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#70 浮島を見た男


「このような老体の住まいに、いかようなご要件でいらしたのかのぉ。」


「宿屋の女将さんにお聞きしました。

 かつてあなたは浮島を目指していた冒険者パーティの一員だったと。

 是非とも私たちにその時の話をお聞かせいただきたいのです。」


 私は、自身の好奇心を満たしたい欲望もあったが、何よりお年寄りの体験談を聞くのが好きなのだ。


 前世の私は極度のお爺ちゃん子、お婆ちゃん子だった。


 ドローン好きも元々お爺ちゃんの影響だったしね。


「そうかそうか、ふむふむ、いいじゃろう。

 うちに入りなされ、歓迎しようかのぉ。」


「ありがとうございます。

 クロスロードのハンター、ハバネって言います。

 それでは、お邪魔します。」


「ルミーナです。

 お、お邪魔しますね。」


「リーリィ、歓迎、感謝します。」


「ラズリっていうの、おじゃましまぁーすぅ!」


「フィーリアだぜ、よろしくな。」 


 案内された客間は、物は多くないがスッキリと整理されて居心地が良さそうだった。


 奥から持ってきた人数分の簡素な腰掛けに私たちを座らせると、すぐにお茶を出してくれた。


 爽やかな喉越しのハーブティーを飲み一息入れたところで、老人が話を始めた。


「お嬢さんたちは浮島の話を聞きたいそうじゃのぉ。

 その若さで、浮島に挑戦するつもりなのかい?」


「やっぱり、浮島は実在するんですね!!

 これまで集めた話では、可能性は半々ぐらいだと思っていました。

 あ、あの、お爺さんは本当に浮島を見たのでしょうか?!」


 このお爺さんは浮島のことを知っている、私はそう確信した。

 

 前世でどれだけ爺ちゃんの昔話に付き合ったことか。


 こういう空気読むのは結構慣れていたりするんだよね。


「浮島は確かにある。

 若き日に仲間とともに目指した、そして確かにその姿を眼に焼き付けたのじゃよ。

 ええじゃろう、ひとつジジィの昔話を聞かせてしんぜようかのぉ、ほっほほ。」


 そうやって楽しそうに笑うと、思い出すように昔話を語り始めた。


 ーーーこのなんの取り柄もないありふれたこの村でワシは生まれた。


 そしてごく普通に成長して、ごく普通に冒険に憧れた。


 そして15歳になり成人すると、冒険者を目指し大きな街へと旅立った。


 冒険者としてギルドの登録したとき、魔法の才があるとわかり魔法使いとして腕を磨いていった。


 気心の知れた仲間を得て、パーティとしての名を挙げていく中、酒の席で故郷に伝わる昔話を披露すると、興味を持った仲間の一言でその伝説『浮島』を目指すことになった。


 村には浮島を見たという逸話がいくつも残っていて、少年時代に興味を持ったワシも自分なりに調べてそれなりの推測を立てていたりしていたのだ。


 その上で、各地に伝わる浮島の伝説も調べ上げたうえで、浮島へ挑むこととなった。


 推測が的中したのか、はたまたただの偶然だったのか、我らは運良く浮島への接触に成功した。


 そして当然、これまで誰一人としてその地に足を踏み入れたものがいないことも把握している。


 集めた情報から察するに、浮島は魔法を無効化するフィールドで囲まれており、魔法に頼らないでたどり着く方法は見いだせないのだろうと思われる。


 だが、ワシはそのフィールドを超える方法をひとつ思いついておった。


 空を飛ぶいくつかの方法とその失敗を伝える伝承から、魔法無効のフィールドは浮島を中心とした球形をしていると考えられた。


 だから一定の距離を取って離れていれば、浮島の真上に行くことができるはずだということだ。


 そして、ここまで来れたら取る手段は唯一つ、魔法に頼らずただ落ちること、つまり自由落下である。


 あとは着地を魔道具なりでなんとかすれば、浮島ヘたどり着ける・・・はずだった。


 まあ魔道具と言っても、無効化フィールド内では魔石でゴリ押ししても一瞬しか使えないと思われるが。


 周到に準備を整えて、そして浮島へ挑戦したのだったが、結局我らは浮島へはたどり着くことができなかった。


 そう、浮島への侵入を阻む罠は、魔法無効化だけではなかったのだ。


 自由落下の中、肉眼で浮島の全容が見える距離まで近づいたその時、我らに突然強風が襲いかかってきたのだ。


 あっという間に吹き飛ばされ、浮島への落下コースを大きく外されてしまった時には、もうすでに立て直しはできない状態だった。


 かくして、我らの浮島への挑戦はあっけなく失敗に終わってしまった・・・。


 ーーー


「ただ、飛ばされ浮島から遠ざかっていたあのとき、ワシはあることに気がついたのじゃ。」


 突然の強風を食らった瞬間、無意識に放った防御魔法が確かに発動した。


 なんの助けにもならなかった防御魔法だったが、その意味は大きい。


「つまり、浮島に近づければ魔法は使えると分かったのじゃよ。」


「それって、無効化フィールドではなく、無効化シールドで包まれているってことなのかなぁ。

 でもそれが分かったなら、なぜ再挑戦しなかったんですか?」


 魔法無効化シールドを越えれば魔法が使える、それは浮島へ挑む上での有効なアドバンテージになるはず。


 なら再挑戦の難易度も多少下がるはずなのに、老人は二度と浮島へは挑まなかったという。


「それだけの周到な罠が1つや2つのはずはなかろうと考えて、再戦は更にレベルを上げてということにしていたんだがのぉ、冒険の日々の中でその思いは徐々に薄れてしまったのですじゃよ。

 いつの日にかと、浮島の情報を秘匿していたため、今話したことは誰にも知られていないはずじゃ。」


「いいのですか?

 そんなに簡単に教えてもらっちゃっても。」


 ルミーナが素直に疑問を口にする。


「ほっほっほ、構わんよ。

 話す機会がなかっただけで、とくだん秘密にしていたわけじゃないからのぉ。

 それに、ワシに話を聞いたとて難易度が下がったわけではないですじゃ。

 挑むなら細心の注意をすることですな。」


 あれから数十年、浮島のことでの訪問者は私たちが初めてだったのだそうだ。


 そして、老人は最後に告げた言葉は・・・


「いまだ謎に包まれてはおるが、あそこはたしかに人の手で造らてたものだった。」


 引き飛ばされる一瞬、見事な庭園と立派な館が見えたそうだ。


 そして自分たちが果たせなかった挑戦を、見事成し遂げてほしいとも頼まれた。


 貴重な情報を得られたことに感謝を述べて老人宅をあとにする。

 

 宿に戻った私たちは作戦会議を開ことにした。



読んでいただきありがとうございます。


これからも応援してもらえるとありがたいです。

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