#84 大賢者が目指したもの
そして最後にやってきたのが、魔工研究所という施設らしい。
ここでふと疑問が頭をよぎった。
この世界での一般的な魔道具や魔法機械は錬金術の範疇になるはず。
だとしたら、さっき立ち寄った錬金工房があるのに、なんで別に魔工研究所なんてものがあるんだろう。
そして辿り着いた研究施設の見た目は、前世の記憶にある「怪獣と戦く防衛隊基地」とか「スパーロボットを開発して運用する研究所」といったちょっと前衛的な建物だった。
ますます謎は深まるばかり、『魔工研究所』とは一体どのような場所なのだろう。
この浮島には、戦技を研究する施設、魔法を研究する施設、魔物を研究する施設、魔道具や錬金術を研究する施設は既に存在してた。
なら、魔工研究所で何を研究するつもりなのか、いくら考えてもわからないんだよなぁ。
頭に”?”マークを浮かばせながら研究所の正面玄関にたどり着くと、そこには小さな人影があった。
見た感じラズリより少し年上に見える少女の姿が・・・、それもゴスロリコスの上に白衣を着た少女がいた。
「よく来たな、待っておったのじゃ、流れ人よ。」
「のじゃ?!」
うわぁーー、最後の最後にキャラを盛りまくったのが来たましたよぉ。
「アレがココ、魔工研究所の管理者、テクリヤです。」
全く変わらない、いつものテンションでいつもの紹介をいつもの調子で済ませるメンテナさん。
「でも、なんで流れ人? 待ってたってどうゆうこと??」
分からないことだらけで混乱する私に、深く頷くとおもむろに語り始めるテクリヤ。
「我が関わる魔工術とは、かつての主が提唱したものなのじゃ。
その卓越して魔力制御で人でありながら永い寿命を得た主は、あらゆる魔導の理を極め収めていったのじゃが、その晩年に手を付けたのが魔工術と呼ぶものじゃった。」
腰に手を宛て仁王立ちの姿勢で熱弁を振るう、のじゃロリっ娘。
「そもそも『魔工』とは、おぬしたち流れ人が語っておったモノを事端とするものじゃ。
そう、魔法が存在せぬ流れ人の世界にあるという『科学技術』じゃ。」
「科学技術、確かに、ハバネの知識は、興味深い。」
すでに私から科学技術の一端に触れているリーリィがのじゃロリの言葉を肯定する。
「確かに其方の使っておった魔法は、主様が語っておったそのモノに近しいのであろうな。
流れ人の語る科学技術とは、世の理を深く理解した上で魔法や神への祈りといった超常の力による干渉を必要とせず魔法に匹敵する現象を起こすと言う。
ならば、その理への深い英知を得た上で魔法を行使すれば、どれだけのことを為せるのであろうか。
かつての主様は、それを見極めることを最期の目標としたのじゃよ。」
そして私のことを凝視するのじゃロリ・テクリヤ。いや正確には私のそばを漂うドローンをかな。
「それにじゃな、主様は生存中に魔工術を究められるとは考えておらんかったのじゃよ。」
腕を組み、思いを巡らすように目をつむるテクリヤ・・・、と次の瞬間、その可愛い顔がにぱぁーと満面の笑みに変わる。
「そこで、主様はいつかまみえるかも知れぬ魔工術の兆し、そしてその貴重なサンプルを得た時のために、主に変わり魔工を極める代行者、そしてそのための環境を整えることに心血を注いだのじゃ。
そして其方らが現れた、その紛うことなき魔工の御業を持ってな。」
そういって私のドローンを指さす。
どうやらここの大賢者様は、私とリーリィが細々とやっていた私の知識とこの世界の魔法との融合を本気で極めようとしていたようだ。
そしてその思いが乗り移っているらしいテクリヤは・・・
「さあ、見せるのじゃ。教えるのじゃ。
其方の持つ異世界の知識を! そのドローンなる魔工の賜物を!! はあはあはあ・・・・。」
美幼女の容姿に紅潮した顔で眼を血走らせた、鼻息荒く迫ってくるテクリヤが・・・、なんか恐い。
「ハバネの知識、科学、物理学は、この世界を変える、凄いモノ。
大賢者の慧眼、流石、だと思う。私も、ちょっと楽しみ。」
あれ? もしかしてリーリィさん、協力者の出現を喜んでませんっ?!
「ま、まあ・・・、私たちだけで頑張っても大した成果は出ないかもしれないし、専門家が協力してくれるなら心強いのかな。
そういう意味でも、浮島に来たのは正解だったのかも。」
そんな私たちのつぶやきを黙って聞いていたメンテナ。
「マスターハバネ、私たちこそ貴方方の来訪に心より感謝しております。
はじめてここまで訪れた者が、かつての主の願いを繋いでくださる方であったこと、そしてまた主が待ち望んでおられた異界の知識を持つお方であったこと。
この僥倖、われら一同大変うれしく思っております。」
「ルミーナとの新しい戦技の創造、考えただけでワクワクするぜ!」
脳筋格闘ヤロウなウリーア。
「リーリィさんの主に先んじた異界知識を取り込んだ魔法、その可能性に胸が高鳴りますわね。」
魔法オタクなアテルサが怪しい笑みを浮かべる。
「アオちゃんにはまだまだ秘めた何かを感じます、やはり解剖するしか・・・」
妖しい手つきで両手をワキワキさせているエルーザがなんかヤバい。
「とにもかくにもドローンです! 私にもドローンをください!!」
獲物を狙う猫のようにジリジリと私ににじり寄るアールケに危険を感じる。
「まずは基礎知識じゃ。ハバネの知る化学や物理やらを我に享受するのじゃ。さあ早う早う。」
やる気オーラを纏ったテクリヤからは逃げられそうになさそうだ。
もともとただの好奇心だけで訪れた浮島だったけど、ここは私たちにとって理想的な場所だったみたい。
そして、賑やかで、厄介そうで、頼もしい、新たな家族も増えたみたいで、今後がすごく楽しみだ。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




