第三十章その3
ジンフィズが両手を広げて余裕を見せる。
「舐めんなよハゲたおっさん!」
チラコンチネがパラナの魔法で向上された、身体能力アップ能力でいつも以上に素早く動く。
「ハ!ハゲだと?言ってはならんことを言ってしまったな。俺はハゲていない。髪が他の者よりも短いだけだ。」
ややハゲ上がっている後頭部を擦りながらジンフィズは一生懸命言い訳をした。
「そんなのどうでもいいんだよ!カツラでも被ってろ!」
チラコンチネが素早く移動してパンチを繰り出す。
「ふ!動揺させようとしても無駄なこと。それにハゲネタでは動揺もせん。気にもしていない。」
パンチを避けてカウンターをしようとジンフィズが構えるが、チラコンチネは更にスピードを上げ、ジンフィズの真後ろまで瞬間的に移動した。
「反応できなきゃ攻撃を滑らせて受け流すこともできないでしょ?」
そう言いながら渾身のパンチを叩き込む。
「ふむ。あのスピードが最高ではなかったとは…驚異的なスピードだな。」
チラコンチネのパンチは確実に当たった。
しかし、ダメージがそこまであるようには見えなかった。
『どうなってるんだい?体が硬いのか防御力が異常に高いのか…』
チラコンチネは密かに眉をひそめた。
しかし、追撃の手は緩めない。
ダメージが通ったかどうかは不明だが、ジンフィズを吹き飛ばすことには成功した。
その先にはヘリックスが待ち構える。
ヘリックスは、こん棒に変形した1を手に持つ。
「電流発動。」
1がこん棒に電流を流す。
ヘリックスの渾身のフルスイングがジンフィズに直撃する。
たとえこん棒のダメージを受け流せたとしても、電流のダメージは受け流せない。
追い打ちをかけるように、パラナが炎の魔法を叩き込む。
ティムも上空からブレスで応戦する。
「はぁー!」
とどめと言わんばかりにダリアが上空からパンチを繰り出す。
「どうだ!受け流せない程のダメージなのだ!」
地面にクレーターが出来ていた。
ダリアの感情が爆発した際の攻撃力の高さが伺える。
「さっさとタローの場所に案内するのだ!」
ダリアの怒りはまだ収まっていない。
「確かに…凄まじい攻撃力だ…さすがは魔王の血を引く者だな…」
ゴホ。といかにもダメージを受けたような咳をしながらジンフィズが言った。
土煙から出てきたジンフィズは確実にダメージを受けていた。
「だがそれでも勇者の場所に案内するレベルではない。何より俺がマティーニに殺されてしまう。」
ジンフィズが素早く滑ってチラコンチネをパンチで吹き飛ばす。
あまりのスピードにチラコンチネはガードすら出来なかった。
「それに今ごろもう勇者はマティーニに壊されているだろうよ。気の毒だが、ゼウス様ですら、マティーニの奇行を止めることはできんよ。」
その言葉にダリアがキレた。
想像を絶する力はジンフィズの予想を上回っていた。
「タローを返せ!」
ダリアが纏った力は、この世のあらゆる負のオーラを孕んでいるような感じだった。
魔族という言葉がぴったりな、慈悲などない。あらゆるものを全て拒否できる力を感じさせた。
『なんということだ…この娘の覚醒はまだ中途半端だったのか…これが魔王の娘の力…』
拒否したいジンフィズだったが、無理やり屈服させられそうな程の威圧だった。
ダリアの異変は、洞窟内はもちろん洞窟の外にまで響いた。




