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#66 科学と魔法と・・・


 目の前に広がる魔法陣から身長3メートルの人型の巨人が現れた。


 その全身が燃え上がっている、というよりは炎そのものが人型をしていると表現したほうが正しいかも。


 その召喚された炎の精霊は顕現した瞬間から手足を振り回し周囲にあるものを破壊し始める。


 まさに荒れ狂う大火災が人型をしているようなものだ。


 そんな人の意思など無視するような狂える精霊が現れたのだ。


 その間近にいた召喚者などあっと云う間に燃やし尽くされてしまったのは、言うまでもないことだろう。


 しかしこのままにしておけば、このあたりはあっという間に火の海になる。


 最初、ルミーナたちも倒そうと頑張ってみたんだけど、燃焼という自然現象でしか無い精霊には、斬撃やレーザーなどの物理攻撃は全く効かなかった。


 リーリィとフィーリアも水系や冷気などの魔法で抑え込もうとしたけど、まさに焼け石に水だった。


 有効な手段が見つからず、私とリーリィ、フィーリアでシールドや属性障壁、風壁などの魔法を使って必死で延焼を防いで時間を稼ぎ、その間にルミーナやラズリたちには付近に転がる倒した人攫い達を安全圏に運んでもらった。


 仲間の暴挙で死ぬんだから自業自得とも言えるんだけど、目の前で焼け死ぬのを放置するのも後味悪いもんねぇ。


 かろうじて被害を防いでいるうちに、人攫い達を離れた空き倉庫に放り込んできたルミーナたちが戻ってくる。


 私はどう対応すべきか思案を巡らせていると、リーリィから念話で声がかかる。


「ハバネ、ちょっと考えがある。

 だけど、ここじゃ無理。

 ゲートで、戦いやすい場所、移動できる?」


「えーと、街の外にある広めの河原なら、水辺だし炎にも対処しやすいかも。

 クロノたちのゲート使えば、多分行けると思うよ。」


「ならお願い。

 移動したら、壁で精霊を囲って!

 燃えない空気、試したい。」


「あー、なるほどね、うんわかったよ。

 ルミーナぁ!! 今からこの精霊をゲートで飛ばすから、先回りして抑えててくれない?

 送る場所は、ここ。」


 ルミーナに念話で場所のイメージを伝える。


「りょーかーい!

 今、シフティを最速で飛ばしたから。

 1分後には向こうへ飛ぶ準備できると思うよ。」


「それじゃあ、クロノたち呼び出してアイツを飛ばすからね。

 みんなよろしくぅ!」


 みんなの動きに合わせて、私もクロノたちを呼び出しゲートのフォメーションを組ませる。


 狂える炎の精霊の上空で正方形に並んだクロノたちの中央に異空間の窓が開く。


「ルミーナ、跳んでぇ!

 すぐにコイツもそっちに跳ばすから!!」

 

 言うが早いか、ルミーナの姿は一瞬でシフティと入れ替わり、すぐにシフティもその場から消えた。


 ルミーナがドローン収納で回収したのだろう。


 私もゲートのフォーメーションのままクロノたちを急降下させると、そのまま精霊はゲートの中に消えていった。


 クロノたちに目の前へ新たなゲートを開かせるとみんなでゲートを潜りルミーナの元へ。


 とその前に、ティアを呼び出し周囲へゲリラ豪雨のような散水を行い、再出火しないよう燻る残り火を消しておくことも忘れない。


 ゲートを潜ると目の前で相手の注意を引きながら攻撃を交わしているルミーナがいた。


 リーリィと周囲を見回し、作戦に対しての問題がないことを確認する。


「ハバネ、やって!」


 リーリィの合図で、呼び出したクレイに土魔法を発動させると、精霊の周囲に勢いよく土壁が盛り上がり始める。


 それなりの厚さと頑丈さを持たせているので、炎の攻撃程度では簡単に壊せない。


 みるみる精霊の身長を超える高さまで伸びた土壁。


 すぐさまが土壁の上に登ったルミーナとその近くを飛ぶフィーリアが、土壁から飛び出ようとする精霊を抑え込む。


 リーリィは、精霊を閉じ込めた土壁の上空にピープを滞空させると、オリジナル魔法の詠唱を始めた。


 リーリィの考えた作戦というのは、燃えない空気を精霊の周囲を満たして精霊の起こす燃焼という現象を消し去ろうというものだ。


 ちなみに燃えない空気とは二酸化炭素のことだ。


 リーリィに科学現象を教えた際に私は、酸素や水素などという名称は通じないと思い、燃える空気(酸素)、燃えない空気(二酸化炭素)、激しく燃える空気(水素)などと言った言い回しを使っていたのだ。


 そして、これまでのリーリィとの議論で魔法に関しても前世の科学や物理の法則が大きく影響するだろうこともわかってきた。


 魔法は、無から有を生み出すことも不可能ではないほど万能ではあるが、それにはそれ相当の魔力が必要となる。


 早い話、通常ではありえない現象ほど多くの魔力が必要となり、普通の魔導師が扱える魔力量でそれを行うには全く足らないのが現実でもあった。


 逆に、世界の理に従った現象であればそこそこの魔力で発現させられ、それらが一般的に魔法と呼ばれるものなのである。


 そういった背景もあり、科学的な知識を知ったリーリィはこの世界の常識を超えたかなり大掛かりな魔法を使えるようになっていたりする。


 -閑話休題


 今回リーリィが考えた作戦は、最初に教えたコップのロウソクの火が消える現象をこの場で再現しようというものだった。


 この作戦では、土魔法を扱えるドローン”クレイ”を使って炎の精霊を頑丈で気密性の高い土壁で囲い閉じ込めるのが私の役割となる。


 そして、大きなコップを模した土壁の空間に閉じめこた炎精霊に向かって、リーリィがピープを通して強化された魔法を発動させるのである。


 炎の精霊の上空に滞空するピープの周囲に緩やかな風の流れが起こる。


 リーリィの魔法によって抽出された大量の燃えない空気(二酸化炭素)はその重さで、精霊を囲む巨大なコップの中に注ぎ込まれていく。


 底から溜まっていく燃えない空気に燃える空気(酸素)が追い出されて、炎を維持できなくなっていく炎の精霊は自分に何が出起きているか理解できない。


 必死で炎を保とうとするも、炎を生み出しているのではなくただ制御しているだけの存在には科学の摂理を覆すことは不可能だ。


 炎を維持できなくなった精霊は、消えた炎とともにその存在そのものを霧散させて消えてしまう。


 ピープの魔力感知で精霊の消失を確認したリーリィが私の方を向き静かに手のひらを上に差し出してくる。


 それに答えるように私は勢いよく自分の手のひらでハイタッチして、お互いの健闘を称え合った。


「おつかれ、ハバネ。」


「お疲れ様、リーリィ。」


 焦げた土壁を崩して元に戻した私たちは、再びドローンゲートを開いて元の倉庫街の広場にも戻る。


「それで、ぶっ飛ばした人攫い達はどうするの? ハバネ。」


「ねえ、ミリア、衛兵に引き渡せば良いんだよね?」


「はい、それで良いのです。

 後は私がうまく話をつけておくので、任せてなのです。」


 空き倉庫でノビている人攫い達を改めて拘束すると街の衛兵に連絡し引き渡す。


 この件のことは、この街のハンターギルドに連絡されたのち、私たちには何らかの報奨が出ることになるらしい。


 まあ、全員怪我もなくラズリも無事で、事件も一件落着かな。


 ということで今日の晩ごはんは、豪勢に焼肉パーティにしようと思う。


 密かに研究していた焼肉のタレモドキもなんとか満足できるレベルになってきたことだし、お披露目を兼ねて久しぶりというか異世界で初めての焼き肉を楽しむとしますか。


 戻る途中で市場に寄って買い集めたちょっと贅沢なお肉や野菜で行った焼肉パーティは大好評で、またやりたいと催促までされてしまった。


 そして、焼肉のタレでまたしてもミリアの商人(あきんど)スイッチを入れてしまったらしく、ミリアと商会の料理人たちに追い回される羽目になってしまった。


 自分の学習能力のなさが恨めしい・・・・


読んでいただきありがとうございます。


これからも応援してもらえるとありがたいです

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