#80 浮島施設巡りツアー、その2
「ところでメンテナ、闘技場ってどういう施設なの?」
今更だけど、至極基本的な疑問をメンテナにぶつけてみる。
「闘技場は戦技、剣技や格闘技といった戦闘術や状況に合わせた戦術、攻撃魔法の運用法などを総合的に研究する施設です。
各地に伝わる格闘技を収集研究したり、過去の戦争を検証し戦術を研究したり、新たに開発した魔道具の試験や最適な運用方法を模索するなど、戦闘全般を研究しておりました。」
ん、なんか最後に違和感が・・・
「おりましたぁ? なぜ過去形?」
今目の前に立派な施設があるんだけど、もう使ってないの?
「かつての主様が亡くなってからは、研究自体が行われておりませんので、今は施設の保守管理以外は主にウーリアの遊び場になっています。」
私の表情でも読んだのか、的確なコメントを返してくれるメンテナ。
「ウーリアって、メンテナの妹機の一人で闘技場の管理者だったっけ。
遊び場って・・・、いったいどういう機体なんだろ? まあ、会って見ればわかるか。」
「メンテナの、同型機、凄く、興味深い。(ふんすっ)」
「新たな高性能自動人形なのです、楽しみです、ワクワクです。(ふんすっ)」
リーリィとミリアの鼻息が荒い・・・、まあ理由は分かってるけどね。
ワイワイと騒がしい私たち一団は闘技場にたどり着く。
おおぅ、壁の大部分がツタに覆われた円形の闘技場の外観を、まさに甲子園球場だった?!
高い外壁にぐるりと周囲を囲まれた建造物はサイズ的にも野球場のようで、たぶん構造的のもそう大差はないんじゃないかと思われる外観なんだよね。
「マスターハバネ、ウーリアは今この中にいるようです。さあ皆さま、中へどうぞ。」
美人秘書の外見にたがわず、やること全てに卒がなく、てきぱきと案内を進める。
メイン通路らしき長いトンネルを抜けると、そこは周囲を壁に囲まれた正に野球場のような広場、というよりはコロッセウム、いわゆる円形闘技場ってヤツだな、これは。
「うわー、ここ広いねぇ。ここで思いっきり戦うのかぁ、なんか楽しそう。」
「おっきー! ひろーい!たかーい! なんか凄いね、ハバネお姉ちゃん!」
「・・・、ん。」
「広いだけで何にもないじゃん。何だここ? ここで何するんだぁ?」
「はーぁ、立派な闘技場なのです。ここで魔道具の試験をしたのですね。なんか滾ってくるのです。」
クロスロードにもなかった巨大建造物だし、皆もそれぞれ自分なりに楽しんでるみたいだ。
こういうのも名所旧跡巡りみたいな観光気分で悪くないかも。
なんて感じでお上りさんみたいなことを考えていたが、何かが目の端に留まった。
「ん? あれっ? あそこに誰かいるみたいだけど、いつの間に?!」
確か、さっきまで誰もいなかった闘技場の中央に、動きやすそうな服装の少女がいつの間にか立っていた。
「アレがココの管理者のウーリアです、マスターハバネ。」
「久しぶりに顔を出したかと思ったら、アレ呼ばわりかよ、メンテナ。」
「えっと、彼女も自動人形なんだよね。
でもなんで少女の姿してるの? 自動人形って普段は前のメンテナみたいな姿なんだよね。」
「そのことも含めて、闘技場についての説明をアレから聞いた方が良いと思います。」
そういうとウーリアに向かって歩き出すメンテナ。
呆気に取られていた私たちも急いで後を追う。
「やっと来たな。そしてあんたらが新しいマスターになった人間だね。
私はウーリアだ、この闘技場の管理を任されている自動人形だよ。」
そう自己紹介した新たな自動人形は、なぜか人間の少女の姿をしていた。
見た目的には、私たちとラズリのちょうど中間ぐらいの年恰好かな。
どう見ても子供体型なんだけど、この子が格闘技担当の管理者って、マジか?!
「ウーリア、あなたが戦技研究施設の管理者って聞いたんだけど、本当なの?
その女の子みたいな見た目からは、あらゆる格闘技をマスターした格闘特化型の自動人形に見えないんだけど。」
「「「「うんうん(コクコク)」。」」」」
みんなも同じ意見みたいだ。
メンテナは表情も変えず、黙ってみんなの後ろに控えている。
「ああーー、この格好のことか。これはまあ、ある種のリミッターみたいなもんだよ。
私がフルパワーなんて出したらこの施設でも持たないからね、暴れてもギり大丈夫なラインがこの身体ってこったな。あはは。」
ようは環境に合わせたってことなのかぁ、うん良かったよ、大賢者様のロリコン疑惑が発生しなくてさ。
「それで、あんたらが私たちの新しいマスターになったんだろ、なあメンテナ。
ならそれなりにできるんだろ、なら早速やろうぜ!」
そう言ってニヤリと笑うと、私たちに向かった挑発するように構えをとるウーリア。
「えっ、えっ、いきなり何事?!」
唐突なバトル展開にうろたえる私、その私の前にルミーナが立ちふさがる。
「なら私があんたの相手になるよ。研究してたったいう格闘技にも興味あるしね。(ニヤリ)」
ありゃ、なんかルミーナの闘争心に火が付いちゃったのかな。
そういえば、格闘戦が何気に好きだったっけ、ルミーナってさ。
「いいねぇ、その目つき。
それじゃあ見せてもらおうか、あんたの戦い方をさ。」
誘うような手招きで挑発するウーリアに対し、シフティを従えて双剣を構えるルミーナ。
「皆様、ここでの見物は危険ですので、安全なところまでお下がりください。」
心配して固まる私たちをメンテナが安全圏に下がらせる。
レベルも上がり増した瞬発力で弾丸のように飛び出し双剣で切りつけるルミーナの剣を、軽い動作で全てを躱すウーリがア。
「凄い! 格上のハンターでも、簡単に躱せなかった、ルミーナの 初撃を、易々と。」
ルミーナの最近の急成長を一番良く知るリーリィが驚愕の声を上げる。
「がんばれぇ! ルミーナお姉ちゃん!!」
一気呵成に攻撃を繰り出すも、軽々と躱して一撃も喰らわないのは、さすが戦技開発担当の自動人形といったところか。
「ふーん、そんな感じかぁ。うん君の力は大体わかったかな。
それじゃあ、今度はこっちから行くからね、ちゃんと受けないともの凄く痛いよぉ。」
というが早いか、ショートソードが目にもとまらぬ速さでルミーナに襲い掛かる。
「ルミーナぁ!!」
だが、その一撃は突然入れ替わったシフティの脇を掠めて空を切った。
少し離れた場所に現れたルミーナが改めて構えをとる。
「へぇー、それが君の戦い方かぁ。面白いねぇ。
で、もうこれでネタ切れ・・・、ってことは無いよね。」
直後、二人は瞬間移動により一瞬で場所を変えながら激しく剣をぶつけ合っていた。
ストロボアクションのように、パッパッと瞬時に入れ替わる二人、周辺に激しくまき散らされる火花がその戦いの激しさを物語っている。
それにしても、ウーリアも瞬間移動を? いやあれはそう見えるほど速い動きのようだ。
目にもとまらぬ高速移動でルミーナの瞬間移動に対抗しているとは、ウーリアの潜在能力の高さを垣間見た気がする。
誰の目にも力量の差は明らかで、激しかった闘いもそれから程なくして決着がついた。
激しく舞い上がる土煙の中に、膝をついたルミーナとその顎下に剣を突き付けたウーリアの二人が唐突に出現したのだ。
「君強いね。獣人とはいえその歳でそれだけ戦えるなんて正直驚いた。
それに、君の戦い方も新しいし面白い。ぜひとも研究させて欲しいぐらいだよぉ。」
負けても納得いっているのか、ルミーナもスッキリした表情で笑顔を浮かべている。
「私ももっともーっと強くなりたいんで、研究でも修行でも、バッチコイだよ!!」
「「ふふふ・・・」」
向かい合ってガッチリ腕を組み合い、不敵な笑いを浮かべている二人。なんかコワい。
あの戦いで意気投合したのかなぁ、なんか混ぜるな危険って感じがしないでもない。
その後はウーリアの案内で施設の中を見て回り、測定器やら、仮想敵用のゴーレム、闘技場な様々な環境を再現するシステムなどを色々見せてもらった。
そんな中でも様々な魔法を駆使して闘技場が岩場、森林、雪原やらに次々替わる様子は、流石大賢者の研究施設といったところか。
ルミーナがココに入り浸りそうな予感を感じながら、私たちは次の施設へ移動を始める。
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