#87 やっぱりなお約束(テンプレ)
街に戻ったばかりだし当面は、期待の眼で見つめる宿屋の女将さんに答えるために、新しいお菓子のレシピを教えることにした。
みんなも試食係に立候補しているし。いっちょ頑張ってみようかな。
そして、今回教えようと思っているのは、ズバリ餡子系のお菓子だ。そう和菓子定番のアレだ。
大福、どらやき、大判焼き・・・、そしてミリアの商会に作り方や使い方を教えた寒天を使った羊羹も。
ちょうど寒天もミリアの商会で流通に乗り始めたということで、女将さんにも手に入るようにしっかり手配してもらったよ。
相変わらずというか新作料理への凄まじい熱意の高さで、私の適当な教え方でもすぐに要点を見抜いて確実にモノにしてしまう女将さん。
もう、この街にいる限り餡子の和菓子をいつでも食べられそうだね。
ちなみに、パーティーメンバーにも餡子シリーズは好評で、特にチビっ子(年齢と体長)の食い付きは凄かった。
お口の周りを餡子まみれにして、笑顔でオハギに被りついてた。
そして以前と同じように・・・、いや以前以上に堂々と各々のドローンを連れて街を歩く私たち。
街にいた頃の私たちを知る者たちは、特に気にすることはなく気さくに声をかけてくれる。
だが、私がこの街を離れた後にこの地に来た新参者たちには、好悪様々な好奇の目を向けられているのを感じる。
とりわけ、ある種の企みを持ってこの街を訪れた者たちの怪しげな視線は特にね。
ギルマスに警告されていたある種悪意のこもった企みを持った者たちにも当然のように私の帰還が知られた。
だから、それほど時を置かずして予想通りの行動を起こし始める。
「おい、さる高貴なお方がお前たちをお呼びだ。黙って私たちについてこい。」
と、身分を翳して従わせようとする貴族。
「ほれ、お前たちが一生掛かっても拝めない大金をくれてやるから、我商会のために働け。」
と、大金を積んで囲い込もうとする大商人。
「おらぁ、痛い思いをしたくなかったら、俺たちの仲間になりな。おっとも前らに拒否権はねえからな。」
と、人目を避けて暴力で黙らせ拉致しようとする裏の組織・・・。
「大人しく言うこと聞くわけないでしょ。何でこうバカばっかり沸いてくんのよ?!」
そう吠えて、そのことごとくを拒絶し、無法を為すものは実力を行使して徹底的に排除してやった。
普通なら魅力的で豪華に見える餌で誘うも全く靡かず鼻であしらう私たちに、どいつもこいつも最後は暴力に訴えるんだけど、亜竜を相手にできるようになっている私たちでは相手が悪かったよね。
ルミーナにリーリィはもう自力でも相手を倒せるし、ミリアも上空に待機させたペネトレーで的確に迎撃してる。
一番狙われやすいラズリには鉄壁のぷちテクトと必殺のぷちセイバーのツインガードで片端から悪漢を成敗しまくってる。
フィーリアやアオを狙う輩もいたが、ある意味この子たちが一番過激だったりするんだよねぇ。
最重要な標的である私にも当然のように群がってくるわけだけど、本家テクトとセイバーがお相手して上げてるんで、何の心配もなし。
それにしてもまあ、地位と名誉でひけらかし囲い込もうとする者、大金をちらつかせ誘う者、力ずくで従わせようとする者と、もう絵に書いたような悪党揃いで笑っちゃうよね。
当然のごとく悪党どもは退治するだけなんだよ。
そんな感じで日々を過ごしながら、久しぶりにギルドで討伐依頼を受けようということになり、森に繰り出した私たち。
しっかり自分たちの成長を実感しながら、サクサクと依頼をこなしていく。
街を出て行動するということは当然人目が無いということであり、そうなると数の暴力でイケると安易に考えてしまう訳で、お約束を裏切らない律儀な悪役さんが登場。はぁーー、何てお頭が足りない連中だろうか。
私たちの行く手に身を潜ませて一斉に襲い掛かろうと息をひそめるたぶん何処かに雇われた武装集団。
だけど残念ながら、すでにサテラの索敵で位置も数も武装も全部把握済みなんだけどね。
「おおー、いっぱいいるねぇ。実力も上位ハンターぐらいはありそうだね。」
「ほんとに懲りない連中なのです。相手の実力も読めない程度では私たちに敵うわけないのです。」
マジで懲りない連中だなあと、本気のあきれ顔でうんざりと愚痴を言い合う。
「ハバネ、どうするのです?
もうこのままペネトレーで狙撃してしまえば、あっという間にお終いなのですよ。」
やる気満々のミリアに苦笑しながら答える。
「このまま攻撃したら、こっちが襲い掛かったことにされちゃうよ。
先にあっちから手を出させて、正当防衛ってことにしないと後々面倒くさいことになるから、ここは我慢して。」
「了解なのです。でもしぶしぶなのです。」
ということで、気が付かないふりで森の中を進む。
とりあえず、いつでもテクト達にシールド張れるようにさせているし、リーリィもピープで魔法の兆候に目を光らせてすぐにミリアのペネトレーで狙撃できるようにしているんだよ。
ルミーナもステルスモードのシフティを一番強そうな相手の傍に待機させて、いつでも跳んでいけるようにしてる。
ラズリやフィーリア、アオも私の脇にヤル気満々で控えている。
「やっと来やがったか。街ではいいようにやられたが、人目を気にしなくて良いとなればあん時のようにはいかないからな。
痛い思いをしたくなかったら、大人しく俺たちの組織の手下になるんだな。」
「嫌だって言ったのもう忘れたの? あんたたちってすっごく頭悪いでしょ。」
「街の中じゃなければ、こっちだって遠慮なく暴れられるんだからね。あの時より痛い思いをするのはそっちだと思うよ。」
ルミーナの言う通り、ここなら思いっきりドローンたちを暴れさせられる。
もう、必要以上に能力を隠さないって決めたし、皆にも思いっきりやってもらおう、うん。
「その態度、あとで後悔するなよ。おいお前ら、やるぞ!」
リーダーらしき男の声で、周囲に潜んでいた襲撃者がぞろぞろと姿を現す。ふむふむ把握していた通り全部21人か。
「まずは魔法と弓であのドローンとかいう飛んでるのを叩き落せ! アレが居なきゃこいつ等もただの小娘だ。」
「ミリア、ターゲット、送った。撃って!」
「了解なのです。ターゲットロックしたのです。喰らえっ!なのです!」
ペネトレーから一瞬連射!
「「「なぁーーー!!」」」、「「「ぐわぁぁーー!?」」」
杖といった魔法の発動体を破壊される魔導士たちに、利き腕を漏れなく撃ち抜かれる弓兵崩れ。
「ん、なんだとぉ?! どうなってやがる?」
間髪置かずに、身軽な斥候役の賊が飛び出し速攻をかけてきた。
「プチちゃん、おねがいっ!」
ガキンッ!!
「な、なにっ!」
ラズリの声に、ぷちテクトが素早くシールドを展開、切り込んできた短剣をはじき返すと、すぐさまぷちセイバーが切り込み賊を無力化する。
こちらに飛び掛かってきた他の賊たちも私のテクトとセイバー、フィーリアの風魔法、アオの触手攻撃で瞬殺され無力化されていく。
とりあえず襲ってきた全員を縛り上げて一か所に集めてみた。
「こんな真似してただで済むと思うなよ。俺たちはこれでも裏社会で一目置かれるデカい組織なんだからな。
もうお前らの運命も終わりなんだよ。がははは。」
「もういいよ、火の粉は自分で掃うから。リーリィ、こいつら眠らせちゃって。」
「分かった。」
私がそういうとリーリィは、眠りの魔法を発動させて賊の全員を眠らせる。
「でさぁ、ハバネ、こいつらどうすんの?」
「ドローンゲートで街に運んで、ギルドに突き出しとこう。
私たちを襲った盗賊としてギルマスが何とかしてくれるんじゃないかな。」
「でも、組織、までは、手は回らない、と思う。」
リーリィの言うとおり、このままじゃこの問題は何も解決しないんだよね。
だから、私は思いっきり手加減なしでヤラかそうと思ってる。
失敗したら、浮島にトンズラしよう、そうしよう。
「まずは、ギルマスのこいつらの組織のこと調べてもらって、親玉が分かったらさ。」
私は、首のところに手を当ててすっと横に引いて見せてウインクする。
ルミーナたちは苦笑いを浮かべ、ラズリとフィーリアは楽しそうな笑顔になった。
「ハバネは元を断つ気なのですね。大胆なのです。」
呆れ顔のミリアに私は答える。
「今後のためにも、派手めにいこう!」
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