第三十三章その2
女の後ろからゾロゾロと<神の軍勢>が出てきた。
「大丈夫ね?マルガリータ。」
あいつは確かレッドアイとか言ってたっけ?植木鉢を持っている女がマルガリータか。
それと見たことない男女が2人。ジンフィズを含めて5人か…
「えぇ。こっちはたぶん後衛。後方支援などを担当しているんでしょうね。勇者が後方支援ってのは笑えるけどね。」
マルガリータと呼ばれた女がゆっくり近づいてくる。
ワイ今バカにされた?
「勇者様お下がりください。」
パラナがワイに言って前に進み出た。
パラナの前ではティムがぐるると威嚇した。
威嚇する度に口から小さな炎が出ているから、余計怖く見える。
でもこの女が言った通り、ワイ達って援護組なんだよね。ダリア達前衛組がみんなジンフィズに向かって行っちゃったもんね。
ダリアのパンチをジンフィズは避けているが、前にみたいに余裕を持った顔はしていなかった。
洞窟内で、ダリアがジンフィズをボコボコにしたらしいからな。
よし!それならダリアに任せて他4人は呼び戻していいだろう。
「チラコンチネ!ヘリックス!ワチワヌイ!1!戻って手伝ってくれ!」
ワイの呼びかけに4人はすぐに反応して、レッドアイやマルガリータら4人を挟み撃ちにした。
「ダリア!そのハゲたおっさんは頼んだ!」
ワイが声をかけると、ダリアは分かったのだ。と返事をし、ジンフィズがハゲておらん!と言い返してきた。
マルガリータは手に持った植木鉢の植物を操る力のようだ。
ティムに向かって、蔓を伸ばしてきた。
けど植物はティムと相性が悪いっしょ。ティムは炎だし。
そう思った瞬間、ワイの目の前に風船がフワフワと飛んできた。
「?なんだこれ?」
ワイが思うに、これも敵の力だとは思うけど、風船の力?何か効果が付与されている力なんかな?
「ただの風船ですね。何の仕掛けもありません。」
パラナが風船の正体を見破った。
そういうことならワイでも問題なく攻撃できるな。
ワイはお馴染みの武器となった小刀で風船を割った。
「ふっ。たわいもない。」
決まったぁー!かっこいい決め台詞!
目の前のチラコンチネが憐れみを含んだ目でワイを見ている。
あれぇ?これ決め台詞じゃないの??
風船が割れると中から石が飛び出してきた。
?これが罠?
「こんなの何てことないけど?」
ワイがそう言った瞬間、石が縦横無尽に動き出した。
「石を操る力ってこと?こんな小さいとほとんどダメージないけど?」
片手で石を掴めてしまうしね。
「…おいらの力をバカにするな…」
おやぁ?何やらちびっ子男の子がワイに何か言っているようだが?
「ん?君の力なのかな?ん?」
これこれ!俺つえぇーしながらマウント!異世界転生の醍醐味っしょ!
「おいらの力だ!」
ちびっ子が叫ぶけど、正直全然怖くない!
「モヒート。アナタは危険だから下がってなさい。」
名前の知らない女がちびっ子に言う。
ちびっ子はモヒートって言うのか。
「いやだ!おいらだって戦うんだい!そんなこと言うならウイスキーサワー!チミこそ使える能力じゃないんだから下がっていなよ!」
子供らしく喚き散らしてモヒートが言う。
ウイスキーサワーの力は大した能力ではないのか。もしかして…
「お前の力がこれ?」
これと言いながらワイは風船を指さしてみた。
「そ!そんなわけないでしょ!」
どぎまぎしながら否定されてもなぁー。
それにしてもそうかそうか。
この2人ならワイでも何とかなりそうだな。
にやにやが止まらん。
「なーんか勇者がいつになく戦いに参加してんだけど?」
チラコンチネがわざとワイに聞こえるように言っているけど、気にしたら負けだ。
「さぁ。始めようか。」
勝ちの決まった闘いを!
「このぉ!」
ちびっ子男の子がワイに石を投げてくる。
危ないでしょうが!
ワイはげんこつでモヒートを黙らせる。
ウイスキーサワーの方を振り向く。ワイは女の子を殴ったことないんだよなぁ。
しまった!とゆーかワイ、この2人を倒せないじゃん。殺すとか無理だしなぁ。
でも倒さないとスカーレット達みたいなこともあるしな…
「ごめんな…」
小刀を握ってモヒートにとどめを刺そうとする…
無理だ!ワイには無理だ。
「くそっ!」
小刀を構えた腕を下した。
「俺達に二度と逆らわないと誓え!」
ペタンと地べたに座り込んでしまったモヒートは、言葉も出ずに頷いているようだ。
「なに?逃がすの?」
チラコンチネがワイに問いかける。
「まぁ害はないし、もう逆らわないだろうし。」
横に来たチラコンチネに頷いて、モヒートに背を向けてウイスキーサワーの方を見る。
こちらも降参している。
「お前も、もう俺達に逆らうようなことはするなよ?」
忠告すると、ウイスキーサワーも黙って頷いた。
これで良しと。
敵はあと3人。
レッドアイとマルガリータとジンフィズか。
「ダ・ア・リィーン!」
やや遠くから聞き覚えのある嫌な声がした。




