第二十八章その3
「そうですか。勇者は拒みましたか。」
ホワイトレディの報告を聞いたゼウスが残念そうに言う。
「仕方ありませんね。マティーニのぬいぐるみで勇者に呪いをかけてください。私の見立ててでは勇者に呪いは効きません。ですが、あのぬいぐるみを破壊した者の抵抗力を弱めるという呪いなら効くはずです。」
「直接呪いをかけることはできないけど、物を介した呪いなら効くということですか?」
ゼウスの言葉にホワイトレディが問う。
「えぇそうです。そして、抵抗力が弱まれば、物を介した呪いで殺すこともできます。」
「ちょっとお待ちください。では今勇者は呪いでは死なないのですか?」
ホワイトレディは戸惑うが、ゼウスは表情を変えずに頷いた。
「その通りです。私たちの目的を変更しなければならないようです。邪魔になりそうな勇者は呪いで殺します。洞窟内で殺せればそれがベストです。しかし今後にモスコミュールは必要です。あなたとモスコミュールだけは帰って来てください。」
ホワイトレディは、ゼウスに言われた通り洞窟に戻りジンバックの力を借りて、モスコミュール・ジンバックを神界へと帰還させる。
その後、ジンバックの力を借りて、再びジンバックと自分を洞窟に転移させ、自分1人が神界に戻った。
ホワイトレディの力<空間転移>は万能な力ではなく、自分1人しか対象にできない。そのため、力の効果範囲を広められるジンバックとセットに能力を使ってきた。
ジンバックは自分の攻撃ですら効果範囲を広められるので、先の戦いで空にナイフを刺しただけでも敵対者にダメージを与えることが可能だった。
『ジンフィズとマティーニがいるから万が一はないと思うけど、もしジンバックが死んだら私の力は無価値になるわね…』
実は、それ程にホワイトレディの戦闘能力は低かったのだが、太郎たちはそのことを知りえない。
そのアドバンテージが神たちにはあった。
ブッドレアは、だいたいの神の能力を知っているので、ブッドレアと合流される前に勇者を叩く必要があった。
どちらかと言うと、<神の軍勢>の方が焦っており、そのために今回の洞窟という奇襲に出たわけだった。
「私はブッドレアを倒しに行きます。勇者が私達の思惑通りに動かなかったことをブッドレアが知れば、必ず私たちに攻撃を仕掛けてくるはずです。その前に倒しましょう。まずやるべきことはブラッディメアリーに剣を作らせることです。」
そうゼウスが言い、急いでブッドレアを倒す作戦が開始された。




