第六章その3
<グラスランドタイガー>と戦っている、ダリア・ローゼル・チーゼル組は優勢だ。
トラに飛び道具がない上にチーゼルのパンチが非常に重いようだ。
更にローゼルの弓矢も数本に1発は当たっているのでこの上なく順調だった。
「あなた下手ねー。」
なんてチーゼルに言われているが、当の本人は気にしていない様子。数うちゃ当たる戦法のようだ。
「ローゼル!ダリアに矢が当たっているのだ!気をつけるのだ!」
「しょうがないだろ!そんなところにいるダリアが悪いんだ。」
ダリアとは仲がいいんだか悪いんだか、毎回ケンカしてる。
「ローゼル!矢を1本貸して!」
チーゼルがケンカする2人を止めもせずに言う。
ローゼルがチーゼルの元へ向かう。
入れ替わるようにダリアがトラの相手をした。
パンチにキックと相変わらずの格闘バカだが、チーゼルの攻撃のダメージが残っているのかかなり効いていそうだ。
「これで留めよ!」
ローゼルから預かった矢を槍のようにしてトラへ突き刺そうとする――
これでダリアたちの勝ちだろうと思い、グラジオラス・カルドン・アヤメ・スカーレットの戦いを見る。
ちょうど1匹の蛇がグラジオラスの<ファイア>で焼かれたところだった。
「アヤメ!」
短くスカーレットが指示をだすと、アヤメもはい。と返事をして大剣を叩き込む。
ところが、蛇を思いもよらない速さでアヤメの剣を避けた。
「とう!」
ナイフで威嚇をしつつ牽制しているのはカルドンだ。
ワイは今のうちにグラジオラスをヒゴタイの元へと引っ張ってくる。
魔力を無くしたグラジオラスは使い物にならないからね。
ふと、チーゼルが何か叫んでいるのが聞こえる。
「逃げて!」
<グラスランドタイガー>は倒せていなかった。
3匹いたのだ。
内1匹が留めをさそうとしたチーゼルを襲った。チーゼルは肩から大量の血を流している。執拗に追われてヒゴタイも回復魔法を発動できないでいるようだ。
もう1匹は、まさに今スカーレットが蛇に剣を叩き込もうとしていたその腕を噛みちぎった。
幸いにも腕をもがれずにすんだが、パーティー最強の2人を失ったワイらに勝ち目はない。
「撤退だ!」
カルドンが短く言う。
ワイはカルドンにグラジオラスを任せ、ダメージを負ったスカーレットを脇から支えた。
「走れるか?」
そう訊ねるワイにスカーレットは力なく答えた。
「トラに背中は向けちゃダメだ。」
そうだった!背後から襲われるんだった。
だからチーゼルはこっちを向いていたのか。
「大丈夫です。私が盾になります。魔法剣士さんをお願いします。」
アヤメに言われて、スカーレットに集中する。
血が止まらない。
「タロー!平気か?」
ダリアが隣まで来てくれた。
「血が止まらないんだ。」
「僕が魔法をかけるまで食い止められますか?」
ヒゴタイが駆けてくる。チーゼルも重傷だ。
トラは3匹。
迎え撃つのは、ダリア・ローゼル・カルドン・アヤメ・ワイの5人。
「少ししか時間は稼げないぞ。」
カルドンが背中ごしにヒゴタイに言う。
次の瞬間、ナイフでトラの爪攻撃を受けていた。間一髪というところだ。
「カルドンを離せ!」
組み伏せられたら人間に勝ち目はない。
ダリアがトラを蹴り飛ばして難を逃れる。
ローゼルは1匹に弓矢を放ちまくって牽制している。
アヤメも盾で攻撃を凌いでいる。
「治りました!」
後ろからヒゴタイの声が聞こえる。何とかなりそうだ。
「私たちが万全でもトラ3匹はキツいわ。ましてや病み上がり。失った血もすぐには戻らないし、とにかくりんご市まで戻りましょ。」
そうチーゼルが提案したが、今回の敵はそう簡単にワイらを見逃す気はないらしい。
「<笑う木>の中には動ける個体がいるのは知ってるけど、まさかこの個体が動ける個体なんて…」
スカーレットが絶句する。
そう。木だから動けない。動けないならある程度離れれば攻撃してこないと思っていたワイらは甘かったようだ。
この<笑う木>は、どうやら動けるようだ。
もちろん共生しているモンスターを引き連れて。
危険なのは、トラと蛇。木は地面から根っこで突き刺し攻撃をしてくるから、それだけ注意すればいい。
「ふん!」
チーゼルが地面を叩くと、土が針のようになって次々に木に向かって行った。
「チーゼル!あれを!」
スカーレットが何かやる気だ。
チーゼルから小さな包みを受け取ると、木に向かって投げつける。
同時に<ファイヤーウォール>という魔法を使って、火の壁を作り出した。
包みは炎で破られて、辺りに砂塵をまき散らした。
周囲一帯は、砂と炎と煙に包まれた。
ワイらは今のうちに何とかりんご市まで戻った。




