【読み切り】幼馴染と結婚するからと婚約破棄されたので、ざまぁしようと思ったら!
私には婚約者がいた。
別に好きではないけど素敵な人だと思っていたのに。
ある日お父様から
「彼との婚約は白紙に戻った。元々好きだった幼馴染の女性と結婚するそうだ」
と告げられた。
悔しいしショックだった。
なんで好きな女がいるのに私と婚約したのよ!
一度婚約したなら、覚悟決めなさいよ!
私は荒れた。お菓子をやけ食いし、一週間ふて寝するほどに。
だって好きではなくても、嫌いじゃなかったから。
それに巷で流行りの小説では、婚約破棄される側が被害者なのが鉄板だ。
仲のいい婚約者を性悪女に奪われた。
そんなふうに思ってた。
けれどその後、少しずつ彼の事情がわかってきた。
彼には結婚したいと思っている女性がいた。小さい頃から家ぐるみの付き合いをしていて、将来はこの人と結婚するのだとお互い思っているような人が。あまりにそれが自然なことだったから、わざわざ婚約するまでもないと、そう思っていたらしい。
けれどある日、お父様から声をかけられた。
「君を私の愛娘の婿にしたい。もちろん受けてくれるね?」
断ることなどできそうになかった。
こちらは伯爵、彼の家は子爵。しかも一人娘である私の入り婿として、将来は伯爵になることが約束されている。
そんな条件のいい話を蹴るなど、うちの家の評判に泥を塗る以外の何物でもない。私も、そんな好条件なのに断られるなどよっぽど問題があるのだろうと面白おかしく噂されて、もらい手がなくなり兼ねない。
そんな事態になったら、お父様は全力で方々に手を回して彼の家を潰しにかかるだろう。
彼は家を、家族を守るために、泣く泣く幼馴染の彼女に別れを告げて私の婚約者となった。
というのが当時の真相らしい。
そして、うちのお父様が半ば強引に彼との婚約をまとめたのは、どうやら私が原因らしかった。
たまたま知り合った彼が、その当時ハマっていた小説の登場人物に似てる!と私がちょっとはしゃいだからって…。
とんだとばっちりだ。
流れ矢だ。
横恋慕ならまだしも、そんなくだらない理由で将来を約束していた恋人と引き裂かれるなんて。
家格の差もあり一度は仕方なく私との婚約を受け入れた彼だったけれど、彼の幼馴染は別れに耐えられず、日に日にやつれていった。
その上
「彼以外の人とは結婚しない。それくらいなら一生独りでいる」
そう言い放ったそうだ。
彼以外との結婚を頑なに拒む彼女に、彼女の両親は業を煮やした。そして、無理矢理縁談をまとめようとしたのだ。
すると彼女は思い余って自殺未遂を起こした。流れの速い川に服を着たまま入って。
幸い近くにいた人に止められたけど。
そこで彼の限界がきた。
「彼女を死なせるくらいなら、家など潰れて構わない。彼女を愛している。この婚約はなかったことにしていただきたい」
そう決死の覚悟でお父様に頭を下げたのだそうだ。
お父様は婚約の際にかなり強引だった自覚があったのか、渋々ながらも婚約破棄を認めた。特に条件をつける訳でもなく。
…お父様の、普段は悪どいことも平気でする癖にこういう最後の最後で甘いところ、私は嫌いじゃない。
私は彼女の自殺未遂は狂言だったのじゃないかと疑っているのだけれど、まぁそれは別にいい。狂言とはいえ、そんなことをするほど好きならしょうがない。
それに結局、私が婚約してたのなんて一年足らずの間だし、彼に対する恋愛感情も芽生えなかった。
婚約破棄されてすぐは、
よし!ざまぁ展開!
と小説脳が疼いたけど、よく考えたらざまぁするほどのことはされてなかった。
…というか、事情を知れば知るほど居たたまれなくなった…。
本当ごめんなさい。
そんな訳で、私は気持ちを切り替えて新しい婚約者を募集中だ。
お父様には、
「今度はあまり強引な手を使わないでくださいね」
と釘を刺してある。
流れ矢で死なれたら寝覚めが悪すぎる。
ということなので、どなたかよい男性がいたら紹介してください!
…ただし、想い人のいないフリーの方で。できればスペック高くて顔もよくてお金があって、婚約した途端に私を溺愛してくれて、嫉妬深くてSっ気があると更にいいし、それからそれからーーーーーー