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【悲報】勇者に転生したワイ魔王の娘に好かれる  作者: shiyushiyu
レモンバームの丘での攻防

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第六章その4

「危なかったわね。」


チーゼルがベッドに横たわりながら言う。


必要ないと思うが、ブラを床に脱ぎ捨てているのは何なのだ?


「砂塵の包みがなければ逃げれなかったかも…」


スカーレットも横たわっているが、こちらはパンツもブラも見えない。残念だ。


「とりあえず、私たちが回復するまで、あなた達には必要なアイテムを入手してもらうわ。あの木は危険すぎる。今倒しておかないとどんどん共生するモンスターを増やしてしまうわ。」


というスカーレットの言葉に従い、ワイらは言われたアイテムを購入した。


砂塵の包み、姿隠しの粉、音消し草、毒消し草、回復薬、精神薬、香草袋、煙玉だ。


まずは、音消し草を煎じて薬を作った。


他にも、ローゼルの弓と矢を補填した。


「ここなら珍しい物も売っているはずだし、ちょっと見て回ろう。あいつらを倒すアイディアが浮かぶかもしれないし。」


スカーレットに言われて、2人で買い出しに出た。


日持ちしそうな食糧や飲み物を買いながら、アイテムを見て回る。


「<グラスランドタイガー>は皮膚が硬いから、こういう撒菱は効かないんだよね。どう思う?念のために買っておく?」


スカーレットに聞かれるが、正直あまり散財はしたくない。


言われた物の購入でかなり財布が厳しい状況だ。


スカーレットやチーゼル達もそんなに持ち合わせがないと言っていたし、泊ってる宿代もかかる。


「ならさ、私たちで少し依頼こなしてお金稼ぎしようよ!」


デートしようよ!みたいな感覚で言われたことに違和感を感じたんだが、スカーレットはワイの腕に絡みついてきた。


ということで、チーゼルとスカーレットが回復してからというもの、りんご市を拠点に各自必要なものを揃えながら依頼をこなして小銭も稼いでいた。


あの<笑う木>を倒せるプランが出るまでは、エルフの森へ向かえない。


倒せるまでのアイテムなどを集めることが目的だ。


ワイはスカーレットと行動を共にすることとなった。


チーゼル・アヤメ・ヒゴタイ・ローゼル・ダリアの5人は女を磨くとか何とか言って、キャバクラみたいな店で働いているらしい。


グラジオラスとカルドンは互いのレベルアップを目的としていた。


というわけで、ワイとスカーレットがアイテムやら食糧やらを調達する係となっている。


「前にスカーレットが言ってたけどさ、撒菱はトラには効かないって話。全く効果がないの?」


市場を見て周りながらワイが訊ねる。


「そうね。全くではないけど、ダメージはほぼ0よ。私たちも、小石を踏んでも多少の違和感しかないでしょ?それと同じよ。」


なるほどね。


スカーレットと共に立てたプランとしては、煙玉で蜂や蟻は倒せる。もしくは牽制できる。


厄介な蛇は、蛇掴みという珍しいアイテムを見つけたことで何とかなりそうだった。


簡単に言えば長いトングで、巨体な蛇を掴んで動きを封じて、杭を打ち込んで地面から抜け出せないようにする作戦だ。


「蛇掴みで捕獲さえ出来れば、問題はないと思うの。ただ、問題は捉えることができるかどうかってことよね。」




確かにそうだ。カメレオンのように擬態して更に動きも早い<デスストーカー>を、果たして捕獲できるのかどうか。


木本体は、植物ということで火が弱点なので大した脅威ではない。


最悪火炎ハンマーを使うという作戦もある。


火炎ハンマーとは、そのまんまで叩いた箇所を燃やすことができるのだが、使用者にまで火傷を負わせるリスクもあった。出来れば、使いたくない代物だが、最悪の場合には使うだろうと購入してある。


トラには、刃物が有効ということくらいしか思いつかなかった。


もう1つ試してみようと思う作戦があった。


それが夜襲だ。


姿隠しの粉などを駆使して夜中に少しずつ、モンスターの数を減らそうというものだ。


こいつらの厄介な点は、モンスター同士の連携なので、その数が減れば比較的倒すのは楽になる。


「もし夜襲をかけるなら、狙うのはトラか蛇よね。蜂の巣を根こそぎ潰すのも悪くないけど。」


上手にトラか蛇単体を狙えれば、この作戦は大きな成果を生む。


「ただ、危険も付き物だし、少数精鋭で向かった方がいいかもね。」


そう言ってタタッとお店へ駆け出すスカーレット。


お、これ可愛いなんて言いながら髪飾りを見ている。


いつもお世話になっているしな。


「1つ買おうか?」


「いいの?」


物凄い笑顔だ。


「1つだけだよ?」


必至に選ぶ姿がまた可愛い。


「これにする!」


そう言って決めたのは、折り紙で折ったかのような金属製の鶴が付いた髪ゴムだった。


「へへー。人生初プレゼント貰っちゃった~。」


似合う?とポニーテールにしながら聞いてくる。


かなり可愛い。


「太郎はさ。ダリアとかヒゴタイとかローゼルから好かれてるの自覚してる?」


唐突に聞かれた。


そりゃ、あれだけ積極的だとね。


ハーレムルートだし。


「じゃあさ、アヤメとかチーゼルから好かれてるのは?グラジオラスはカルドンと太郎の間で揺れてるように見えるなー。」


気づいてる気づいてる。


「もちろん私だって同じだよ?でもなんかみんなより一歩先に行った感じ!プレゼント貰えたし。」


ニコニコしながらクルクルとその場で回る。


スカートがふわりと浮かぶ。


「恋愛経験はないけどさ、何となくだけどさ、それでも太郎はきっと誰も選ばないんだろうな。って思う。」


ピタリとワイの方を向いて止まってスカーレットが言う。


そう言えばそうだ。いずれは誰かを選ばなくちゃいけないんだ。


いつまでもずっとハーレムのままでいいわけないんだ。


考えてもいなかった。いや、考えようとしてなかっただけだ。


物語の主人公だと、ハーレムのまま終わったり、実はその中に正ヒロインがいたりするけど、実際にはそんなの分かるわけもないんだよね。


誰が正ヒロインで誰が准ヒロインかなんて。


いや、そんな順位付け本来あり得ないことか。


「みんなから一斉に告白されて、誰かを選ばないといけなくなった時、太郎は誰を選ぶのかな?私だったら嬉しいな!」


いつの間にか宿についていた。


そう言い残してスカーレットは部屋に去って行った。


誰かを選ばないといけなくなったら?


ダリアを選ばなければ間違いなく世界を滅ぼされてしまう。でもそれは最初だけの話で、こうして一緒に旅をしている内にその考えは変わっている気がする。お父さんもそれには気づいているはず。だからワイがこんなにハーレム状況でも怒らない。


チーゼルとグラジオラスはないな。チーゼルはまず女じゃないし。いや、心は女だろうけどね。


グラジオラスはカルドンがいるからな。あの2人、ほんとみんなが羨むくらいのお似合いなんだよな。息もピッタリだし。


アヤメはどうだろ?見た目がなー。やっぱギャルはちょっと。同じような理由でローゼルも却下。中身がギャルはもっと無理。


となるとやっぱ残るのは、ダリア・ヒゴタイ・スカーレットか。


最初の頃は、ヒゴタイかなと思ってたけど、最近はスカーレットと行動を共にすることが多いしな。


ダリアは幼いから、恋愛対象として見れないし。


「まだ起きてたの?」


背後から声をかけられて飛び上がる。


チーゼルだ。


さっきまで変なこと考えていたからちょっと気まずい。


「あなた最近スカーレットと仲いいみたいだけど、あなたに気持ちがあるなら、それなりの対応をしてあげなさい。私たちはこういう仕事柄、いつ死んでもおかしくないわ。今生きているこの瞬間を大切にしてあげなさい。」


いつになく真面目なトーンで諭される。


「それと。ヒゴタイはやめておきなさい。あなたの手に余るわ。」


「それってどういう意味?」


「太郎。あなたは偏見が強いタイプよ。私やこの街のギルドの受付だって同じ人間よ?人を好きになるし恋にも落ちる。でも自分たちが他の人と違うことは自分たちが一番よく分かっているわ。それを変な目で見られたら傷つくってものよ。」


そうか。ワイは知らず知らずのうちにチーゼルを傷つけていたんだ。


「それにね。そういう目って意外と気づかれるものよ。これからエルフの森やドワーフの洞窟に向かうなら、そういう偏見の目では絶対に見ないことね。」


他の種族にあらぬ誤解を抱かれないように。と念押しされた。


でもそれとヒゴタイにどんな関係が?


「あなたってほんと鈍感なのね。まぁいいわ。ヒゴタイよりも今はスカーレットでしょ。あなたの気持ちはスカーレットに向いているわ。それならその気持ちをそのまま真っ直ぐぶつけてあげなさい。」


「でも、そしたら他のみんなは?」


ワイのことを好いてくれているのはスカーレットだけじゃない。


ワイとスカーレットがくっついたら他のみんなは残念がるだろう。


何よりワイの最終目標はハーレムなんだから。


「あのね。恋は理屈じゃないの。誰かを好きになるのに理由なんていらないのよ。気がついたら気になって好きになっている。そういうものなの。」


ふむふむ。でもだからって他の人が納得するとは限らない。


「ふぅ。あなたってスカーレットと同じで恋愛経験ないのね。あのね。友達と同じ人を好きになったとして、その好きになった相手があなたの友達とくっついたら、あなたはその2人とはもう関わらないの?そんな薄っぺらい関係じゃないでしょ?恋人を奪ったわけじゃないんだから。」


あぁそうか。学校とかでたまに聞く、《好きな人が被る》というやつだ。


ワイのような陰キャには関係ないと思ってたけど、そうか。ハーレム状態なんだから関係あるのか。


つまり、ワイが誰かを選べばみんなはそれで納得するってことか。


本当なら、ワイはハーレムを目標にしたいんだけど、今のワイの気持ちはハーレムよりもスカーレットに向いている。それは理屈どうこうで動かせるものじゃなく、ワイの気持ちは1つに固まってるようなもの。


ってことか。


「チーゼル…さん。俺、スカーレットをもっとよく知りたい。」


にこりとチーゼルは微笑んだ。


あ。ワイはやっぱり偏見でチーゼルを見てたんだ。


チーゼルってこんな優しい顔するんだ。


「出来るだけ2人でいる時間を作りましょう。そしてそのためにもあの木を倒しましょ。」


ぎゅっとワイの手を握ってくれる。


それだけでワイは勇気を得た気がした。


絶対にあの木を倒してみせる!という今までにない決意が湧いてきた。

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