第二十六章その3
「あーあー。もう呪い切れちゃったね。」
大きな鏡を見ながら残念そうにジンバックが言う。
「直接触れてないから、いくら儀式で強くしても限定的な効果しか得られないわ。」
片手を振りながらジンバックに応えるのは、<色欲>のジントニック。<記憶>の力を持ち、触れた者の記憶を改ざんする能力を有する。
かつてコピー人形にあたかも生きていた時のような記憶を植え付けて、スカーレットを襲わせた張本人だ。
ただ、コピーを作る力と変身させる力があってやっとまともな人族を作れる。
ジンフィズの言う通り、戦闘に特化した力ではない。
「それにしても考えたよねー。<儀式>の力で<呪い>の力と<記憶>の力を強力化して人形にその力を入れる。人形に触れた者を呪って、その力を伝達して記憶を改ざんする。口が裂けて見えたように記憶を改ざんしたり、そこに人形がないように記憶を改ざんしたり、ほとんど幻術と変わらない使い方ができるんだね。」
両手を頭の後ろに組みながらジンバックがジントニックに言う。
「相手に触れさえすれば、自由に操ることができるのが私の力だからね。」
「だが、その分消耗も激しいし集中力が必要なのだろ?」
隣で人形を増やし続けているのは、<傲慢>のシャンディガフだ。<複写>の能力を持っており、触れたもののコピーを作れる。
物を増やすことができるオペレーターの力との大きな違いは、どんなものでもコピーができる点だ。
オペレーターは単純なものしか増やせない。その代わり一度に大量の数を増やせた。
一方の<複写>の力は、一度に1つしか増やせないが、<呪い>と<記憶>の力がかかった人形をそのままに増やすことが可能だ。
「あなたがいてくれれば、私は一度力を使えばいいから楽ね。」
後は呪いが自動で記憶改ざんをしてくれるというのが、ホワイトレディが考えた筋書きだ。
これを続けて勇者達のチームを分断するのが目的。
「ま、洞窟に入って来なくても同じだったけど、入ってくれてより効果が高められたわ。」
ホワイトレディが得意げに長い髪を掻き上げた。
「後は戦闘部隊が適度に分断してくれるでしょ。」
ジンバックがにやりと笑う。
早くクソ虫を殺したいなーとポツリと言った。




