第二十九章その1
マティーニがジンフィズと入れ替わるように前に進み出た。
ドール人形の余ったパーツは使い切ったようだ。
「防壁はとりあえず消しておきます。」
そう言ってパラナが地面から手を離そうとすると、マティーニが忠告した。
「いいの?ウチの力を甘く見ない方がいいよ!」
イヒヒと笑っている。
ワイは思わずパラナを見た。
パラナは困惑したようにワイを見上げる。
ワイに意見を求めているようだが、ワイには正直どうすればいいのか分からない…
ワイが迷っているとパラナが意を決したように呟く。
「分かりました…魔力の消耗が激しいので、あちらの魔法を解除しましょう。」
ジンフィズの方をチラリと見ていたから、多分ジンフィズにかけた魔法を解除したんだろう。
「ほぅ?俺への魔法を解除したか…いいのか?」
マティーニの後ろで両手を組んだままジンフィズが言う。
だがワイもパラナと同じ意見だ。
マティーニが下がれと言った以上、ジンフィズはしばらく戦いに参加しないだろう。
それを知ってか、ジンフィズは鼻をフンと鳴らした。
「イヒヒ。それじゃいくよ?全力で防いでよね?」
ニタァと、マティーニが笑って巨大ドール人形を動かし始めた。
ゆっくりだが確実にこちらの防壁に近づいてくる。
「攻撃:開始。」
1が銃の形状に変形していつものレーザー砲を発射する。
早すぎて反応できないレベルのスピードだが、巨大ドール人形は右手を前に出した。
肘の部位が、骨だけを残して皮膚が剥けるような感じで、上下左右4方向が手のひら側に開いた。
まるで、腕にプロペラが取りついているような感じだ。
腕の横に開いた4本の羽から青白い光が出て、それぞれの羽を結んだ。
右腕を中心とした、ひし形の青白い光の輪が1のレーザー砲をガードした。
バリアみたいなものをはっているのか!
「報告:回避推奨。」
1が全員に言う。
なんか攻撃が飛んでくるのか?
そう思っていたら1のレーザー砲を撃ってきた。
「あの変化した腕は、攻撃を吸収する力があるようですね。」
タイニーが分析した。
「つまり1で攻撃させるのは危険ってわけか。」
「なら物理攻撃がいいんじゃないの?」
ワイの言葉を聞いてチラコンチネが巨大ドール人形に向かって走り出す。
「イヒヒ!いいね命知らずって感じで。」
マティーニが相変わらず両目を大きく見開いて笑う。
うん。気持ち悪い!
チラコンチネの飛び蹴りをドール人形は防御もせずに受ける。
「いったぁーい!」
蹴った足を擦りながらチラコンチネが言う。
いつも男っぽい話し方をするのに珍しく女っぽかったな。
「ウチのヘイト君。硬いでしょ?」
イヒヒとマティーニが笑う。
それにしても、それ程の硬度で攻撃されたら防壁は持たないんじゃないか?
「攻撃させたら終わりますね…」
パラナがワイを見て言う。
やっぱりか!
動きは早くないが、その分攻撃力と防御力があるんだ。
ジンフィズは素早さと攻撃力に特化していて、マティーニのドール人形は攻撃力と防御力に特化しているのか…
「厄介なコンビだな…」
ワイの呟きがジンフィズがワイを褒めた。
「ほぅ?流石は勇者だ。俺達コンビの厄介さに気が付いたか。」
それでも戦いに参加しないということは、余程マティーニを信頼しているのだろう。
ケタケタ笑いながら巨大ドール人形が防壁に近づいてくる。
周囲にいるチラコンチネやダリアには目もくれない。
「妙ですね。ダリア様や気まぐれさんを攻撃すればいいのに、執拗にこちらの防壁を壊すことを狙っています。」
タイニーが懐で目つきを鋭くさせた。
「それってつまり、やつらにとってこの防壁を破壊することで、何か大きなメリットがあるってことなんじゃないのか?」
「防御態勢:始動。」
慌てるワイを横目に1がゴツゴツした機械人形のような形態に変形した。
これででかかったら巨大ロボとして申し分なかっただろうな。
1は太くてゴツゴツした両手を前に突き出して、何かを探しているような仕草をした。
「防壁発見。強化開始。」
どうやら目に見えない防壁を探していたようだ。
「!機械族…恐るべしですね…」
パラナが目を見開く。
「何が起きたの?」
少し表情が和らいだパラナに問いかけてみた。
「私の防壁の魔法を強化したんです。私の消耗分も軽減してくれました。」
「そんなこと可能なの?」
「機械族は未知の生命体です。恐らくは機械族のみが可能な手段でしょう。体内に魔力があるようには見えませんので、恐らくは魔力を含んだパーツを使用しているはずです。それを目に見えない形にして防壁に貼り付けたと考えるのが妥当でしょうか…」
お?なんだ?なんか語り出したぞ。
ワイには魔法の知識も仕組みもさっぱりなのに。
「とにかく、1が防壁を強化してくれたってことでしょ?それっていいことなんじゃないの?」
「えぇ。いいことです。ですが、この防壁は私が生み出した干渉することが出来ない防壁なんです。」
「ほぇー。魔法って作ることが出来るんだ?」
干渉することが出来ない防壁ってのも凄いけど、魔法を作れるってことの方がワイには驚きだった。
そんなワイの疑問に答えたのはタイニーだった。
「エルフ族だけです。エルフ族の中でも特に魔法の知識に優れた方が、新たに魔法を作ることが出来ると聞いたことがあります。」
「じゃあパラナってほんと凄いんだ?」
純粋な気持ちを言ったら、パラナが頬を染めた。
「そんな勇者様。」
ワイの胸にもたれかかってくる。
「何をなさっているのですか!」
タイニーが怒っているが、それどころじゃないよね?今。
「えぇとさ、干渉不可能なはずなのに1が干渉したってことだよね?」
慌てて話題を戻す。
「そうなのです。私でも知らないような知識を機械族は持っていると見て間違いありませんわ。」
ワイの胸から離れて頬を膨らませる。
なんだか可愛いな。
「報告。敵接近。」
1の報告で、ワイらは前に再び注目した。




