#85 |妖精の翅《シルフィーフェザー》、再始動
一癖も二癖もある浮島の管理者たちとの出会いを経て、私たちはいつもの様にワイワイと浮島での日々と楽しく過ごしていた。
この浮島に来て最初に訪れた大賢者の館が、今は私たちの新しいマイホームとなっている。
「まるで貴族様みたいな暮らしなのです。みんな王家の使用人クラスの有能さなのです!」
掃除や洗濯など、日常の雑事はメンテナが筆頭となってメイドゴーレムたちがテキパキと熟してくれる。
メイドゴーレムと言うのは、案山子のような簡素な金属骨格に粘土のような魔導素材を纏わせて人型に整形したある種のゴーレムなんだけど、その動きは人間並みにスムーズに見える。
彼らは元からここに居たのではなく、私たちがここで生活することになったことで私たちが馴染みやすいようにと人の姿で活動できる使用人として新しく造られた者たちだ。
「うーん、今日も朝ごはんが美味しいねぇ。」
「さすが、賢者のゴーレム、仕事は完璧!」
「アタイの好みもバッチリだな。もう最高!」
優秀な使用人たちは、完全に私たちの生活スタイルを把握して完璧なフォローを熟している。
今日も彼らが作った美味しい朝食を取ると、みんなそれぞれ気に入った場所へ向かって屋敷を出てゆくのが最近の日常だ。
「今日こそは、シフティとの新しい連携技を成功させてやる!」
ルミーナは闘技場へ向かい、ウーリアと模擬戦をしたり、新たな格闘技の模索にふけったりしているようだ。
「大賢者の、魔法に関する考察、とても有意義、図書館の研究資料、まさに天国。」
リーリィもここのところ魔導研究所、正確にはそこにある図書館に入り浸っている。
ただ、ときどき新しい魔法に飢えているアテルサが乱入してくるのを鬱陶しがっているみたいだけどね。
「また新しい魔獣の赤ちゃんが生まれたの。すっごく可愛いの!」
ラズリとフィーリアはアオと一緒に魔生体研究所、通称”温室”に出掛けて行った
今温室では、保存していた魔物の再生を行っていて、早い話、色々な魔物の赤ちゃんで溢れていて、その子たちと遊ぶのが今のラズリたちの一番の楽しみなんだって。
「見たことのない魔道具に、聞いたことのない魔道具理論、もうワクワクが止まらないのですぅ!!」
ミリアはもっぱらアールケのいる錬金研究所に入り浸っている。
ミリアは魔道具のサンプルや資料を見たり、詳細をアールケに解説させているらしいが、すぐにミリアのペネトレーの話に脱線するらしい。
そして、私はテクリヤの待つ魔工研究所に向かうのは今の日課になっているんだよね。
テクリアには私の持つ科学知識(と言っても高等学校レベルだけどね)を教えながら、魔法への応用をアレコレ話し合っている。
「火が燃える原理、水が凍る仕組み、嵐の起こるメカニズム、もう大体理解はできたのかな、テクリア。」
「うむ、全体を見ていては分からぬ、元素の働きと言うことなのじゃな。仕組みを理解すれば納得なのじゃ。」
この世界の魔法は、目で見た現象をただ再現しているだけで、現象の理解は及んでいない。
まあ、魔法が当たり前にあって、原理なんて知らなくても何とかなってしまう世界なんだから仕方がないと言えばそれまでなんだよなぁ。
そして昼食の時間になるとメンテナが各施設を回って声をかけてくれるので、みんな館へ戻って一緒に美味しい昼食を頂く。
「お昼ご飯も美味しいね、ハバネお姉ちゃん!」
流石は食事を担当する大賢者謹製のシェフゴーレム、私が教えた異世界レシピを完璧にマスターして私の食生活がさらに豊かになった。
昼食後はまったりと食休みを取った後、ある者は午前中の続きにもどったり、またある者は違う場所に行くなど皆好きなことをして過ごすのがいつもの日課になっている。
午後はラズリとアオが私に付いて来ることも多いが、フィーリアは自分用のドローン”ケッタン”に乗って浮島中を飛び回っているみたいだ。
私はと言うと、テクリヤに原子分子といった科学の基礎知識を教えていたが、まあ原子や素粒子といった高度な部分は概念レベルにとどまっているけどね。
まあ、これは学者でもない私の知識の限界ってことなんだけど、今のところは元素の種類と特性を抑えたうえで、自然界で起こる化学反応を理解するところまでは理解できているようだ。
燃焼や気化熱、膨張や爆発と言った基本的な自然現象を理解したうえで、それらを応用しての魔法行使の可能性を極めんと学者魂に火がついてるのが今のテクリアだ。
そんなこんなで皆それぞれ充実した日々を楽しんでいるようだが、そろそろ地上が恋しくもなり始めているようだ。
それに関しては私も例外なくね。
ということで、今後のことをみんなで相談した結果、いったん地上に戻ることに決まった。
まあ、ドローンゲートを使えばいつでも出かけられるし、すぐに戻ってこれるからと考えていたんだけど、浮島の機能は思った以上に優秀だった。
何を隠そうこの浮島は自力移動が可能なうえ、常に私たちの位置をトレースして、つかず離れずの状態で空に待機できるらしい。
もちろん認識阻害が掛かっているので、誰かに見つかって騒がれる心配もない。
常に浮島は見えない状態で頭上に待機しているので、私のドローンゲートが使えなくても、それぞれ自分の飛行用ドローンを使えば自力で浮島へ飛んでいくことが出来るのだ。
私たち以外誰にもたどり着けない浮島と言う隠れ家を手に入れたことで、もう逃げ回る必要もなくなった。
なので一度クロスロードに戻ろうかということになったのだ。
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