第二十六章その2
中には灯かりが無かった。
ワイら全員が洞窟に入ると自動的に入口が閉まった。
「しまった!罠だったのか!」
とかチラコンチネが言っているし、タイニーとかワチワヌイはかなり動揺してるけど、ワイ言ったよね?
「それにしてもタローはさすがなのだ。これを罠と見破るとは。ダリアと結婚する男はこうでなくてはいけないのだ!」
ダリアはなぜか自慢げだけど、罠を見破ったのと結婚も関係ないし。
「勇者様これを。」
パラナに渡されたのは、小瓶に入れた小さな炎だ。
魔法で出したものらしい。
これで灯かりが無くても安心だ。
「ダリアが先頭を歩くのだ。」
スタスタとダリアが先に行く。
「危ないよダリア!」
チラコンチネが後を追う。
その後ろにワイとパラナ。後方には、ワチワヌイと1とヘリックスが控えている。タイニーはワイの懐で、ティムは低空飛行しながらダリア達と共に先頭にいる。
突如目の前に人形が現れた。
日本人形だ。こういう暗がりにあると凄く不気味だ。
しかも、人形に怪しげな灯かりが不気味に当てられているから、尚更気味が悪い。
「日本人形か…俺がいた世界にはこういうのがあったりしたな。」
しげしげと眺める。
「タロー…気持ち悪くないのか?」
ダリアはこういうのは苦手なようだ。
まぁ気持ち悪いけど、怖いもの見たさというかワイは比較的ホラーものとか平気だからな。
手に取ろうとするとパラナが止めた。
「危険です。」
「人形が?大丈夫だって。俺のいた世界にはいい意味で使われることの方が多かったし。」
そう言いながら人形を手に持つ。
瞬間、人形の口が裂けてギザギザの歯をカチカチと鳴らした。
「うわっ!」
あまりの気持ち悪さに放り投げてしまった。
「どうしたのですか?」
タイニーが訊いてくる。
「いや、いま人形の口が気味悪く変化したんだ。」
「私には何も変化が無かったように見えましたが?」
え?
周りを見渡す。
「だから危険だと言ったのです。」
やれやれとパラナに言われてしまう。
ワイにだけ見えた?手に持った者にだけ見えたってこと?
ふと、人形を投げた先を見ると人形が失くなっていた。
「あれ?人形は?」
ワイの言葉に全員の顔が引きつる。
「タロー?大丈夫か?」
「人形あそこにあるじゃん。」
「やっぱ気味悪いですね。さっさとここを抜けましょう。」
ワイに何かかかったってことか?
「タイニー。念のためティムの上に乗って俺から離れてた方がいいかもしれん。」
そう言ってワイはタイニーをティムに乗せた。
ワイに見えなくなった人形、ワイにしか見えなかった口。
今のところ変化はこれだけ。
これから何かあるのか?
それにしても…
――イヒヒヒヒヒヒッ。
洞窟全体から響いてくる、頭が割れそうな甲高い不気味なこの笑い声は何なんだ?
さっきからやかましい。
みんなはよく平気だな…みんなには聞こえていない?…
――そうだよ。
「――!」
耳元で声がして後ろを振り返る。
さっきの人形の気配がした。
「どうしました?」
ワチワヌイが驚いてワイを見る。
心臓の音がうるさい。
気がつくと、笑い声が聞こえなくなっていた。
「何でもない。早く洞窟を抜けよう。」
冷や汗が止まらない。
やっぱりこの洞窟は何か変だ。




