹目のスライムと戦ってみよう。
人生初の戦闘だ。
1匹目のスライムはダリアがさくっと倒しちゃったし、今はグラジオラスが粘性液を絞ってるはず。
どう頑張っても扱えないであろう剣を鞘から抜く。
重い。。。いつも戦闘中は鞘ごと地面に置いてたからな。
両手で持っても重すぎる。
でもこれだけリーチが長ければ、飛び道具のないスライムから攻撃されることもないだろう。
「はぁ!」
よろめきながら高く剣を掲げて下に振り下ろす。
ビチャァッ!
スライムが砕け散った。
倒した…のか?
剣でツンツンしてみるがびくともしない。
よし!これでワイもレベルアップだー!
グラジオラスの見よう見まねで粘性液を絞る。
驚いたのが、飛び散ったスライムの破片からも粘性液が絞れたことだ。
ダリアを見ると、パンチの連打でライオンを寄せ付けていなかった。
確かあのライオンは動きが少し素早かったな。
そう考えながら、ダリアの隣に剣を構えてライオンと対峙する。
「何をしているのだ?タローには荷が重いのだ。」
「いいんだよ。俺は囮みたいなもんだから。ダリアが倒してくれ。言っておくけど、俺この剣扱えないからな。」
「タロー!それは足手まといというやつなのだ。」
うるさいよ!
「はぁ!」
とワイは大げさ剣を振りかぶる。
当然のようにライオンの意識はワイに向いた。
ワイは上手に剣が扱えないので、少しよろける。
スキだらけのワイにライオンの鋭い爪が迫る。
ドゴォー!
ダリアのキックが炸裂した。
「貸すのだ!」
ワイの剣を泥棒の様に奪ってライオンに留めを刺していた。
「よし。食べれる部位に切り分けるのは俺に任せろ。」
カルドンが言い、手際よく解体する。
ライオン2匹から非常にたくさんの燻製肉が出来上がった。
「当面の食糧には困らなそうだな。」
それにしてもこの洞窟。普通の街道と違って次々とモンスターが出てくる。
ワイはもう剣が使えない。筋肉が悲鳴をあげている。
ダリアは蛾と戦っていた。
「お待たせー。」
そう言って奥からチーゼル達が帰ってきた。
<グラスランドタイガー>を倒した証として、毛皮を剥ぎ取っていた。
「ここ、資金稼ぎには持って来いの場所だぞ。」
カルドンがやや興奮気味に言う。
「そうねぇ。スライムとライオンをたくさん狩るって手もあるけど、私としては湿原のモンスターを狩った方が効率的だと思うわ。」
ワイもチーゼルの意見に同意した。
こうして村へ戻って、依頼達成の報酬を貰い、余った粘性液は売却した。
「当面のお金にも困らなそうね。明日湿原へ向かいましょ。依頼もついでにこなす?」
チーゼルがワイに訊く。
「いえ。モンスターを限定してると大変ですし、とりあえず暫くはモンスターを減らすことを目的として、依頼はお金がなくなってきたらにしませんか?」
「うむ。俺もその意見に賛成だ。いざとなれば、また洞窟で稼げるだろう。」
カルドンも賛同してくれた。
こうしてワイらは、ラベンダー湿原へ向かうことになった。




