#92 リーリィvsリシャール
浮島でのウーリアとの鍛錬?は、無駄ではなかったみたい。
初戦はガルガを負かしてルミーナの勝利で終わった。
「わはははは、なかなかやるじゃねぇか。
生意気な小娘どもだと思ったが、言うだけのことはあるみてぇだ。
面白れぇ。 こりゃ次の対戦も期待ができそうだな。」
どうやら親分さんにはルミーナの戦いは気に入ってもらえたようだ。
だけど、ガルガを連れてきた幹部さんは凄い形相でこっちを睨んでるよ。
まあ、ガルガを売り込んであわよくば・・・なんて考えをぶっ壊しちゃったもんね、私たち。
「おお、凄い形相で睨んでいるのです。
まあ出世の道をハバネにつぶされたのだから、仕方がなないのです。」
「いやっ、実際につぶしたのはルミーナだから、私まだ何もしてないから。」
「ハバネお姉ちゃんは、自覚が足りないの。」
ラズリっ?、そんな言葉どこで覚えたの?!
そして不機嫌さを隠しもせず、意識のないガルガを連れてこの場を退場していった。
さってと、じゃあ気を取り直して次行ってみよう。
そして登場したのは、長身ながらひょろっとした体格で魔法使いらしく黒いローブを纏いフードを目深にかぶった陰気な男だ。
「今度の相手は闇魔導士「リシャール」みたいだね。誰が相手をする?」
戦いを終えたばかりなのに、あまり消耗した様子に見えないルミーナがそう聞いてくる。
「魔導士、なら、私が、相手をする。」
相手が魔導士と聞いて、リーリィが名乗り出てきた。
「どう、イケる?」
そう聞いた私に、
「大丈夫! 魔法勝負なら、絶対、負けない!」
なんだかよく分からないけど、すごい自信だ。
ということで、次はリーリィが出ることに決まった。
闘技場の中央で対峙するリーリィとリシャール。
「次は、魔導士のリーリィ対リシャール。試合始め!」
審判役の掛け声とともに、試合が開始された。
リシャールが小さな声で短く何かを唱えると、リーリィの影から触手のようなものが何本も飛び出しリーリィを拘束しようとする。
「わっ! なにっあれ?!
リーお姉ちゃんの影からなんか変なものが出たよ。」
「ラズリちゃん、あれは闇属性の魔法なのです。
闇属性の影を操る魔法なのです。あの触手で相手を動けなくするつもりのようなのです。」
ミリアの解説によるとアレは闇属性の拘束魔法魔法らしい。
すでに自分の足元、その魔力の動きから相手の手を読んでいたリーリィ。
すぐに頭上にいる光属性のドローンを動かし、フラッシュのような閃光を放つ。
頭上の広範囲から降り注ぐ光によって足元の影が消え去り、リシャールの仕掛けた魔法も即座に無効化される。
今度はリーリィが火属性ドローンを操って、周囲に火の玉を出現させそれを相手に叩きこむ。
いわゆる火球と言う魔法だが、いつもの様に無詠唱だ
だがその攻撃もリシャールの詠唱と共に出現した黒く薄いベールのようなものに防がれてしまった。
闇属性の防御魔法なのだろう、相手も無詠唱並みの短縮詠唱で魔法発動が早い。
「ねえねえ、リーお姉ちゃんの攻撃、なかなか決まらないね。」
「流石は一目置かれる魔導士、魔法の使い方に隙が無いんです。」
「まあまあ、試合はまだ始まったばかりだよ。
リーリィだって凄いんだから、安心して見てようね。」
その後も距離を取って攻撃魔法の応酬を繰り広げるが、決定打には至っていない。
リーリィは様々な属性の魔法を繰り出していくが、リシャールは闇属性の魔法だけでその全てを往なしている。
闇魔導士としては天才だと言われるのも頷けるなぁ。
膠着してきた勝負に、リーリィは流れを変えるべく近接戦を仕掛けようと試みるが、それを嫌うリシャールは巧みにそれを躱して常に一定以上の距離をキープし続けている。
その動きは賞賛ものに値するかも、絶対に自分の有利な距離を譲らないつもりみたいだ。
こうなってくるとリーリィは敵の防御を超えて確実なダメージを与えるには、ゼロ距離からの高威力魔法を食らわせるしかないだろう、そして彼女もそうするつもりのようだ。
それからも何とかして距離を詰めようとするリーリィだが、その全ては躱せれてしまう。
とはいえ、決め手がないのは相手も同じだったが、負けなければ引き分けでも良いと、リシャールは防御に徹することにしたようだね。
まあ、こんな余興のような試合を本気でやるつもりは元からなかったようで、自分の名誉さえ守れればそ勝敗はどうでも良いのだろう。
双方が手詰まりになったところで、唐突にリシャールが提案してきた。
もうこれで引き分けにしよう、と。
だがリーリィはここで「自分から最後の攻撃をするから、それが通用しなかったら負けを認める。」と逆にリシャールへ提案をしたのだった。
「わかった、それで構わない。」
その提案をリシャールは了承する。
「この魔法で、決める!」
リーリィの前に陣取った土属性ドローンが土魔法を発動させると、目前に大きな礫塊が生成されていく。
それを見たリシャールは呆れた顔でリーリィに声をかける
「おいおい、いくら岩をデカくしたところで俺の防御は抜けないぞ。」
岩塊の生成が終わるとリーリィはニヤリと笑みを浮かべ、そして岩塊に手を伸ばしてリシャールに向けて撃ち出した。
凄まじい加速でリシャールに迫る岩塊、だがそこには到底ありえない光景が展開していた。
それは岩塊の末端に造った取っ手を掴んだリーリィが岩塊もろともリシャールに突進していたのである。
岩塊がリシャールのシールドに激突する寸前、手を離し離脱するリーリィの反対の手にはすでに放つべき魔法が準備されていた。
岩塊を防いで一緒に砕けるリシャールの防御魔法、その瞬間無防備になったリシャールの懐に飛び込んだリーリィはゼロ距離から魔法を放つ。
「空気爆雷 !」
自身が生み出した新たな魔法の名を唱えた瞬間、リーリィの手の中で極限まで圧縮された空気が指向性を与えられて爆発的な勢いで解放された。
膨大の大気の圧力がリシャールに向かって放たれ、その身体は勢いよく場外へ吹き飛ばされていく。
自身も反動で軽くないダメージを受けたリーリィだったが、それでもなんとかその場に踏み止まっていた。
しばしの静寂が傍観者たちの歓声に破られると、その場で審判役からリーリィの勝利が告げられる。
「ん、勝った! ハバネ。」
普段はあまり感情を見せないリーリィの笑顔がVサインと共にそこにあった。
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