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#75 賢者の遺産

 雲龍(クラウドドラゴン)を倒した私たちの前に現れたのは、浮島からの使者の魔導人形オートマタだった。


「あなたはあの浮島からの使者ということでいいのかな?」


「はい、あなた方は我らの主の用意した試練をクリアし訪問の資格を得ましたので、私がお迎えに上がりました。」


「うん、分かったよ。ところであなたのことはなんと呼べばいいのかな?」


「主は私のことを”メンテナ”と呼んでいました。みなさまも私のことはメンテナとお呼びください。」


「メンテナね。私はハバネ、よろしくね。」


 その後、メンテナから浮島のことを色々教えてもらった。


 賢者が浮島、メンテナが言うには『庭園』なのだそうだが、メンテナはその庭園の筆頭管理者として造られた魔導人形(オートマタ)なのだという。


 メンテナの案内で私たちはなんの問題もなく「賢者の庭園」に足を踏み入れることになった。


 そしてそこは、寂れた遺跡でも朽ちた廃墟でもなく、今でも誰かが住んでいそうな立派なお屋敷だった。


 浮島の入り口とも言える庭園正面に位置する正門前の広場、私にはまるでヘリポートのように見える場所にみんな揃って降り立った。


 スクランダーを収納した私たちは、待ってくれているメンテナに着い行き、開かれた立派な正門をくぐり敷地内へと足を踏み入れる。


「ハバネお姉ちゃん、ここってほんとにお空の上なの?」


「普通こんな高い場所だと標高の高い山と同じように空気が薄くなるはずなのです。

 なのに、ここは地上と全然変わらないのです。凄いのです!!」


「それにお伽噺になるほど昔からあったなんて信じられない。今でも誰かが普通に生活してそう。」


「たぶん、この島全体が、巨大な、魔道具、だと思う。」


 目の前に広がる信じられない光景に、みんなも一応に驚愕の表情を見せている。


 確かに見渡したその様子は、長い年月感じさせるものの放置された廃墟という雰囲気はまるでなく、行き届いた手入れが隅々まで施されているようだ。


 正門をくぐり庭園の中を進む私たちは、咲き誇り花々に情景にさらに圧倒されている。


 言葉を失う私とルミーナ、驚愕より好奇心が勝りはしゃぐラズリとフィーリアにアオ、感心するように眺め分析するリーリィとミリア。


 魔導人形(オートマタ)のメンテナに促されて庭園を進む私たちは、多少は慣れてきたがそれでもお上りさんの観光客のような有様でただただ周囲を眺めて感嘆のため息を漏らしている。


「ねえ、ハバネお姉ちゃん、あそこになんか変のがいるよ。もしかして魔物かな?!」


「なんだなんだ? なんか岩みたいなのが人みたいに動いてるぞ!」


 ラズリとフィーリアが見つけたものを私も観察してみた。


 それは一体だけではなく、庭園のあちらこちらに魔導人形かゴーレムらしき異形が作業している姿が見えた。


 多分、彼らも忘れられた賢者とやらが造った者たちなのだろうね。


 案内するメンテナにここにきてからずっと気になっていたことを尋ねてみた。


「ここを創った賢者さんって、まだ生きてるの?」


 そう、浮島の伝承は軽く数百年前から語り継がれているはずなんだけど、このお屋敷や庭園は今でもまだ生き生きとしていてそれがすごく不思議なのだ。


 だから、賢者とは不老不死か、長命な種族かもと思って聞いてみたのである。


「いいえ、ここの主で創造主である賢者様ははるか昔にお亡くなりになっております。

 今はその時のご指示を守り続けているだけです。」


 やはり、ここを創った賢者と言われる人はすでに死んでしまっているようだ。


「やっぱり、そうだったのですね。

 では、私たちは今どこに向かっているんですか?」


「はい、我らが主様はいつかここを訪れるであろうお客様に向けてメッセージを残されました。

 そのメッセージを聞いていただく場所へご案内しているところでございます。」


 メンテナはそう言うと、私たちを庭園の先にたたずむ立派なお屋敷へと招き入れた。


 館の中も、綺麗に保たれているようでどこもかしこも磨き上げられたように輝いている。


 流れた年月を考えてもちょっとありえないと思うから、たぶん状態保存とかの魔法がかかっているのかも知れない。


 島を浮かせているだけでもとんでもないことだけど、ここを創った賢者さんは色々常識を外れたとんでもない魔術師だったようだ。


 そうして案内されてたどり着いたのは、祭壇のような佇まいのホールだった。


 ホールの中央に小さな台座があり、その上にキレイに磨き上げられた美しい水晶の珠が鎮座している。


 メンテナは私のそばにやってきて、丁寧な仕草で私に語りかけてくる。


「お客様、こちらにいらしてこの珠に手を触れてくださいませ。」


 私は、少し考え込んでからリーリィに視線を送ると、コクリと小さくうなずくような仕草を見せた。


 罠や危険なことはないだろうか警戒していたのだが、リーリィには危険な魔力や気配は感じられなかったのだろう。


 私の危惧を読み取ったうえで、大丈夫と言いたいのだろうと思う。


 確かに私にも危険な雰囲気は感じられないと言うか、逆に安らぎや安心感を感じているぐらいだしねぇ。


 大丈夫だろうと判断した私は促されるまま、水晶の珠に手を触れてみる。


 僅かな魔力の動きを感じたが、吸い取られているような感覚はない。


 推測だけど、魔力を通して何かを読み取ると言うか、分析している感じかな。


 危険はなさそうだとしばらくそのままにしていると、水晶の珠が淡い柔らかな光を放ち始めた。

読んでいただきありがとうございます。


これからも応援してもらえるとありがたいです。

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