#90 ハバネの悪だくみ
「マスターハバネ、ただ今情報収集から戻りました。」
浮島から街に降りて情報収集をしていたメンテナたちが、数日の活動のあと浮島に戻ってきた。
「お疲れ様、メンテナにみんな。
休息が必要なら報告はそのあとでいいからね。」
「いいえ、休息の必要はございません。
食堂にて、集めた情報のご報告をいたしたいと思います。」
そこそこ込み入った話になりそうなので、食堂に腰を落ち着けてじっくりと報告を聞くこととなり、みんなで食堂に移動する。
「私たちが集めた情報は、いったん私に集約し整理分析を行いましたので私よりご報告させ頂きます。」
「うんわかったよ、それじゃよろしくね。」
「了解しました、マスターハバネ。
まず、マスターを狙っているという組織の名前は『ドラゴ・ファミリス』、『オランド・ドラーゴ』を頭目とし、イースタン全土に勢力を広げる裏社会の組織です。」
「やっぱり、ヤクザかマフィアの親分な感じなんだぁ。」
「マスターの言うヤクザと言うのがどういうものか分かりませんが、暴力沙汰は日常ですがひどく治安を乱すことはしておりません。
というか、一定のレベルで治安を安定させているようです。
それどころか、権力を傘に着る衛兵や貴族に対して一定の抑止になっている節もあります。」
「ねえ、それってあいつらは悪い奴じゃないってこと?」
ルミーナが素直な疑問を口にする。
「それは、彼らの組織の出自に関わりあるようです。」
そういってメンテナが語ったのはドラゴ・ファミリスの成り立ちの話だったとなった。
それは、かつてイースタンが大国へ至る過程にあった頃、とある開拓村の自警団がその礎となった。
その後、戦力の強化を図るため各村の自警団を組織化してその規模と力を高めていった。
広大な領地を得て安定時期に入ったイースタンだったが、大国の宿命とも言える権力者の腐敗から逃れることは出来なかった。
この時期、力を蓄えていた元自警団だった組織はその在り様を大きく変化させていった。
権力者の横暴に虐げられる民衆を守る盾として、闇に潜み非合法の戦いを仕掛けていく。
そうやっていつしか裏社会に、かつての義の志を僅かながらも残した闇の反社会組織が出来上がったのだった。
「代々先駆者の意志を継ぐ者が後継者に選ばれながら、その組織は存続し続けてきたのです。
現在の本拠地は、イースタンの正門と呼ばれる国境都市『テイオルーネ』にあるようで、その場所も把握済みです。」
「スゴイね、この短期間でそこまで調べあげたんだ。
ホントすっごく助かる、ありがとうね、メンテナ。」
「いえ、もともと外界の様子を探るのは私たちの仕事でしたから。
それより、近々ドラゴ・ファミリスは各地から幹部を集めて何やら集会を催すようです。
推測ですが、頭目オランドの生誕の祝いかと思われます。」
「へぇー、盛大の宴会かぁ。
私たちも何かサプライズイベントを用意してみようかなぁ。」
「ハバネ、悪い笑顔、たぶんロクでもない事、考えてる。」
「ちょ、ちょっと待つのです!?
そこには、世界レベルの実力者が何人も護衛にいるはずなのです。
私たちでは、とても敵わないのです、自殺行為なのです。」
ミリアの忠告はごもっとも。でも私は結構楽観視してるんだよね。
「まあ、勝てなくてもいいし、いざとなれば逃げちゃえばいいんだよ。
とりあえず、大暴れして実力を示して、親分さんが面白がってくれれば成功かな。
それにさあ、ルミーナやリーリィ、それにみんなも浮島でウーリアやアテルサたちに鍛えられてかなり強くなってると思うよ。」
「いいじゃんいいじゃん、腕試しできるんだろ。
アタイは新し魔法を思いっきりぶっ放しててみたかったんだよなぁ。」
「ハバネがそういうなら、まっいいか。
実を言うと私もどのくらい実力が伸びたか、試してみたかったんだよね。」
「ねえねえ、ハバネお姉ちゃん。
わたしもアオちゃんと一緒にがんばるよ!」
リーリィとミリアも苦笑いを浮かべているけど、反対する気はなさそうだ。
「ねえ、メンテナ。
その集会って具体的にどんなものなのか、何か情報はないの?」
「はい、多少信頼性は落ちますが、噂の類をいくつか拾っております。」
メンテナたちが集めてきた噂を総合するとこんな感じだ。
・親分の誕生日を祝う集会は毎年のことである。
・各地にある支部から有力幹部が全員集まってくる。
・毎回必ず行われるイベントがある。
・各支部のお抱えやスカウトしたハンターや武芸者を
親分の前の戦わせる御前武闘会が開かれるようだ。
・実力が認められれば高待遇で親分の直属の配下になれて、
紹介した幹部も親分に目をかけてもらえるのだそうだ。
・参加すれば、末端の下っ端まで楽しめる楽しい宴会なのだという。
・今回の目玉は、それなり名の知られた4人の有名人がでるらしい。
・拳闘士「ガルガ」、女剣士「マヌエラ」、
闇魔導士「リシャール」、魔導操術師「ギルネジール」がその4人。
早い話が、強者の戦いを肴に親分が楽しめる大宴会ということらしい。
そう聞いた私は自然と笑みを浮かべていたらしい。
「ハバネ、あんた何かとんでもないこと考えてるでしょ。」
私の笑みに気が付いたルミーナが、変な顔をしてツッコんできた。
「えっ、別に変なことなんか考えてないよぉー。(棒)」
「絶対嘘、そういう態度、きっと、変なこと考えてる。」
「ぜんぜん変なことじゃないよ。
ただ、武闘会に乱入して大暴れして親分に楽しんでもらおうかなって考えただけだから。」
「ううーーん、やっぱりハバネはとんでもないこと考えていたのです。」
「ええーそうかなぁ、あの親分ってさ、強い奴が戦ってるのを見ること楽しんでるんでしょ。
だったら、私たちが大暴れするとこも楽しんでくれるんじゃないかな。」
「「「ハバネは能天気すぎる!!」」」
ルミーナたちには盛大に呆れられたが、それでも暴れることに異存はないというかやる気満々?
まあ、もの凄く強い奴がいて敵いそうになければ、ウーリアたちに助っ人してもらってトンズラすればいいしね。
最悪、ほとぼりが冷めるまで浮島に隠れて遠くへ逃げよう。
そして、親分さんの誕生の宴席が開かれる日が来た。
一段高い所に親分さんの席がある宴会場、それぞれの卓を囲んで幹部たちは酒杯を傾け盛り上がっており、その会場の前に広がるのが即席の闘技場で、その周囲を下っ端の手下が囲んでいる。
幹部たちは連れてきた強者を親分に紹介しては、それぞれを闘技場で戦わせてその力を披露していく
徐々に白熱していく闘いに、盛り上がっていく会場
私たちはスクランダーを装着した状態でリーリィに魔法で気配を消してもらって会場の上空から様子をうかがっていた。
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