#82 浮島施設巡りツアー、その4
何重にも防護体制を施された管制室から二人の対戦を息をのんで見つめる私たち。
ホールと呼べるほどの広さを持つ実験室の中央で対峙するリーリィとアテルサ。
「ドローンって言ったかしら。
それを従えているってことは、魔法の行使に必要ってことなのね。
そして、魔法媒体である杖を持っていない事にも関係があるんじゃない。」
「戦ってみれば、分かる。ハバネと、私が、考えた魔法が。」
何か話していたようだけど、その後もしばらくにらみ合いが続いている。
「どうやら、貴方は相手の出方に対応して応戦するタイプのようね。
でも、このままじゃ埒が明かないから私が先手を取らせてもらうわね。」
アテルサが杖をリーリィに向けて掲げた状態で魔力を込め始めたようだ。
さすがは賢者様の助手だけあって呪文の詠唱をしていない。
ニヤリと笑ったアテルサの杖から魔力が現象に変換された火球を形成しようと炎が出現する。
とその瞬間、リーリィ側から小さな何かが高速で生まれかけていた火球に飛び込み弾けた。
お祭り用の火薬玉が破裂したかのような小さな爆発と共に蒸気の煙が広がり霧散する。
「えっ?! 魔法が完全発動する前に相殺されたぁ?!」
多少驚愕の色を見せつつも、目の前の現象を分析するアテルサ。
「今のは貴方がやったのよね? それじゃあ、これはどうかしら?」
先ほどと同じように杖を構え、魔法を発動させる。
今度は土魔法で礫を放つ魔法のようだったが、礫が固まる前に空気の炸裂で消し飛んでしまった。
「今度はこれよ!」
杖の先に火花のような放電が生まれ集まりながら光球を生み出していくが、その周囲が濃い霧に包まれていく。
生み出された光球から激しい稲妻が放たれるが、霧の中を暴れまわり最後は爆発するように弾け飛んだ。
水蒸気の細かな水の粒子に、電気が拡散霧消したようだ。
全ての魔法が完全に発動する直前に反属性魔法のカウンターを正確にぶつけて見せたリーリィのこれまで積み重ねた努力の結果が出たね。
「貴方には相手の魔力の動きが正確に解るみたいね。
今のは、発動する魔力の属性と動きを読んで、完全に発動する前に反する属性魔法で相殺したんでしょう。
どうやらそのドローンにも秘密がありそうね。」
「ん、流石は、大賢者の助手。
ハバネが、くれた、このドローンたちの、能力。」
ピープの魔力感知能力を高めて、発動前の魔法を読むことと、AIのような学習能力で持てる属性魔法の行使を高いレベルで補助する属性ドローンを、まるで機動力を持った魔法の杖のように使うリーリィだけの魔法戦術。
確かにドローンの能力もあるけど、それを使いこなすリーリィの才能と努力があってこそなんだよなぁ。
「へぇーっ、ルミーナもドローンってのをうまく使ったけど、あれはハバネが作ったモノだったのかぁ。」
先ほどの戦いを思い出したウーリアもドローンの存在が気になるらしい。
「私からの攻撃ばかりじゃ面白くないわよね。
今度は貴方からの攻撃魔法を見てみたいわ。」
「ん、わかった。
じゃあ、ハバネと、開発した、新しい、魔法、試す。」
そして、リーリィはドローンの構成を変える。
ピープ以外のドローンは土属性の機体を残して収納すると、新たなドローンたちを召喚する。
それはぷちシリーズと呼ばれる小型ドローン10機で、リーリィがある魔法を使うために用意したものだ。
「ぷちスタンたち、フォーメーション!」
リーリィの掛け声に合わせて、ドローンがアテルサに向けて2列に整列する。
そして整列したドローンとリーリィの間に残っていた土属性ドローンが滑りこんでくる。
「弾体、生成、砲身、形成!」
ドローンの列の手前側に土魔法によって小さな礫が形作られていき、同時にドローンの列に沿うようにいくつもの光のリングが筒状の綺麗に並んだ。
光のリングがさらに輝きを増していったところで、リーリィが魔法を放つ。
ズキューーーーンーーー!!!
耳をつんざくような衝撃音が響きわたると、アテルサ後方の壁で爆発が起こった。
普通の壁など簡単に壊してしまいそうな威力だったが、事前に張り巡らせていた防御魔法はそれを完全に押さえ込んでいるようだ。
そして微動だに出来なかったアテルサに時間差で強い突風が襲い掛かり、たまらず一歩後ずさる。
魔法を放ったリーリィと私以外のそこにいる全員には、今何が起こったか理解できていないみたい。
当然、攻撃を受けたアテルサもね。
「今、何をしたの?
魔力の流れと発動までは感知できたけど、そのあと何が起きたかわからない。
一瞬で全てが終わってたわ。」
「ん、じゃあ、次行く?」
「いいえ、もう私の負けで良いわよ。
さっきもワザと外したんでしょ。
もし本気で狙われてたら、何もわからないうちにやられていたはずだしね。」
体の両側で手のひらを天に掲げて、やれやれという諦めのポーズをとるアテルサ。
そして、つかつかとリーリィににじり寄ると目が笑っていない笑顔で問い詰め始めた。
「それで今のはどういう魔法だったのかしら?
詳しく教えて欲しいのだけど。」
リーリィにしては珍しく怯えた表情で固まっている。
うん、これは助けに行ったほうが良さそうだね。
対決は終わったと判断して、私たちは管制室を出て二人の元へ向かうと。
「ちょっとぉ、ちゃんと教えなさいよ!
黙ってたら何もわからないでしょ、ねえ、ほら、早く!!」
「・・・・・・・・・・(泣)」
わーーぁ、アテルサの気迫にリーリィってば涙目で震えてるよぉ。
私はウーリアに視線を送ると、ため息一つついて呆れ顔で頷くとノシノシとアテルサに歩み寄って羽交い絞めにし、リーリィから離れていく。
「ちょっと何するのよ?!私はまだ聞きたいことがあるのよぉ!!」
「はいはーい、分かったからちょっと落ち着こうか、アテルサ。」
力が抜けたようにへたり込んでいるリーリィ。
「大丈夫? リーリィ。
あいかわらず、ああいう押しの強い相手は苦手みたいだね。
魔法の勝負に勝ったのにねぇ。」
「普通の対応なら何とかなるようになったんだけどね。
ああいう風にグイグイ来るタイプはまだダメみたい。」
そういうルミーナは、抱き着いてきたリーリィの頭を優しく撫でている。
「とは言え、超電磁誘導魔法は上手く行ったみたいだね。
ゴーレムの時は私の魔力のごり押しだったけど、うまく最適化できたみたいだ。
魔力切れは起きていない? リーリィ。」
「・・・ん、大丈夫。
威力抑えてたし、ピープで周辺魔力、集積してた。
だから、魔力、問題ない。」
「おーーい、ちょーとぉ、魔力集積ってどういうこと?
超電磁誘導魔法ってなんなのよーーぉ?
ああんもうっ、ウーリア! 離しなさいよ、もう!!」
知的な優等生に見えたアテルサの本性を垣間見つつ、魔導ラボ見学は終了を迎える。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




