第三十三章その6
マティーニはきっと幸せだったに違いない。
高笑いしている最中に死ねたんだから。
上空から降ってきたブッドレアは、アリンコを踏み潰すかのごとく一瞬でマティーニを倒した。
「勇者よ!久しいの!」
ブンブンとワイの両手を上下に無理やり振りながら握手してくるけど、とりあえずナイフで刺された背中が痛い。
「おぉ!ダリアよ!無事だったか我が愛娘よ!」
ワイの手を離して、ダリアに強烈な抱擁攻撃を仕掛けている。
「パパ!苦しいのだ。」
この暑苦しいおっさんは何でここに居るの?
「パパ。何しに来たのだ?」
ワイの手当てをしながら、正に核心を突く質問をダリアがしてくれた。
ナイフには毒などはなかったようだ。
「娘の心配をするのは父親の務めであろう?ゼウスがこっちに来たと思ったのだが?」
「ゼウスですか?見てませんね。」
タイニーがブッドレアの肩を揉みながら応える。
ワイの記憶が正しければこのおっさんはめんどくさがりだったはず。
「ワシの城に配下4人くらいをつれてやって来たのだが、配下を瞬殺したらこっちに逃げて行きおったのよ。」
え?<神の軍勢>4人を瞬殺?
どんだけ強いんだよこのおっさん。
「ダリアを人質にワシを自殺させる算段だと思ったのだがのう。」
なるほど。このおっさん、親バカだったなそう言えば。
ダリアを人質に取ってしまえば後は簡単か。
「ところで勇者よ。ダリアとはいつ結婚するのじゃ?」
え?いきなりその質問?
いつと聞かれてもなぁー。
「ハネムーンはそろそろいいじゃろ?ワシは早く娘の花嫁姿が見たいのじゃ。」
そう言えば、魔王もダリアも結婚しないなら世界を滅ぼすとか言ってたっけ?
今ならよく分かる。魔王なら世界を滅ぼせる。
「あ。なら今ここで結婚式挙げちゃうのは?」
チラコンチネが突拍子もないことを言ってくる。
「え?」
思わず声が漏れた。
ギロリと魔王に睨まれた。
「なんじゃ?お主嫌なのか?ワシの娘の裸を見て辱めておきながら結婚はしないと!そう言うのか?」
そんなはっきりとワイがこの世界に来た時のことを言わないでよ。
「え?何それ?」
「勇者様…」
「理解不能。」
ほら見ろ。チラコンチネとパラナと1が引いてるじゃん。
「ダリアは気にしてないのだ!タローが結婚すると約束してくれたから!」
何言ってるの?言っておくけど、約束した覚えないからね?
「そうだったのですね勇者様。」
満面の笑みなのはタイニーだ。
ワイとダリアが結ばれることを心の底から喜んでいるようだ。
「祝福スル。」
どっちでもよさそうなのはヘリックス。ヘリックスにとっては自分の強さこそが全てって感じだもんな。
「おめでとうございます。」
ちょっと悲しそうな声を出したのはワチワヌイ。
「みんな!これからもタローをよろしくなのだ!」
なーんでダリアがそれを言うかな?
「よろしくお願いします。」
ペコリとタイニーが頭を下げる。
「そうと決まれば祝いじゃ!」
ブッドレアが立ち上がって手をパンと叩くと、ダリアの服装がウエディングドレスに変わった。
このおっさんは何でもアリだな。
「ほぅ!ダリア似合うではないか!」
ブッドレアが感嘆の声を出す。
確かに馬子にも衣裳という言葉があるけど、今までとは違ってダリアはキレイだ。
思わず見とれてしまった。
「ど…どうだ?タロー?」
ちょっと照れながらワイに問いかけてくる。
恥ずかしながらも、似合っていると言おうとした。
そう思ってダリアの方を見たワイはとんでもないものを見てしまった。
「ダリア!」
全てがゆっくり進んでいるように感じた。
ダリアに向かって大きな剣を掲げて向かっている1つの影があったのだ。




