第二十五章その4
町で数日間休むと、みんなの傷も癒えて動けるようになった。
トラガスとミシシッピは一度自分達の居住区へ還るようだ。
「さすがに長時間外に出過ぎましたから。すぐに代わりの者が来ますので。」
そう言ってからミシシッピは、ミサンガへと吸い込まれるように消えた。
もはや見返りなどは不要となった。
それもそうだろう。人族が全滅し、神と本格的に戦闘が始まるわけだから。
トラガスもベルトへ吸い込まれるように消えた。
間もなく代わりのエルフ族とドワーフ族がやって来た。
驚いたことに2人とも女性だった。
相変わらずのハーレムルートに、ワイはかなり満足だ。
「勇者さん。よろしくお願いいたします。」
パラナと名乗ったエルフのお姉さんは、もう完璧だった。
出るところは出て、引き締まっているべきところは引き締まっている。
それでいて、体の曲線を強調するようなピッタリとした服装でエルフ特有なのか、露出度もある。
「タロー。」
ダリアの声が冷ややかだ。
あまりジロジロ見るのは辞めた方が良さそうだ。
「ヘリックスダ。」
筋肉隆々でかなり強そうなドワーフが名乗った。
対照的な2人が仲間になったものだ。
「とりあえず平野を抜けて砂漠へ向かう。パラナが、エルフの森を安全に通してくれるみたいだから、山脈を超えて異種族の世界ルートで魔王城へ向かおうと思うけどどうだろ?」
<ラベンダー湿原>を抜けるよりも安全なルートなはずだ。
皆異論はないようなので、とりあえず進路を東にとる。
人族がいなくなった町は静かすぎた。
異様な程の静けさに、何か幽霊的なものを感じずにはいられない程だった。
生ものの食材は全て腐り、ゴミは廃棄されないため、かなり匂いもきつかった。
それでも保存が効く食べ物だけ持てる分持った。
「本当に人族はみんな死んでるんだな。」
ポツリと言った一言に、チラコンチネが応えた。
「後から来たくせにでかい顔したからじゃん?バチが当たったのよ。」
フンと鼻を鳴らす。
「私もそう思いますわ。魔族や私たちのような種族とも仲良くなっていたのならば変わっていたのでしょうけど。」
ワチワヌイも頷く。
「ダリアはよく分からないのだ。でもタローも人族だろ?それならダリアは人族も好きだったのだ。それに、カルドン達はいいやつらだったのだ。」
ダリアはカルドン達の死を、ワイ以上に悲しんでいる。
ワイと一緒にいたからカルドン達は死んだ。
それでも、ダリアも他のみんなも一緒にいてくれた。
ワイはきっと、かなり恵まれた方なんだろうな。
ふと、生前の頃を思い出す。
彼女ができたこともなく、いわゆる陰キャと呼ばれる性格で、幼い頃にはいじめにもあったことがある。
そんな人生を呪い、もっと恵まれた人生になりたかったと思ったこともあった。
でも、カルドン達はどうだったのだろう?
勇者が来たら、魔族を殺すように仕向けろと教わって育ち、生まれながらにして神の奴隷。
なのにみんな明るくいいやつらだった。
思い出すと感情がまた爆発しそうだ。
「お?勇者。何か思い出した?」
チラコンチネがニヤニヤしながら言ってくる。
そうだった。ワイが感情を高ぶらせると、仲間のステータスが上がるんだ。
気持ちを隠せない――
「俺はやっぱり。神のやつらを許せない。人族がしてきたことは許されることじゃない。でも…ダリアが言ったようにカルドン達は本当にいいやつらだったんだ。」
「だから我々ハ勇者ノ助けヲするわけダガ?」
ヘリックスに言われた。
「あんまり一人で先走んないでよ?アタイらがついてるんだから。」
ポンと、チラコンチネがワイの背中を叩く。
「勇者様。1人で背負わずに私たちをもっと頼ってくださいな。」
タイニーがにこりと微笑む。
「警告。それ以上近づいたら撃つ。」
なぜか1がタイニーに警告している。
「あら?機械さんには感情がないと思っていましたが?」
タイニーがふふふと笑みを浮かべているが、どこか怖い。
「チビわさー。いつも勇者の傍にいんじゃん?こういう時くらい離れたら?」
チラコンチネがタイニーの首根っこを捕まえて、ワイの懐からタイニーを取り出した。
「や!やめてください。私たち小人族は他の種族に触れられることを嫌います。」
「なぁーに言ってんの!うりうりうりうり。」
嫌がるタイニーに、まぁまぁある胸を押し付けてチラコンチネがからかう。
タイニーの顔どころか体がチラコンチネの胸に埋まる。
実にけしからん!
「あぁん?勇者もやって欲しいの?ほれ、おいで。」
ワイの視線に気づいたのか、両手を広げてくる。
え?いいの?
――チュン。
ワイの耳元を何かがかすめた。
「警告。勇者は機械族のもの。」
1がレーザー砲を撃ちやがった。
「はぁ?勇者はエロい女が好きなの!んで、猫人族はそういうの気にしない種族なの!分かる?勇者に一番適してるのは猫人族。だいたい機械とか繁殖行為できないじゃん。」
「回答。穴を増やして変形すれば勇者の欲望は満たせる。」
おい!いくらワイでも機械は硬すぎて無理だぞ。
「否定。硬さは自在に変更可能。」
え?まじ?って心読めるの?
「タローは顔に出すぎなのだ。」
ポカリとダリアに叩かれてしまった。
なんかまた、ヘンテコなパーティーになったものだ。
みんなの気分が盛り上がったところで、町を後にした。
誰もいない町を、山脈から来た風が吹いて海へと抜けていった。




