第二十九章その4
ワイらがマティーニに標的を定めたのに、ジンフィズは相変わらず動こうとしない。
マティーニも余裕そうだ。
ふ。その余裕面もワイの剣さばきを見れば変わるだろうよ。
「でぇぇぇぇーや!」
大きく剣を振りかぶって上から下に振り下ろす。
「舐めてるの?」
マティーニが半眼でワイの渾身の剣術を受け止めた。
いくらワイが引きこもりだからって、女の子に力負けする程じゃないはずなんだけど?
「ウチ力強いから!出直してきな!」
殴られた。
本当だ。かなり力が強い。
ジンフィズと同じくらい力あるんじゃないか?
「なぁ1。ビームとか撃てたりしない?」
無理を承知で聞いてみた。
「回答。可能。」
できるんかい!
それなら戦いようがあるな。
ワイは再び1を大きく振りかぶった。今度はさっきとはひと味違うぞ!
「でぇぇぇぇーや!」
1を振り下ろす。
「何回やっても一緒。」
マティーニがめんどくさそうに片手を前に差し出す。
「1!電撃だ!」
ワイが言うと、1が自身に電流を帯びさせた。
驚いたことに、ワイが持っている柄の部分には電流が流れない。
「あぁぁぁぁぁぁ!」
マティーニにダメージを与えた。
「よし!効いてるぞ!」
「ふむ。マティーニにダメージを与えるとは素晴らしい。だが、君たちはマティーニの恐ろしさを知らない。」
ワイの喜びの声にジンフィズが水を差す。
「あぁー。いいよ。久しぶりに攻撃をくらったよ…イヒヒ。ウチに危害を加えるのはもういないと思ってたから。勇者。本当にありがとう。とっても気持ち良かったよ。」
目を大きく開いてワイを見てくる。
「警告。回避推奨。」
1がワイに言うが、体がこわばって動かない。
「どれくらい気持ち良かったのか教えてあげる。」
イヒヒと笑いながらワイの元にすっ飛んでくる。
「タロー!」
ダリア達もワイのところへ来ようとするが、マティーニの方が遥かに早かった。
「防壁展開。」
1がワイの手から離れて盾のような形になる。
「無駄ぁー!」
マティーニが1を殴って1撃で遠くに吹き飛ばす。
追いついたダリア・チラコンチネ・ヘリックスも同様にそれぞれ1撃で吹き飛ばされた。
めちゃくちゃ強くないか?
パラナとワチワヌイは巨大ドール人形を足止めしてるだろうし。
「ウチが受けた気持ちよさ。教えてあげる。」
にひ。と気味の悪い笑みを浮かべた後、渾身のパンチがワイに繰り出された。
たぶん、ダリア達への攻撃よりも強かったのだろう。
ジンフィズの攻撃以上の痛みがあった。
幸いなのか分からないけど、すぐにパラナが痛みと怪我を治してくれた。
「イヒヒ!いいよいいよ!もっとウチを傷つけてよ!この傷全部勇者が付けた傷にしてよ!ウチと勇者の繋がりになるから。」
両目を大きく見開きながら顔を近づけてくる。
よく見れば、顔中もツギハギだらけだ。
「勇者。君のことをウチは気にいった。もう誰にも渡さない。触らせない。ウチともっと気持ちいいことしよう?」
どんどん顔が近づいてくる。
目の焦点が合ってないようにも見える。
なんとそのままマティーニはワイにキスをしてきた。
キス…舌を無理やり口の中にねじ込んできやがる。
「マティーニのやつ…やはりカルーアミルクの影響をかなり受けているな…」
ジンフィズの言葉が聞こえるがそれどころじゃない。
キスってもっといいものだと思ってたけど、物凄く不快だ。
無理やりマティーニを引き剥がすと、マティーニの口の周りは涎まみれになっていた。
「イヒヒ。ヘイト君!周りの邪魔者倒して!」
ワイにキスをしたからか、ダリア達が激怒してマティーニに向かっていた。
ダメージもあるだろうに。
「ウチと勇者の邪魔をしないで!」
キンキン声でマティーニが叫ぶ。
こいつマジでヤバいやつだ。
「タロー!その変態から離れるのだ!」
「勇者!さっさと逃げな!そいつはほんとにヤバいやつだ!あんたの初めてが奪われっちまうよ!」
ワイも初めては経験したいけれども、こんなヤバそうな女は勘弁!
逃げようとしたら、腕を強く掴まれた。
「どこに行くの?ダーリン♡」
口元は笑っているが、目が笑ってない。
「ど…どこって俺別にダーリンじゃないし」
むぐぐ。話してる途中でまた無理やりキスされた。しかもさっきと同じように舌入れてくるし。
「ぷはぁ。もうダーリンったら♡同じこと言わさないで?ウチがダーリンを気にいったの。ダーリンはウチのものだから♡誰にも渡さないわ!」
最後にすごみをきかせてダリア達を見た。
「ではマティーニよ。勇者を連れて行ってくれないか?俺が残りの掃除をしておこう。」
ジンフィズが前に進み出ると、マティーニはワイを掴んだまま巨大なクマのぬいぐるみを出した。
「お願いね。」
そう言い残してワイはマティーニに無理やりどこかに連れていかれた。




