#88 色々あれど、我らは平常運転?!
いつもの気安さで襲ってきた盗賊としてギルドに引き渡しに来た私は、またギルマスに襟首を掴まれて拾われた子猫のようにギルマスの部屋に連れ込まれた。
「はぁぁーーーっ、やっぱりこうなったか。」
深い溜め息をついて、こめかみを揉むギルマス。
「ええーっ、私たちは何もしてないよぉ。
いつも通りに依頼をこなしてたら、突然訳も分からず襲われたんだよ。正当防衛だよ。(棒)」
私の言い分を聞いたギルマスが皆を睨む。
「「「「うんうん。(コクコク)」」」」
慌てて私の言う通りだと頷くみんな・・・、ただしフィーリアとアオは除く。
「まあ、いい。実際に手を出したんなら立派な盗賊だ。しっかり絞って洗いざらい吐かせるとしよう。」
「それなら、首謀者と言うか親玉がわかったら教えてくださいね!
被害者なんだからそれぐらい教えて貰う権利あるでしょ?!」
私の真摯(?)なお願いに頭を掻きながらしばし思案して私の方を向く。
「まあ良いだろう。大体のアタリは付いてるから、裏が取れたら教えてやる。
だがいいかっ! くれぐれも自重しろよ! わかってるな。」
「ヤダなぁ、私たちみたいな小娘にそんなに期待されても・・・。」
「期待なんかしてねえ! 大人しくしてろって言ってんだよぉ!! はぁぁーーー。」
サブマスと視線を合わせたあと、大きなため息とともに天を仰ぐ二人。
ギルマスの部屋から開放された私たちは、以前のように今日の依頼達成報告をしにナタリアさんのカウンターに向かう。
「ナ、タ、リ、アさーん、今日もお願いしまーす。」
そう挨拶して、呼び出したキャリーから依頼にあった魔物の討伐部位をカウンターに取り出す。
「ご、ご苦労様。 でもちょっと多くないかしら?」
「えへへ、久しぶりでみんな、ちょっと張り切り過ぎたみたい。」
「ええーっ、私はまだ暴れたりなんだけどぉ。」
「まだまだ、制御、甘い、もっと、実践。」
「オイラは狩りつくそうぜって言ったのに、ハバネがさぁ・・・。」
久しぶりの普通の魔物討伐で、必要以上にヤル気出して張り切っていたみんな。
流石にやり過ぎだったみたいだけど、やっはハンターは依頼を熟してナンボだよねぇ。
「皆さん、しっかり鍛えてこられたんですね。
ブランクを心配していましたが、いらぬお世話でしたね、安心しました。
では。これで清算は完了しました。」
ナタリアさんが差し出した討伐の報酬を受け取る。
「あっ、それからハバネさん。 差し入れありがとうございます。
とっても美味しかったですよ、みんなも喜んでました。」
「ああ、あの餡子の新作菓子なら、宿の女将さんが早速メニューに入れるって言ってましたから、すぐ普通に買えると思いますよ。」
「本当ですかっ?! 絶対に買いに行きますね。」
「あはは、じゃあまたね、ナタリアさん。」
挨拶を終えると、ナタリアさんは同僚の元へ向かったようだ。
きっと新作のお菓子情報を共有しに行ったのだろうね。
やはりこの世界でも、女の子にとっては甘味は正義のようだ。
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ギルドを出た私たちは、いつもより少し早い時間だったので、屋台広場を軽く流してから宿に戻ることにした。
晩ご飯大丈夫かな?と思うほどの食欲を見せるルミーナとフィーリアに呆れながらも、楽しみながら丁度良い時間で宿にたどり着く。
いつもの様に美味しい女将さんの晩御飯を堪能すると、戻った部屋でのんびりくつろぐ。
そしてふと思いついたことをミリアに尋ねてみた。
「そういえば、ミリア。
私たちと言うか、私の噂って実際どんな感じで広がってるのか、知ってる?」
「ハイなのです。その辺のことはお父さんに頼んであるのです。
とりあえず、最近までの集まった情報は受け取ってあるのです。」
「さすがは天下のストレイン商会だね。
それでどんな噂が流れているの? 変な噂じゃないと良いんだけど。」
娯楽の少ないこの世界、噂話なんてもっとも一般的な娯楽なんだよねぇ。
だから、ルミーナやラズリまで、みんな興味津々のようだ。
「まずは、ほんの少数ですがハバネのことを歌う吟遊詩人がいるらしいのです。
と言っても、変わった従魔を従える魔獣使いの面白可笑しい冒険物語といった感じで、ほとんど真実が含まれていない作り話のようなのです。
伝え聞いた噂話を繋ぎ合わせて好き勝手に創作したのではと思うのですよ。」
「ねえねえミリアお姉ちゃん、どんなお話なの?」
「えーと・・・ですね、噂と言ってもそれほど広まっているわけではないのです。
一般の人たちの間では、ごく少数の吟遊詩人が歌う大衆伝説(いわゆる都市伝説)といった感じなのですよ。」
そんな感じで、ミリアから聞き出した私の噂っていうのは大体こんな感じ。
・曰く、見たこともない従魔を従えた従魔術士がいるらしい。
・曰く、いやあれは、従魔ではなく古代遺物だ。
・曰く、虫みたいな役に立たない従魔だそうだ。
・曰く、とんでもない力を秘めており、災害級の魔物を簡単に倒したらしい
・曰く、噂の従魔術士は凄い美人だ。
・曰く、いや、噂の従魔術士は何の力もないしょぼい子供だ。
・曰く、いや、ハンター崩れを軽く倒すマッチョな筋肉野郎だそうだ。
などなど、実体不明な上に、身に覚えのない冒険や騒動を起こすお騒がせなやっかい者らしい。
「なんなのよぉーっ、それぇっ!?」
私はそれを聞いて腹を抱えて笑うルミーナたちをよそ、頭を抱えて身悶えたのは言うまでもない。
「でも、未見の強者や未知の戦力に敏感な裏社会や権力者の一部が独自の情報網を通して、ハバネの噂に興味を示しているそうなのです。」
「ミリア、そっちの噂はどんな感じ?」
「『見たことない魔道具、ないしは魔法生物を生み出し、自在に操る術師がいる。
その者が従魔と共に操るは、誰も見たことが無い未知の魔導なのだという。』と、こんな感じの話が広まっていると聞いているのです。
まあ、一笑にふす者が殆どなのですが、興味を持って接触を図ろうとする者も僅かですがいる様で今日の賊もそういう輩の手の者のだと思うのです。」
「接触してみて、噂が本物ならめっけもん!ってとこかな。
ううーん、めんどくさいなぁ。」
真偽不明の噂が独り歩きしている限り、今後も同じようなことが続きそう。
どうしたものかねぇ、まったく。
「どんな奴が来ても、片っ端からぶっ飛ばせばいいんだよ。私負けないよ!」
「クロスロードでは、どの国の権力も無意味、物理的な手段、で来るなら、返り討ちすれば、OK!」
おおー、二人とも過激だ。 でもやっぱ日常は平穏が一番だよぉ。
やっぱここは、手に負えない奴だという認識を広めた方が早そうな気がする。
実力を隠さないって決めたしね。
「ねえみんな、今回の黒幕が判明したらさ、思いっきり暴れてみよっか。」
そういう私に、笑うみんなの顔は思いっきり悪い笑顔だった、あはは。
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