第二十三章その4
空気が爆発した感覚がした。
感情のリミッターが外れたような感じだ。
怒りで我を忘れるとはこういうことを言うのか。
「全員!俺を助けろ!」
無我夢中で異種族の助けアイテムに叫んでいた。
町の外で待機していたタイニー、チラコンチネ、ワチワヌイ、1の4人はすぐにやって来た。
ミサンガからはエルフのミシシッピが、ベルトからはトラガスが現れた。
6人の異種族とダリアがワイの前で、3人の<神の軍勢>と対峙した。
「何なのだこの感覚は?」
ダリアが驚いてワイを見る。
「これが勇者の力か…」
オペレーターが呟くが、感情が爆発している今のワイにはその意味はどうでもいい。
「あの3人を殺せ。」
口調が変わっているのにも今のワイにはどうでもいい。
とにかく、カルドン達の仇を取りたい。
それだけだった。
「何だか分からないけど、いつも以上に体が動くよ!」
チラコンチネが素早く移動する。
「攻撃態勢:起動」
1が少女型から変形し始める。
「勇者以外は殺していいんだな?」
スクリュードライバーがキティに訊いている。
キティは何も言わずに頷いている。
いや、タイニーと目が合っている。
幻術の掛け合いをしているのか。
「機械。これも武器にしロ。」
トラガスが1に鉄くずを渡している。
「私も魔法で応戦しましょう。」
ミシシッピが一度に3つの魔法を同時に唱えた。
「ふん。さすがは長耳。魔法だけは得意だな。」
ワチワヌイが皮肉たっぷりに言って、ダリアと共に敵に向かって行った。
チラコンチネと同じ敵、<妄語>のオペレーターを狙うようだ。
ミシシッピがかけた魔法は、身体能力向上の魔法と、防御力上昇の魔法、そして敵の察知能力低下魔法らしい。
1が巨大な銃のような形となり、トラガスに渡された鉄くずもトラガスが持てる大きさの銃にして渡していた。
「攻撃開始。」
銃じゃなかった。レーザー砲だ。
巨大な光線がスクリュードライバー目がけて発射された。
凄まじい戦いの光景を目の前にすると、ワイの怒りの熱が冷めていった。
「おや?勇者殿。もう怒りが収まったのかい?」
ミシシッピが陽気に話しかけてくる。
「勇者殿の力はたぶん、怒りなどの感情が高ぶったときに、近くにいる仲間がパワーアップできる力だ。」
流石は魔法力のあるエルフ族。
だから<ブルードラゴン>討伐の時とかに、仲間に力が漲ったのか。
「それで?勇者は俺様達<神の軍勢>に逆らうのか?」
レーザー砲を受けたはずのスクリュードライバーが無傷のまま砂煙から出てきた。
「ふん。我の<増やす>力を使えば、そこら辺の岩を増やしてレーザー砲をガードすることなど容易。」
オペレーターが、ダリア達の攻撃を避けながら言う。
「俺様の<伸縮>の力で、オペレーターとの距離を伸ばせば、どんなに早く動けても攻撃を避けるのは簡単だ。」
スクリュードライバーが、こんなこと何でもないかのように話す。
「で?勇者は逆らうのか?人族は勇者を利用していただけだというのにか?」
「確かにそうかもしんないけど、俺を利用してんのはそっちも一緒だろ?俺は魔族は滅ぼさない!」
そう宣言したワイはティムを呼んでその背中に飛び乗った。
「ドラゴンに乗る勇者だと?ありえん!」
スクリュードライバーが驚くのを横目にワイは、タイニーとキティの間に割って入った。
この膠着がとければ、ワイらに有利になる気がしたからだ。
「まずい!」
オペレーターがスクリュードライバーに<伸縮>の力を使うように目配せするが、
「任せて!」
チラコンチネが躍り出た。
スクリュードライバーの力を自分に集中させるために、連続攻撃を仕掛ける。
「愚かな!」
オペレーターがナイフを1本投げる。
それは<増える>力によって何本にも複製された。
チュキュン――
全てのナイフが、1とトラガスの砲撃によって撃ち落された。
砲撃見えなかったけど、光速ってことなのかな?
「お前の相手はダリアなのだ!」
更にオペレーターの背後からダリアが飛び出す。
これでこの2人の動きは封じたも同然だ。
「1とトラガスもそれぞれダリアとチラコンチネの手助けに向かってくれ。」
ティムの上からそう声をかけた。
チラコンチネの下にトラガスが向かい、更にワチワヌイが加勢した。
ダリアの方には1とミシシッピが向かった。
ワイはティムと共にタイニーのところへ向かう。




