第二十四章その2
ワイらを襲ってきた<神の軍勢>はひとまず倒した。
「これかも<神の軍勢>は俺たちに攻撃してくるのかな?」
素朴な疑問だった。
「くると思いますよ!勇者殿は今、神たちと完全に敵対しましたからね。」
ミシシッピが自信満々に応える。
「アタイらの実力を知らしめる時が来たね!」
パンッと片手のひらにもう片手の拳を叩きつけてチラコンチネが言う。
「タローのことはダリアが守るから安心するのだ!」
ダリアが引っ付いてくる。
まな板の胸が悲しい。
「それよりも驚きなのは勇者様のスキルです。」
ワイがダリアの無い胸とはいえ、それでも女の子にくっつかれてオロオロしているとワチワヌイが言った。
スキル?
「勇者様のスキルは、感情が高ぶった時に仲間のステータスを上昇させる力のようですね。」
にこりと微笑まれた。
「それってすごいの?」
ワイの質問に答えたのは、魔法に長けているミシシッピだった。
「凄いなんてものではありませんよ!本来あり得ませんからね。魔法を使わずに仲間のステータスを上げるなんて。チートもいいところですよ。」
マジか!やっとワイにもチート能力が手に入った!
この力があれば神とかも怖くないんじゃね?
「でもさぁ、それって自分には効果ないんでしょ?結局勇者1人じゃ弱っちいってことじゃん?」
元も子もないことをチラコンチネが言ってくる。
このメスネコめ~。
「だーかーらー!タローはダリアが守るから強くなる必要はないのだ。」
ぽーと頬を膨らませてダリアがワイのことを庇ってくれる。
男しては情けないが、頼りになるなぁ。
「アタイも助けてあげようか?ほれほれ。」
後ろから胸を頭の上に乗せてくる。
その姿を見てダリアが、あ!と声を出してチラコンチネをワイから突き放した。
そのままチラコンチネの胸を揉みながら、泥棒猫ー!とか言っている。
「相変わらず元気ですね。」
胸元でタイニーが微笑みながら2人を見た。
「元気ではナク、緊張感ガないだけダ。」
トラガスがもっともなことを言う。
確かにそうなんだよな。
これから神と名乗る奴らと戦うことになるのに…
そういえば気になることがある。
「カルドン達人族は、<呪い>の力で死んだと言っていたけど、何で俺は死んでないんだろ?」
ワイは人族という種族ではないのか?それにダリアもだ。魔族とハーフだからか?
「さぁ。何でだろうね?勇者だからじゃないの?」
チラコンチネがダリアに相変わらず胸を揉まれながら、適当に返事をしてくる。
ミシシッピも分からないと肩をすくめるだけだ。
「それが聞きたいのはこっちよ。」
知らない声がする。
少女が立っていた。いや、人族は死んだはず。
敵…か?
「だなぁ。スクリュードライバー達を回収しに来ただけなのに、やられちゃってるし。その上戦闘準備満々みたいで。僕戦いは得意じゃないのに。」
もう1つの声がしたと思ったら、少年が現れた。
「少年と…少女?…」
ワチワヌイが呟く。
いやでも待てよ。さっきスクリュードライバーって言わなかったか?それってワイらが倒した<神の軍勢>の1人じゃなかったか?
「見た目は人族だけど、れっきとした<神の軍勢>の幹部よ。勇者には人族っていう限定は効かないのかしら?これはモスコミュールに報告が必要ね。」
少女がつかつかと歩み寄ってくる。
「ねぇねぇホワイトレディ。スクリュードライバー達が死んでるなら僕が一緒に来た意味あるの?」
少年が少女をホワイトレディと呼んだ。
「私に言われても困るわよジンバック。それよりも勇者が生きてることは驚きだわ。」
ホワイトレディが少年をジンバックと呼んだ。
「んー。とりあえず僕たち今は君たちと戦うつもりはないんだ。」
ジンバックがワイらに言う。
「なラ何故ここにいル?」
トラガスが言うと今まで明らかに敵意がなく、にこにこしていたジンバックの表情が変わった。
「僕らに話しかけるなよ!下等生物が!」
両目を見開き、今までとは思えない話し方だ。
「やめなさいよ。ごめんなさいね。ジンバックは、神の一族を最上だと思ってて、魔族と勇者が唯一対等かちょっと下くらいに考えているの。」
ホワイトレディが頭を下げた。
今まで会ってきた<神の軍勢>にしては、低姿勢だ。
「えぇと、何でここにいるの?」
勇者のワイなら平気だろうと思って質問してみた。
「さっきの話聞いてなかったの?」
お、話し方が戻った。
どことなくバカにされているような気がするのは気のせいか?
「スクリュードライバー達を回収しに来たんだよ。ホワイトレディの力は<空間転移>だから。簡単に言えば自由に場所を行き来できる力だよ。」
ワイが空間転移と聞いてピンと来なかったのを見て、付け足してくれた。
「タローが生きていたら問題なのか?」
ダリアが胡散臭いという風に訊く。
「これはこれはくそブッドレアのお嬢様。勇者は僕たちの認識では人族だからねぇ。人族はみんな死んだはずなのに生きてたからちょっとビックリしただけだよ。」
ジンバックが両手をおどけたように広げて大袈裟にお辞儀をする。
ってことはワイが生きてることは、<神の軍勢>にとっては予定外ってこと?
「ま、多少は驚きはしたし勇者が生きてたことは想定外だけど、私らにとって一番の想定外はスクリュードライバー達が死んだことよ。」
ホワイトレディが頭の後ろをポリポリ掻きながら言う。
つまり結局は何?戦うの?ワイが死んでいないのが想定外だから殺すの?
「とりあえず僕たちは帰ろうと思うんだけどいいかな?」
ジンバックが両手を合わせた後に広げる。
そしてホワイトレディに、いいよ。と言った。
「次に会う時は敵同士。仲間を殺された恨みとかそういうのはないけど、戦う時はよろしくね。」
ホワイトレディが片手を振って、さよなら。と言った。
チュン――
何かがワイの耳をかすめた後に音がした。
「こいつラを逃がスことは危険ダ。」
トラガスがレーザー砲を撃ったのだと後になって知った。
危険って?
「勇者ってバカなの?好きなところに移動できる力よ?アタイらの寝込みを襲うこともできるってことよ?」
チラコンチネがやや怒り気味で言う。
確かに言われてみればそうだ!
「あれ?ヤル気ぃ?」
にやりと笑ってジンバックが言う。
ジンバック・ホワイトレディとの戦いが始まった。




