第七章その3
ダリアは3日後に目覚めた。
医者によると、毒を吸い出したおかげで血清の効果があったのかもしれないが、信じられないと言っていた。
もしかしたら、たくさん毒消し草を使ったからか、はたまた魔王の娘だからだったのかもしれない。
ワイは、毒消し草を生で食ったせいでお腹を壊した。
「生で食べるものじゃないよ?」
とスカーレットに笑われた。
かっこ悪い。
ダリアが寝ている間にスカーレットと共にアイテムの補充を終わらせておいた。
「次はようやく本体を叩けるわね。」
「でもまだハチがたくさんいるし、ヘビだってもっといるかもしれないんでしょ?」
やる気になっているスカーレットだが、一応の懸念を話す。
「トラがいないだけでも、かなり楽に戦えると思うわ。むしろ叩くなら早い方がいい。共生するモンスターが増えない内に。」
なるほど。
時間をかければ、新たなモンスターのと共生する可能性があるわけか。
ダリアも復活したことで、今回は全員で夜襲をかけることにした。
音も姿も匂いも消して木に近づくワイら。
<笑う木>は寝ていた。
木を守るヘビもトラもいないのに随分余裕だな。
作戦通り、ダリアとチーゼルが思いっきりパンチを食らわせ、退いた瞬間にグラジオラスの<ファイア>が飛んだ。
音が聞こえないから分からないけど、カルドンは詠唱をしたのだろうか?
そんなことをふと考えて、ちょっと笑いがこみ上げてくる。
おっと。目の前に集中集中。
ワイの役目はタイミングを見てみんなや敵にアイテムを使うこと。
つまり補佐的な役割だ。
木が炎上しているからなのか、ダリアとチーゼルのパンチが強力だからなのか、さっきから木以外のモンスターが現れない。
ヘビやトラはいないにしろ、ハチはいてもおかしくないはずなのに。
「様子が変よ!気を付けて!」
チーゼルがみんなに注意を促す。
チーゼルもワイと同じように違和感を感じ取ったようだ。
木にパンチ攻撃を仕掛けたことでダリアとチーゼルの姿は見えている。
隠蔽系のアイテムの効果はやはり効き目が弱い。
グラジオラスの姿が現れていないのが幸いか。
そう思った瞬間、<笑う木>が体を揺らした。
苦々しい記憶が蘇る。
「避けて!」
ダリアに向かってチーゼルが言うが、もちろん他の仲間に向かっても同じだ。
<笑う実>と<ジャイアントビー>がたくさん頭上より降り注ぐ。
ダリアとチーゼルは巧みに避けながらも、時折パンチを繰り出している。
「ダリアのパンチを何発も食らってるのに倒れないとは!かなりタフなやつなのだ。」
「ほんとに嫌になるわ。」
チーゼルも同意する。
ハチに対しては<煙玉>で対処するようにいわれていたワイは、<火打石>を使って何とか<煙玉>に火を点けようと悪戦苦闘いていた。
何しろ現代っ子。
ライターとかなら使ったことあるけど、マッチすら使ったことがない。
テレビとか色んな情報で<火打石>の使い方自体は知ってるけども、いざ点けようとするとこれが難しい。
――カッカッチッ!
よし!点いた。
時折、タローは何をやっているのだ?とか、まだなの?なんて声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだ。
日の点いた煙玉を木に向かって投げる。
こう見えてもワイは、物を投げる力には自信がない。
考えてもみてほしい。陰キャのワイに運動神経があるとでも?
案の定、木まで届かずに地面にポトリと落ちてコロコロ転がって行った。
「なんでここで煙玉を発動させるのよ!」
チーゼルが怒っているが仕方ないじゃん。投げる力弱いんだから。
何にしろ、これで<ジャイアントビー>への対策にはなっただろう。
<笑う実>はとにかく避けるしか対策のしようがない。
後はアヤメが<火付石>で大剣に火を纏わせて攻撃をすれば倒せる算段だ。
<火付石>も煙玉などと同じく火を点けてから使うアイテムだ。
火を点けて使用することで、武具に火を纏わせることができる。
「はぁ!」
作戦通りアヤメが、ダリアとチーゼルとは違う場所から突如現れた。
その大剣は火を纏っており、木を切りつけた時にその火が木に燃え移った。
<笑う木>は身を激しく動かした。
そのせいでたくさんの実が地面に落ちて爆発した。
更には、<ジャイアントビー>の巣もいくつか地面に落ち、煙玉で退治されていった。
「しっかりと倒せるまで油断しちゃダメよ。」
チーゼルが全員に注意を促す。
危ないところだった。油断するところだった。
実際最後の悪あがきに地面からたくさんの根っこを突き上げてきた。
さすがは熟練の冒険者だ。
こうして何とか強敵<笑う木>の討伐に成功したのだった。
目的地のエルフの住む森には、このレモンバームの丘を途中で東に向かって進み、途中で南に折れるとすもも村がある。
すもも村は、北部をレモンバームの丘が、他の周囲をエルフの森に囲まれた村だ。
まずはその村を目指すことになった。
「油断しないでね。レモンバームの丘にはまだまだたくさんの強敵がいるから。」
スカーレットがみんなに注意した。




