#72 浮島へ、テイクオフ!
青空に薄っすらと見えた物体は、徐々にその姿をはっきりとさせていく。
そしてサテラとピープの探査にもはっきりと捉えられていた。
特にピープには、あの物体が放つ魔法特性がはっきりと認識されたようだ。
リーリィいわく、
「完全に、捕まえた。
隠蔽魔法も、もう、無意味!」
私のサテラも、遠距離からではあるけどその物体の全容を捉えていて、その浮島の外観のイメージがはっきりと見ることができていた。
「ハバネ、あれって間違いないよね?」
「うん、サテラを通してはっきり見えたよ。
間違いなく、あれが浮島だよ。」
「謎の浮島、そこには何が待っているのか、もう私の好奇心はマックスなのです。」
「よっしゃー! じゃあ、さっさと乗り込もうぜ!!」
「ファーリアも、みんなも落ち着いて!
お爺ちゃんも言ってたように、簡単にはたどり着けないからね。
安全第一、ヤバいと思ったらすぐに撤退だからね。」
目的地をはっきり捉えた私たちは、装着したスクランダーを起動して一斉に空へ舞い上がった。
目指すは、空に浮かぶ謎の浮島だ!
-----------------------
今私たちの目の前には、ちょっとしたテーマパークほどの広さを持つ大地が浮かんでいる。
それは、大きな池をたたえる庭園、石壁に囲われた闘技場、大きな温室のような施設、そしてそれらを見晴らせる丘の上に屋敷のある、遠目には大富豪の大邸宅か、とある有名テーマパークのように見えた。
「完全に人工の施設で間違いないのです。 あの浮島自体が巨大な魔道具なのです、ワクワクするのです。」
私たちは、浮島の周囲に張られた魔法無効化シールド間近まで迫り、浮島を観察していた。
「浮島の周囲、間違いなく、魔法無効化シールド。
それが、十数の、多重展開してる、まるで玉ねぎ。」
「なるほどね。 無効化フィールドと思われてた理由はそれだったんだ。
シールド越えれば使えるはずの魔法が侵入しても使えないわけだよね。
これじゃ浮遊系魔法で近づけないよね。」
「ねえハバネ、なんで魔法が無効化されてるのに、リーリィにシールドのことが分かるの?」
ルミーナの疑問にどう説明したらわかりやすいか、少し悩んで問いに答える。
「シールドは魔法の行使を妨害してるんだよね。
でも、リーリィのピープがやってる魔力探査は魔力の動きを見てるんだよ。
つまり、魔力が見える魔法はリーリィやピープに対してかけられているのであって、シールドに対して魔法は使ってないんだよ。」
「わかりやすく言うと、ファイヤーボールのような魔法は無効化フィールドで消されてしまうのですが、魔法で肉体強化して投げた槍は、なんの影響も受けずにフィールドを貫通できるということなのです。」
「ハバネお姉ちゃん、なら凄い力持ちの人に投げてもらえば浮島に行けるの?」
「行けるかもしれないけど、そんな凄い力がかかったら投げられた人はタダじゃ済まないだろうね。
多分、浮島に辿り着く前にペチャンコになっちゃうかも。
それに、お爺ちゃんたちがもう一歩というところで失敗したみたいに、シールド越えてもまだまだ障害が用意されてるみたいだしね。」
「まあ、ハバネのドローンなら魔法が無効化された領域も大丈夫なんだろ、ならあとはアタイたちが罠をぶっ飛ばすだけじゃん、楽勝楽勝♪」
そうなんだよね、私のドローンってちょっとイレギュラーな存在みたいで、魔力を使ってはいるんだけど、リーリィいわく、飛行時、正確にはプロペラの動力にはよく分からない力に変換されたモノで動いているらしい。
だから付与した能力は無効化されるけど、飛行そのものは影響を受けないということみたい。
「みんな、シールド抜けても油断しないようにね。
それじゃあ、いっちょ浮島に乗り込みますか。」
「「「「「おっけー!!」」」」」
ラズリを囲むように編隊を組んで、私たちは浮島へと飛翔する。
気圧差で起こる耳鳴りのようななんとも言えない違和感を、無効化シールドを超えるたびに感じる。
十回以上の違和感を味わったあたりで、違和感を全く感じなくなった。
どうやらリーリィが玉ねぎと称した無効化の領域を越えたみたい。
「みんな、突風に気をつけて!
練習通りにすれば大丈夫だから!!」
浮島に挑んだお爺ちゃんたちは、魔法が使えるところまで近づいたけど、そこで強風に吹き飛ばされたと言っていた。
それが侵入を阻止する仕掛けあれば、当然私たちにも同じことが起こるはずだ。
私が注意するように声をかけた次の瞬間、突然の突風が私たちに襲いかかってきた。
地面の上にいてしっかり踏ん張っていても軽々と吹き飛ばされてしまうだろう強力な突風だ。
だが私たちは、そんな強風の中でも押し飛ばされることなくその場に踏みとどまっている。
実は、こうなることを予想してしっかりと予行練習をしてきたんだよね。
風魔法が得意なフィーリアが生み出すシャレにならない強風に何度も引き飛ばされながら、それに耐える特訓をしてきた、だからこの程度の突風じゃビクともしないというわけ。
強風に耐ながら前進すること十数分、それまで吹き荒れていた風がピタリと止んだ。
浮島との距離が更に縮まり、その外観がよりはっきり見えるようになってきた。
「ここまでは、お爺ちゃんの情報通りだったけど、この先は全くの未知の領域、みんな十分に注意してね。」
次があるとしてら更に難関だろうことは想像に難くない。
「ハバネ!? 強力な魔力の反応、近づいてきた!」
リーリィの警告にみんなが身構える。
私のサテラでもその魔力反応は捉えていたので、その反応の方向を凝視する。
そして目の前には、真っ白な龍、そう飛竜と呼ばれるドラゴンではなく、手足の生えた巨大な蛇のような姿の東洋の龍そのものだった。
私たちの目の前に立ちふさがり、私たちを舐めるように一瞥すると威嚇するように魔力の波動を放つ。
そして龍の周囲に矢じりのように鋭い氷塊がいくつも生み出されると、一斉にこちらへ撃ち出された。
私とラズリはテクトのシールドで氷塊を防ぎ、ミリアはペネトレーのレーザーで自分に向かってくる氷塊を撃ち落とす。
フィーリアは素早い動きで舞うように軽々と氷塊を躱していく。
リーリィはファイヤーウォール、炎の壁で向かってくる氷塊をすべて蒸発させ、ルミーナは素早い機動と双剣の斬撃で次々と迫る氷塊を砕いていった。
氷塊の攻撃をすべて防ぎきったところでこちらも反撃に出る。
まずは、ミリアのペネトレーでのレーザー攻撃と私のセーバーによる斬撃を喰らわせてみることにしよう。
宙に浮く白き龍めがけて、ペネトレーから数十発の光跡がその身体を射抜くと、私のセイバーが高速で切り裂く。
だが、私は攻撃の際に違和感を感じた、そうまるで手応えがなかったのだ。
そして白き龍が受けた傷痕が、煙のようにモヤモヤと揺らいだかと思うと、次の瞬間には何事もなかったかのように元通りに戻っていた。
まるで焚き火から立ち上る煙を棒で薙いだかのように、なんの手応えもなくダメージもなく元に戻ってしまうのだ。
その戦いの様子を静かに観察していたリーリィが何か気がついたようだ。
「その龍は、魔法で造られた、一種のゴーレム。
水と、風の、魔法でできた、雲の白龍!」
「なるほどね。道理で手応えがないはず。
さて、どうしたらいいのかなぁ。」
正体が分かっても、今の所対応策が見つからない。
そうしている間にも、鋭い氷塊や、カマイタチのような真空の刃、蛇のような竜巻といった攻撃を次々繰り出してきており、こちらは防戦一方の状態だ。
「ハバネ、もう少し頑張って!
あの龍には、あの姿をかたちどる、そのためのコア、があるはず。
今、それを探してる。見つけるまで、頑張って!」
よし、作戦は決まった!
とりあえず、今はリーリィが突破口を見つけるまで、私たちでリーリィを守るだけ。
コアが見つかった時、私たちの反撃開始だ!
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




