第四章その3
ワイは、走馬灯でも見ているのだろうか?
全ての物事がゆっくりに見える。
<笑う木>へ向かったダリアとローゼルに対して木が体を震わせた。
上から無数の<笑う実>が落ちてきて爆発した。
ダリアとローゼルがワイの傍まで吹き飛んできた。
<笑う木>の攻撃はこれで終わりではなかった。
生い茂る葉で見えなかったが、ローゼルの忠告通り<ジャイアントビー>が巣を作っていた。
無数の<ジャイアントビー>がこちらに飛んでくる。
さっきまであんなに和気あいあいとしていたのに――
「まだ息があります!」
背後からのヒゴタイの声に我に返る。
「マスター!」
グラジオラスに声をかけられてカルドンも我に返った。
「気を付けろ!<ジャイアントビー>だけじゃなく地面に<グルッポフォルミーカ>もいるぞ!」
カルドンが鋭く叫ぶ。
ふと地面を見ると蟻の大軍がワイの体やダリアとローゼルの体を這っていた。
ゾワゾワゾワっと身震いする。
「傷は治しましたが2人の意識はまだ戻りません。」
「ヒゴタイ!離れろ!」
2人を介抱していたヒゴタイをドンッと後ろに押す。
蟻に毒があるのか分からないが、回復担当のヒゴタイをやられるわけにはいかない。
「私が盾になります。」
アヤメが言ってくれる。
「ありがたい。とりあえずヒゴタイとこの2人を遠くにやってくれ。いてっ!」
蟻に噛まれた。いや、尾の針で刺された。いや両方だ。無数の蟻によってワイは攻撃されまくっていた。
グラジオラスがカルドンの詠唱を待たずに<ファイア>を唱えてくれた。
蜂と蟻の増援を防げたけど、刺された箇所が熱を持っていた。少しだが毒を持っていたようだ。
「治します。」
ヒゴタイが近づくが、それをカルドンが制す。
「待て!近づくのは危険だ。君たちは街へ戻って助けを呼んできてくれ。こいつらは俺たちでは手に余る。」
カルドンの言う通りだった。頼みの綱のダリアも一撃でやられ、2番手のローゼルも倒されてしまった。命があるだけ奇跡と言える。
ヒゴタイがりんご市へ走る。そこへ無数の蜂が襲い掛かる。
「回復士さん!」
自ら体を盾にアヤメがヒゴタイを守る。大量の<ジャイアントビー>にアヤメが刺される。
「まずいぞ!1匹1匹の毒は強くなくてもあれだけ刺されるのは危険だ。」
いつもは遠くから見守って指示を出すだけのカルドンが走って、小型のナイフで蜂を追い払う。
「マスター!」
魔力が底を尽き、フラフラ状態のグラジオラスも力弱く杖を投げて応戦する。
アヤメ・ヒゴタイ・カルドンは蜂に囲まれ全身を刺された。
ワイはさっきから蟻に刺された毒で意識が朦朧としている。
ダリアとローゼルの意識も戻らない。
グラジオラスは魔力が尽き、蟻に蝕まれている。
ワイが勇者として転生して、手に入れたパーティーは、ワイの目の前でやられていく。
<笑う木>がニヤニヤしながら鋭い木の枝をワイに向けてくる。
あぁ死ぬ――




