#74 忘れられし賢者の館
「さて、アレの再現するわけだから創るとしたらスタンと同じ雷魔法を付与したやつだよね。
でも、数が欲しいから、ぷちタイプが良いかな。」
雲龍に対抗する手段を思いついた私は、そのためのドローン、「ぷちスタン」の量産を始める。
一度でも創ったことのあるドローンなら、イメージの再構築もスムーズで量産も問題はない。
私の周囲に次々と出現する小さなドローンたち。
「よし! これでいいかな。」
そして12機のドローンが私の周囲を取り囲んでいた。
「みんなぁ! 目一杯の一撃を同時に喰らわせたら、そのまま安全圏に退避して!」
反撃の準備が整った私はみんなに大声で指示を飛ばす。
「うん、分かった、ハバネ。」
「ハバネ、了解だよ!」
「分かったのです。」
「おう、一発で決めろよ!」
「じゃあ、お姉ちゃんたち、せいの!でいくっよぉ!」
ラズリの掛け声で皆が構える。
「「「「せーえぇーのぉ!!」」」」
ルミーナたちの一斉攻撃が雲龍に殺到し、大爆発が起こる。
爆風が収まったそこには、身体のあちこちがほどけ、モヤのようになって削られた雲龍が佇んでいた。
これまでのように、動きを止めると周囲のモヤや雲を集めて身体の再生を始める雲龍。
この瞬間を待っていた私は、ぷちスタンたちを雲龍に向けて放つ。
勢い良く飛び出したぷちスタンたちは雲龍を中心にして20の正三角形で構成された正20面体の12の頂点となる位置に収まった。
その状態のまま、不審な動きを見せるドローンを警戒するように様子を見ている雲龍の身体に異変が現れる。
そう、所定のポジションに収まったぷちスタンたちは雲龍の中心に集束するよう電磁波を放っていたのだ。
「ハバネお姉ちゃん、あの龍さんから煙が出てきたよ!」
ラズリが言うように雲龍の身体のあちこちからから勢いよく水蒸気が噴き出し始めていた。
そう、私が思いついた手段とは、まさに電子レンジを再現することだったのだ。
周囲のぷちスタンから電磁波であるマイクロ波が照射されたことで、雲龍を構成する水、すなわち水分子を振動加速させて熱を生み出したということなんだよね。
これがしたかったから、電気を操れるスタン系のドローンを造ったわけ。
高熱を発して蒸発していく雲龍は藻掻きながらドローンを振り払おうと激しく飛び回るが、私のドローンは標的を中心に据えてその精密なフォメーションを維持し続けた。
そうやって藻掻きながらも、水系である冷却の魔法でなんとか自身の熱を収めようとしているようだったが、自身の媒体である水分自体が熱を発しているためうまく対処しきれてはいない。
とうとう余力が無くなったのか、暴れまわることもなくなりその身体から水蒸気を吹き出し続けていく。
「ハバネお姉ちゃん、龍さんどんどん小さくなってくよぉ。」
ラズリの言うように、ドローン包囲陣の中でみるみるその姿が縮んでいき、ついには透けるようにその姿が消えてしまった。
目の前にあるドローンの球形陣の中には、制御するべき媒体をすべて失った2つの宝玉だけが浮かんでいた。
「あとはあのコアを潰すだけ!
ルミーナ、ミリア、やっちゃって!!」
ルミーナとミリアに声をかけ、ぷちスタンたちを散開させる。
「おっけー、まっかせて!」
「はーい、分かったのです!」
次の瞬間、青い宝玉に急接近したシフティと一瞬で入れ替わったルミーナが渾身の一撃を加えようとした同その瞬間、ミリアのペネトレーが白い宝玉を狙い撃つべくレーザーを放ち、2つの宝珠はほぼ同時に粉砕される。
これで雲龍を確実に倒したはずだが、念のためにと周囲をくまなく探知するが、特に脅威となるモノは何も見当たらなかった。
「よし、とりあえずの脅威はないみたいだから、浮島に向かおっか。
あっ、でも警戒は怠らないでね、まだ何かあるかも知れないから、慎重にね。」
そして私たちは再びラズリを守りるような隊形をとって浮島への接近を再開する。
接近することでどんどん近づいてくる浮島、肉眼でその細部がよく見えるようになってきた。
浮島中央に広がる庭園を管理するように作業する人型の何か。
ドローンのように浮遊しながら、浮島を巡回する飛行体。
建物や街灯に張り付いて修理か何かしている物体も見えるが、そのどれもが生命感を感じさせない、なんというか機械のように見えるんだよね。
自分の目やサテラを通して見てるけど、どうやら浮島には生きて動いているモノ、人間や動物のたぐいは全く見当たらなかった。
何が起こるかわからないので警戒しつつ浮島へ向かっていた私たちだったが・・・
「ハバネ、何か、近づいてくる!
魔力に、大きな動き、無い、敵意はないかも、たぶん。」
魔力の動きを探っていたリーリィが何かを感知したらしい。
リーリィが感知で捉えた何かを私たちも目視で確認すると、背中に羽の生えた人間のように見える物体がゆっくりとこちらに向かってきた。
どんどんこちらに近づいて来るが、攻撃の気配は感じられない。
そのまま私たちの眼前にたどり着いたその相手を見た私は「羽根の生えたデッサン人形・・・」と呟いていた。
そうなのだ、目の前にいたのは顔を含め凹凸の殆ど無い四肢を持つ背中に羽の生えた球体関節人形そのものだったのだ。
「試練を超えし来訪者様がた。
忘れされし賢者の館へ、ようこそ。」
美しい仕草で深々とお辞儀をした球体関節人形が、私たちにそう告げた。
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