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#89 私って人気者かも?!

「それじゃあ、ギルドが何か情報を持ってくるまでは待機ってこと?」


 ギルドからの帰り道、頭の後ろで手を組み、ルミーナが不満げにぼやく。


「何かするにしても、相手の正体が分かんなきゃ始まんないでしょ。」


「焦ってもしょうがない、敵を特定したら、あとは徹底的にやる!」


「そうなのです! 敵が分かるまでは我慢なのです。でも敵が分かれば、ふふふ・・・なのです。」


 ルミーナだけじゃなかった。みんなも何だか高ぶってらっしゃる。まあ、私もなんだけどね。


 そんな感じで情報を待ちつつ、宿屋で新作お菓子を作って、みんなで屋台広場で買い食いして回り、たまにギルドで依頼を受けて魔物を蹴散らす。


 なかなか来ない敵の情報を待つ時間を、私たちはそれなりに有意義に過ごしていた。


 とはいえ、ただ黙って時間をつぶしていたわけでもないんだよねぇ。


 ギルドの調査尋問の成果を待つ間に、ミリアの実家ストレイン商会にも目ぼしい組織を調査してもらっていた。


「ハバネの持つ(異世界の)知識のおかげで商会の業績は右肩上がりなのです。

 だから、ハバネからの依頼(おねがい)は商会の最優先事項なのです。」


 商会は、ミリアが遺跡調査で見つけた遠話の魔導遺物(アーティファクト)を複数所持していてそれを有効活用しており、それが商会を大きくする原動力にもなっていたのだ。


 当然、その魔道具はミリアも持っていて普段から商会との連絡に使っていたので、今回の件もすぐに伝わっていて調査への全面協力も取り付けていたというわけなのだ。


 そんな商会からの情報で、現時点での有力な候補は3つ。


「ねえミリアお姉ちゃん、ハバネお姉ちゃんの敵がたくさんいるの?」


「ラズリちゃん、これはそうかもしれないって人ってことなのです。

 だから、この間襲ってきた奴らの黒幕さんがこの中にいるかもって調べているのですよ。」


 とミリアは言ってるけど、全部ハズレの可能性もあるんだよなぁ。


 でも今のところ、これと言って手がかりもないし、まずは商会の情報を聞いてみた。


 一つはミリアの商会があるウエスタリアのとある豪商らしいのだが、今のところは情報収集に励んでいる状況で行動を起こしている様子はないという。


「ウエスタリアに行ってた時には、そんな話聞かなかったけど。」


「ハバネがうちに来て残してくれた技術や情報のおかげで、あの後うちの業績がさらに爆上がりしたのです。

 そして、その理由を探っていたこの豪商がハバネさんに目星を付けたということのようなのですよ。

 ただ、動き出しが遅かったというのもあって、未だ情報集めに奔走しているレベルなのですけどね。」


 つまりは将来的には面倒な相手になるかも知れないが、現状の脅威とはなり得ないということらしい。


 二つ目が大陸の東部地域を治める『イースタン正統王国』を筆頭に大小の君主国家が集うイースタン王侯連合、そこを拠点にしている魔道具ギルドだ。


 情報によると、このギルドでは近々トップの交代が行われる予定で、次期トップを狙う2つの有力派閥のうち、劣勢の派閥が起死回生のために私のドローンに目を付けたらしい。


「あのさぁ、派閥闘争の決着と私のドローンにどんな関係があんの?」


「魔道具ギルドは、ドローンを、未知の魔道具、だと思ってる、それも革新的なものだと。

 その画期的な技術が、手に入れば、派閥の立場が、強固になるはず、だと目論んでる。

 つまりは、ハバネを狙ってる。」


「なあなあ、じゃあ今回の黒幕ってのはそのギルドなのかぁ? ならすぐに行って風魔法でぶっ飛ばしてこようぜ!」


「フィーリア、慌てないでなのです。魔道具ギルドもどうやらハズレみたいなのです。」


 そうなのだ、もの凄く怪しそうなこのギルドなんだけど、今はちょっと動けない状態だというのだ。


 どうなっているかと言うと、それぞれが相手の弱みを握ろうと激しい探り合いをしているようで思うようには動けてなくなっているらしい。


 自派閥にとって有効な手札であるドローン技術、だけどそれは相手の派閥にとっても同様ということで、私の存在を悟られて横から掠め取られないようにするために思うように動けないのだそうだ。


 まったく何やってるんだろうねぇ。


 そして最も有力と思われるのが、同じイースタンを根城に活動している裏社会の組織らしい。


 ただ、裏の組織と言う割には極悪非道の悪組織と言うよりは、前世でいう任侠?と言うかヤクザに近い組織のようだ。


 その昔、イースタンが発展していく過程に一つの開拓村の自警団が、その後村同士をまたぐように組織が大きくなり、やがて社会の裏から支配者の横暴に対抗する組織へと変貌していったらしい。


 だから、堅気に迷惑かけるな!みたいな暗黙のルールがかろうじて残っているとかなんとか。


 まあ乱暴者が所属していて敵対組織と血を血で洗う抗争を繰り広げてはいるものの、堅気・・・、いわゆる一般人が巻き込まれることはほとんどないらしい。


 そんな映画に出てくるようなヤクザ組織の大親分ってのが、ある種の人材マニアらしくて、優れたハンターや武闘家、特殊技術をもつ達人なんかを配下に加えるのが趣味なんだって。


「そして今、目を付けらているのが私ってことなんだね。まあ目立てばこういうことが起きることは予想してたけど、やっぱり面倒くさいなぁ。」


 そして、この情報にはまだ先があって、大勢の子分を従えた大親分の目の前で勧誘を拒否すると啖呵を切った高ランクハンターがいたらしく、大笑いしてその胆力を褒めたうえで勧誘をすっぱり諦めたなんてこともあったのだそうだ。


 ただこの親分はそんな感じでも、下っ端の中にイイカッコしようと噂にのぼった人物を強引な手段で大親分の前に連れて行こうとする手下が後を絶たないんだってさ。


 今回、私に絡んできた連中も十中八九、この裏組織の人間だろうというのがミリアの見立てのようだ。


 数日後にギルドに呼び出された私たちは、ギルマスからミリアの推測が正解だったことを知らされた。


「ハバネ、敵が分かったんだよね。

 そんじゃ、これからどうするの?」


「ハバネお姉ちゃん、わるいやつをぶっ飛ばすんだよね。わたしもがんばる!」


「でもかなりの大物、簡単にはいかない、どうするハバネ?」


 さて、これで狙うべきターゲットが決まったわけで、みんなもヤル気満々みたいだ。


「ちょっと待ってよ、みんな。

 いきなり殴りこむわけないじゃん。

 まずは敵さんの情報を自分たちでしっかり調べないと!」


 というわけで、まずは浮島を使ってイースタンの上空に向かう。


 そして、より詳しい情報を得るために、メンテナたちに情報収集を頼むことにする。


 これは、はじめての土地での情報収集なんて流石に無理だと、メンテナに諭されて彼女たちに頼むことにしたのだ。


 メンテナたちは、人に紛れての情報収集や、闇に紛れた隠密活動もお手ものだというのだ。


 元々大賢者の元でも同じようなコトをしていたというので、ここは安心して任せることにした。


「それじゃ情報収集、よろしくね。」


「お任せください。標的のあらゆるデータを揃えてまいります。」


 流れの冒険者や行商人、吟遊詩人などに扮したメンテナやウーリア、アテルサたちが嬉々として街に降りていく。


 勇んでくり出してきた私たちは、情報が集まるまで数日間を浮島で過ごすことになった。



読んでいただきありがとうございます。


これからも応援してもらえるとありがたいです。

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