#93 ラズリチームvsマヌエラ
ほら、やっぱりね。
ルミーナもリーリィも強くなってると思ってたんだよねぇ。
ルミーナに続き、リーリィも危なげもなく勝利してくれた。
残った二人の剣客、呼び集められた武芸者の顔つきも変わった気がする。
次の相手は、剣を介して魔法を放つ魔法剣、それを操る女剣士「マヌエラ」だ。
魔導士と違って魔法を自由に扱えないのだが、剣技に魔力を乗せることで魔法並みの威力を自在に操るらしい。
さて、こいつの相手は誰にしようか・・・・
「ハバネお姉ちゃん、今度はわたしとアオちゃんがやる!」
おおーっと、ここでいきなりラズリが名乗りを上げてきたよ。
「ちょーっとぉ! ラズリにはまだ早いんじゃないかな。
あっちのお姉ちゃん、とーても強いんだよ。」
「大丈夫だよ、わたしたちだって浮島のお姉ちゃんたちに鍛えてもらってるもん。」
「ええーっ、ここはミリアに行ってもらうつもりだったんだけどなぁ。」
とここで、ミリアからラズリに思わぬ援護射撃が入る。
「私は構わないのですよ。ラズリちゃん、頑張ってたのです。
ガチで戦えば私も負けるかもなのですよ。」
えっ、ラズリってそんなに強くなってるの? 身体能力が高いのは知ってたけど。
「ハバネ、そんなに心配ならアタイも一緒に戦おうか?
アタイ一人でやっても良いんだけど、今回はラズリのフォローしてやんよ。」
うーん、まあ一戦ぐらい負けてもいいし、ここはラズリの好きにやらせてみてもいいかなぁ。
「ああー、こっちからはこのラズリと助っ人にスライムと妖精を付けるんだけど、良いかな?」
「はぁー?! こんなチビが相手なの?
そして助っ人がスライムにちっこい妖精ですって!
もしかして私のこと、馬鹿にしてるのかしら。」
思ってた通り、ラズリを子供だと思って舐めてかかってきたかぁ。
とは言ってもこっちも、ハイそうですかって引くつもりはないけどね。
「あっれーぇ、もしかして勝てそうにないから言いがかり付けてうやむやにするつもりなのかなぁ。」
ラズリの対戦をゴリ押しするために、ちょいと相手を挑発してみる。
「これでもラズリたちは私たちの戦いについて来れるんだよ。
それがどういう意味か、あなたに分からないのかなぁ。」
私の言葉を疑わしそうに聞きながら、それでも何か感じるものがあったみたい。
「ふーん、確かにただのちびっ子じゃ無いみたいね。何か隠蔽の魔法が掛かってるみたいだし。」
おおー、魔族の特徴を隠すための魔法に気が付いたらしい。確かに優秀みたい。
「分かった、勝負しましょう。」
次の対戦は、ラズリチームとマヌエラが戦う事が決定した。
ということで、闘技場の中央で対峙するやる気満々のラズリチームと納得できないという心情がモロに顔に出ているマヌエラ。
「次は魔剣士のマヌエラ対ラズリチームの試合である。試合始め!」
ラズリは自分用のぷちドローン4機を周囲に配置、その斜め後ろにフィーリアの乗るケッタンがおり、アオの乗るドローンはラズリの前に浮かんでいる。
マヌエラは、愛刀であり魔道具でもある魔剣を鞘から抜いて構えてる。
しばしの睨み合いの後、マヌエラが動く。
剣に魔力を込めて、その場で袈裟切りのように振り抜いたのだ。
振り抜いた剣からは数枚の風の刃が放たれていた。
「アタイに任せな!」
そう言うとフィーリアがケッタンの上に立ち上がり、右腕を左から右へ振ると、一瞬ラズリたちの周囲に高速で巡る風の壁が生まれてマヌエラの刃を消し飛ばす。
「風魔法でアタイに勝てると思うなよ。」
「ふん! この程度じゃ驚きもしないか。じゃ次はこれだ!」
今度は魔力を込めた剣を地面に突き立てると、地面がボコボコと盛り上がり、それらは10cmほどの石礫となりラズリに向かって高速で撃ち出された。
「ハハッ、こいつは風の壁程度じゃ防げないさね。」
今度はアオが動く。ラズリの前に立ちふさがったアオは身体から二本の触手を伸ばしそれを鞭のように振り回し始める。
目で追えないほどの高速で振り回される触手が、飛んできた石礫のことごとくうち砕いて見せた。
「なんなのよ?!、なんでスライムのそんなことが出来るのよっ!!」
「フィーちゃん、アオちゃん、ありがとうね。」
完全に信頼し切った笑顔でお礼を言うラズリ。
「まあいいや、こんな魔導士ごっこみたいな手で勝っても嬉しかねえし、私は剣士なんだ。
ここから剣士として戦わせてもらうよ。」
そう言って剣を鞘に納め居合い抜きのような構えると、まさに弾丸のような速度でラズリに飛び掛かっていった。
それに合わせるように拳術の構えから、こちらも弾けるように飛び出す。
闘技場の中央で激突した二人は、その場で激しい攻防を繰り広げていく。
ぶつかり合う二人の間では、撃ち合う衝撃や火花が飛び散っているが、その光景は少し変だ。
そう、ラズリはまだ子供だ。だから体躯も小さい。
そのラズリが無手で撃ち合っているのだが、その短いリーチでは大人のマヌエラに到底届くはずがないのだ。
では、マヌエラの剣と撃ち合ってるのは、いったい何なのか?
その答えは、ラズリのぷちドローンたちだ。
2機の防御ドローン『ぷちテクト』と2機の攻撃ドローン『ぷちセイバー』が、まるでラズリの手足の延長の様に随時入れ替わりながら動き回っていたのである。
この戦い方は、ラズリが自分で考え、浮島のメンテナたち自動人形たちの協力を得て完成させた、ラズリのためのラズリだけの戦い方なんだよ。
ラズリの繰り出す拳に、蹴り込む脚に、ピッタリと同期した4機のドローンがそれぞれラズリの手足の延長として激しい殴り合いを繰り広げているのである。
「な、なんなの? この子?!」
自分と対等に渡り合う小さな女の子に、驚愕の表情を見せるマヌエラ。
そうなのだ、小さくてもラズリは魔族の子供なのだ。
身体強化魔法を自然に使いこなし獣人をも凌ぐという身体能力を持っていて、今でも体術だけの戦いならルミーナとガチンコの勝負ができるほどなのだ。
そんなラズリもドローンの扱いはそれほど上手いわけではなかった。
基本的にドローンは、操縦者が動きのイメージを送ることで思い通りに動かせるんだけど、ラズリは何かをしながら同時にドローンも、という扱い方ができない。
なんというか、右手で字を書きながら左手で積み木を積み上げる・・・みたいなことを自然に素早くできないという感じかな。
だけど、それでも諦めなかったラズリにメンテナが助言をして、ほかの自動人形たちも協力することで、今の戦い方を身に着けたのである。
メンテナが戦い方のイメージを、ウーリアが体術を、テクリヤがドローンの扱い方を、アテルサがドローンと繋がる魔力の効率的な運用を、他の人形達もサポートに、と全面的な協力をしてくれていたらしい。
ルミーナを相手に初めて披露してくれたときは、直接戦ったルミーナだけじゃなく私たち全員がかなりの衝撃を受けたんだよなぁ。
相変わらずスキのない連撃に魔剣攻撃を混ぜてくるマヌエラに対して、魔法攻撃はフィーリアに物理攻撃はアオに完全に任せてラズリは自分の技を全力でぶつけていく。
双方一歩も引かず、激しい攻防が続いていたがひときわ強い衝撃で二人が弾かれたことで、そのまま距離を取ってにらみ合いとなる。
とりあえず乱れた呼吸を整えながら、仕切り直しのつもりなのかもしれない。
長いような短い時間、乱れた呼吸がいくらか落ち着きを見せた刹那、二人の動きが始まる。
「これで決めさせてもらうよぉ!!」
「わたし、ぜったいに負けないから!!」
全身の闘気を練り上げた上、さらに高めた魔力も全てを注ぎ込んだ魔剣を真上に振りかぶり、弾丸のような勢いで飛び出すマヌエラ。
それを受けて立つようにラズリは忍者走りのように両腕を後方に伸ばした格好でマヌエラに突進する。
迫り来るラズリ目掛けて大上段から魔剣を振り下ろすマヌエラに対し、背後から渾身の力で前方のマヌエラに両腕を振り抜くラズリ、それに追随するぷちセイバーが2機。
「ガッ、キィィィーーーーーーン!!」
振り下ろされる魔剣と交錯するように振り抜かれるラズリの両腕、ピタリとその軌跡をなぞる2機のドローン。
その場を一閃の衝撃波が駆け抜けた。
「カキィーーン!」
一拍の間をおいて、魔剣の折れた剣先が地面に落ちる音が響いた。
マヌエラが打ち負けて剣を折られたのだ。
まさかの結果にスキを見せてしまったマヌエラを見逃さないラズリ。
両腕に闘気を込めたラズリがドローンを介さず直接両腕で渾身の掌底を叩き込む。
子供の拳圧とは思えない勢いでくの字に折れたマヌエラが場外に吹き飛び、壁にめり込んだ。
「ハバネお姉ちゃん、わたしの勝ちぃ!」
私たちに向けてにぱっと笑い可愛いガッツポーズを作るラズリ、マジ可愛い、マジ天使だね!
読んでいただきありがとうございます。
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