第七章その2
荷造りを終えたワイらへなちょこでヘンテコなパーティー一行は、再びレモンバームの丘へ向かった。
狙うは<笑う木>だ。
昨日行動不能にしたというヘビは、そのまま地面に刺さっていた。
生命力があると言われているだけあって元気いっぱいだった。
いつ何が起こるか分からないという理由から、アヤメとスカーレットが留めをさした。
目の前には、怒りに満ちた雰囲気の<笑う木>が居た。
周囲には3匹の<グラスランドタイガー>と1匹の<デスストーカー>が控えている。
「やる気満々って感じね。」
チーゼルが呟く。更に続ける。
「私とアヤメで本体を叩きましょ!ローゼルとスカーレットはトラの1匹をお願いね!ダリアと太郎はヘビを倒してちょうだい。カルドン・ヒゴタイ・グラジオラスでトラ2匹をお願いするわ。ローゼルとスカーレットがすぐに援軍に向かうはずだから。」
「ちょっと無謀すぎないか?」
ワイがチーゼルに言う。さすがに無謀な作戦に思えたのだ。
いくらアイテムが豊富だからと厳しい気がしてならない。
「今日1日で敵を倒そうとは思っていないわ。厄介なトラとヘビがいなくれなれば儲けものってところね。」
そう言って木に向かって走り出す。一拍遅れてアヤメも後を追う。
ローゼルとスカーレットは<姿隠しの粉>で姿を隠した。不意打ちで大打撃を与えるつもりだ。
大勢いるから音消しや匂い消しは意味ないし、色んなところに注意が向くから夜襲とは違った不意打ちができるということだろう。
ヒゴタイが最初から覚えている魔法に、守りの魔法がある。
<ブロック>という見えない薄い障壁を作る魔法だ。
その魔法をカルドンの指示通りに上手に使うことで、トラの突進を抑えていた。
「目の前に集中するのだ!」
ダリアに言われて気がついた。
目の前にヘビが迫っていた。
しまった!周りの戦いに引き込まれていた。
ぐぼっ!
ダリアに蹴られてヘビの噛みつき攻撃を避けれた。
ダメージはでかいけど。
ワイは<蛇掴み>を構えた。
「よし!こっちに誘導してくれ!」
「必要ないのだ!ダリアだけで勝てるのだ!」
と言われてもそうはいかないだろ。
ワイだって本当はヘビなんて近づきたくないし触りたくもない。
でも戦いだし、この長いトングならいけそうな気もする。
ダリアはワイのことは無視してヘビを殴ったり蹴ったりしている。
皮が厚いからなのか、決定打がなかった。
しかも時折周囲と擬態してダリアの目から逃れるのがまた厄介だ。
ワイも苦手だけど、恐る恐るへっぴり腰でヘビをトングで掴もうと試みた。
あの、ゴから始まる不愉快な虫をシューってスプレーで退治する時になるような、へっぴり腰だ。
「タロー!危ないから下がっているのだ!」
ワイに気を向けたのがスキになったのだろう。
そのスキを突かれてダリアが噛まれた。
「ダリア!」
全身から血が吹き出そうな感情がこみ上げてくる。
蛇の毒に血清も毒消しもないはず。
苦手とかそういう感情は吹き飛び、とにかくダリアを助けなければという気持ちだけで<蛇掴み>でヘビをダリアから引き剥がす。
「大丈夫か?」
ワイのせいでダリアが死ぬようなことがあればワイは立ち直れない。
――!
ダリアは見たこともないような形相をしていた。
さすがは魔王の娘というところか。
起き上がると、傍にあった岩を片手で持ち上げ、ヘビをそのまま潰した。
同時にダリアはその場に倒れた。
「ダリア!ダリア!」
急いで毒消し草と回復薬をダリアに使う。
効果があるかは分からない。
使わないよりはマシ程度かもしれない。
こうしている間にもダリアは汗をかき、熱が上がってきている。
そういえば、傷口から毒を吸い出すという方法を聞いたことがある。
ダリアの腕にはヘビの牙に噛まれたような2つの穴があった。
確か間違って毒を飲まないようにすればいいはず。
ワイは夢中でダリアの傷口から毒を吸い出し、外に吐き出した。
途中で、ダリアの傷口を消毒したり回復薬をかけたり、毒消し草をぬったくったりした。
ワイ自身もうがいをして、念のため毒消し草をむしゃむしゃ飲み込んだ。
とにかく夢中だった。
その甲斐あってか、ダリアの様子が穏やかになった気がした。
「タロー。大丈夫か?」
弱弱しくダリアが訊く。
何でダリアがワイの心配するんだよ。
「やられたの?」
戦線離脱してきたチーゼルが訊く。
「一応毒は吸い出してみたんだけど、さっきまで喋ってたしたぶん平気だと思う。」
そう願っているだけだが。
戦いを見ると、離脱したアヤメがローゼルとスカーレットと共に2匹のトラと戦っていた。
木は<砂塵の包み>で目隠し状態だった。
「ある程度はダメージを与えたけどまだまだね。かなりタフだわ。」
チーゼルも戦いに参加して2匹のトラも倒した。
だが、全員満身創痍だった。
「ダリアが回復するまで、街で休みましょう。アイテムの補充も必要だわ。」
チーゼルがそう言って再び街へ戻った。
<笑う木>との3度目の戦闘は痛み分けとなった。




