第三十章その5
「イヒヒ。勇者はウチのものにする!」
くまのぬいぐるみに乗りながらいきなりマティーニが宣言した。
「あ…そう…」
呆気に取られながらジンバックが返事をすると、キンキン声でマティーニが騒ぐ。
「<飲酒>はどこ?ウチと勇者の部屋を作って欲しいの!」
マティーニは、両目が飛び出そうな表情をしていた。
『こりゃ何言ってもダメだな…』
そう思ったジンバックは、素直にレッドアイを呼んできた。
「マティーニ、ちょっと急すぎるよ?ボクの力だって万能じゃないんだから。」
ぶつぶつ文句を言いつつも、洞窟の一部を変形させてマティーニ専用の部屋を作った。
「誰も入ってきちゃだめだから!ウチと勇者の愛の巣なのここは!」
「はいはい。ドア閉めとくから。気が済んだら出てきてね。」
めんどくさそうにレッドアイが言って、大きな岩で部屋の入り口をふさいだ。
「でかい声がしたけど、マティーニ帰って来たの?」
声を聞きつけてジントニックがやって来た。
「そう。勇者を連れて。んで相変わらず引きこもった。」
ジンバックがマティーニが引きこもった部屋を指さす。
「大丈夫なの?」
「さぁ。とりあえず暴走はしてなかったから平気だと思うよ。」
ジントニックの問に、ジンバックは肩をすくめた。
「マティーニが暴走してもボクは知らないからね。」
レッドアイは我関せずで、元の場所に戻ってしまう。
「やっぱり暴走する前に釘を刺した方がいいんじゃない?」
ジントニックが恐る恐る言う。
「それなら君が言ってよ。僕もレッドアイと同じ気持ちだよ。マティーニに目を付けられるのはめんどくさいし嫌だ。」
片手をひらひら振ってジンバックもレッドアイと同じ場所へ戻る。
――コンコン。
おずおずとノックをしてからジントニックが声をかける。
「マティーニ?あの…勇者のことなんだけど。」
「何なの?邪魔しないで!殺すわよ?」
相変わらずキンキン声で叫ばれる。
「そうじゃないの。あのね。」
続きを言おうとすると、肩に手を置かれた。
見るとシャンディガフが首を振っていた。
「やめておけ。本当にお前が殺されるぞ。」
諭されて、仕方なしにジントニックもみんなの場所に戻った。




