第三十二章その6
「!あれは?」
前から女の人がこちらにやって来るのが見えてワイが言う。
ワイらはまだティムの上に乗っているのにこちらに向かってやって来る。
ということは…
「あいつ。空を飛べるのか…」
そう。チラコンチネが言うように、空を自在に飛べる力ということになる。
「勇者…」
ワイらの目の前でピタリと止まった女が言う。
長く茶色い髪を後ろで1つにたばねている。髪型はダリアにそっくりだ。
目は細く吊り上がり、鼻がやや高い。綺麗系の女の人だと思う。
「あくまでもアタシ達に逆らうということね?」
女が聞いてくる。
「先に仕掛けたのはそっちだろ?」
ワイは怒りを込めて言い放った。ワイらの仲間を最初に殺したのは<神の軍勢>達だ。
「えぇ…アタシ達は見誤っていたようね。あなたが自分よりも魔王の娘を優先するとは思っていなかった。」
あぁ。そういうことか。ワイも驚きだ。以前のワイなら迷わず自分の命を優先してただろうよ。
「で?何なのだ?」
ダリアが嫌悪の混ざった声で聞く。
「そうね。もはや話し合いでは解決できないことは明白。アタシ達はこの下の迷宮に本部を構えているわ。でもそこへはアタシが行かさないってことよ。」
女が地上の迷宮を指さす。
「関係ないのだ!」
ダリアがティムから飛び降りて女を殴る。
「そうくると思ったわ。」
女がにやりと笑う。
「アタシは<雌伏>のソルティドッグ。よろしくね。」
ひょいとダリアのパンチを空中で避ける。
ダリアの下側にティムが回り込んでダリアをキャッチする。
「空を飛ぶだけの力なら脅威でもなんでもない気がする。迷宮に侵入しちゃおう。」
ワイが言うと懐のタイニーも同意した。
「そうですね。敵のボスである最高神ゼウスを倒せば私達の勝ちですから。」
「させるかぁー!」
ソルティドッグが猛スピードで追いかけてくる。
「1、頼む。」
後ろを振り替えずにワイが言うと、1は了解。と応えて真後ろに砲撃した。
『騙された?』
ソルティドッグがそう思った時には遅かった。
「悪いが、もう俺たちはなりふり構ってられないんだ。どんな手を使っても全力でそっちを倒させてもらう。」
1の攻撃力が上がっているのも、訓練のおかげだろうな。
ティムから降りて迷宮の入り口に立つと、後ろから満身創痍の中ソルティドッグが追いかけてきた。
やれやれ。諦めればいいものを。
「行かさない…」
「先行きな。アタイが――」
チラコンチネが後ろを向いて、ワイらを先に行かせようとしたが、ダリアの方が早かった。
「ダリアはタローをあんなにしたお前たちを許さないのだ!」
ダリアのパンチが炸裂した。
1がとどめの砲撃でソルティドッグを倒した。




