#64 観光プランを立てよう
静かな展示室にオルゴールの音色だけが響いている。
ハバネの置いたその小さなを凝視したまま固まるミリア。
ルミーナも不思議そうに見つめているが、その目には好奇の色が浮かんでいる。
その横でリーリィは真剣な顔でその全く魔力は発しない機械が動く様を観察する
広い部屋の中で静かに響く美しい旋律にアオを抱いたラズリは大興奮で、フィーリアは音楽に合わせて飛びながら踊っていた。
そして不意にスイッチは入ったかのように、ミリアが再始動した。
「これは魔道具じゃないのですよね? 魔力が全く感じられませんから。
でも、じゃあなんで動いてるのですか?!
ああっ、この金属板はもしかして打琴なのですか?
うんうん、曲を奏でる仕組みはなんとなく分かりますが・・・、
なんで魔力も使わずに動いてるのですか?
意味分からないのですぅ!!!」
機関銃のようなミリアの質問攻めに、圧倒される私。
この世界では音楽は王家や貴族など上流社会のもので、庶民は吟遊詩人かお祭りの出し物ぐらいしか音楽に接することはないという。
「ミリア、この機械は私の元居た世界ではオルゴールと呼ばれていたものだよ。
動力はね、この鋼の板の反発力・・・、うん、元に戻ろうとする性質を利用したもので、ここにあるカタツムリみたいに巻き込んだ鋼がまっすぐの板に戻ろうとする力を使って動いているんだよ。
あまり大きな力は出せないけど、こういうオルゴールみたいな小さな機械を動かすのにはちょうど良い感じかな。
もっと複雑なものだと、時計を動かす動力にも使えるかな。」
「凄いのですぅ!
これならすぐに量産も可能なのです。
そうすれば、一般の庶民にも気軽に音楽を楽しめるようになるのです!
画期的なのです。大発明なのです!!」
ミリアは、早速商会の総力を上げて、このオルゴールを改良して世に売り出すつもりらしい。
オルゴオールを一番気に入っている様子のラズリやフィーリアがミリアの言葉に喰い付いておねだりしまくった結果、量産レベルの試作品が完成したら真っ先に回してもらえることになってはしゃいでいる。
この後、オルゴール以外にも色々見て回った結果、いくつかの気になる道具が出てきたが説明が面倒だったり難しかったりするものばかりだったので、それらについては私が暇を見つけて職人が理解できるレベルの試作品を作ってみるということになり、そのための資料としてしばらくそれらの遺物を預かることになった。
道具以外では、利用方法がわからず活用されていなかった食材、香辛料やハーブを見つけたので知っている範囲のそれらの使用方法を商会の人に教えることに。
ほとんどが種の状態で、それが入っている容器に名前が書いてるだけだったんだよね。
その中から栽培方法がわかりそうなものに関しては、分かる範囲でレポートにまとめて渡そうと思う、
まあ、これらが一般に普及してくれれば、私も利用しやすくなるしね。
そんな中でも、お米に関することについては積極的に動くつもりだ。
だって、お米は日本人の魂といえるものだからね。
実際のところ、米や餅米の活用法もほとんど失われていたので、これに関しては自分の欲求を最優先にして調理方法を積極的に伝えるつもりである。
それとは別に、かろうじて製法が残っている味噌や醤油とは違って日本酒の製法は失われてしまったようで、その製法はぜひとも教えてほしいとかなりの強行に迫られたんだよね。
それこそ、うんと言わないと帰してくれないぐらいの圧力で、ちょっと怖かったよぉ。
まあ、どぶろく程度なら作った経験があったりするんだけど、清酒に関しては知識だけなんだよねえ。
前世でいろいろ爺ちゃん婆ちゃんに仕込まれた経験がこんな形で役立つとは思ってもいなかったけどね。
全く、どこの世界でも酒好きってヤツはもう・・・・・
他にもたくさん気になるものがあるのだが、焦ることもないかなぁと思い直し、今後の楽しみと気長に取り組むことにしますかね。
だってさぁ、他にも観光とか色々やりたいこともあるしね。
ということで、博物館巡りも一旦キリを付けて、しばらくは街の中をあちこち回ってみようという話になった。
前もってミリアに見どころなどを色々教えてもらったが、ついでにこの街以外の事も少し聞いてみた。
この街は大きな河を接するように開かれた街で、その河を水運に瑠葉することで発展してきた歴史を持っているんだそうだ。
なので人や物の流通が盛んで川沿いには大きな市がいくつも立っており、また各地の特産を扱う商店の集まった専門街もあちこちにできていて、どこもかなりの賑わいを見せている。
そういう場所は思わぬお宝に出会えるかもしれないから、ぜひともチェックしておきたいよねぇ。
そしてここから少し川を下っていけば河口付近に海に面した大きな港湾都市もあるようだ。
海洋貿易により、海外の珍しい品々がたくさんあるらしいから、そこを回るのも楽しみだ。
他には山岳地域には鉱山街が、高原地域には果樹や畜産が盛んな村があるという。
鉱山外にはまだ出会ったことのないドワーフが多く住み、ラノベのお約束と言うか鍛冶が盛んなのだという。
反対に高原の村は農業が盛んで、美味しい料理とお酒、乳製品が名物なんだって。
経済というか商売を優先するウエスタリアの政治体制故か、地域ごとの専門性が際立っているところはなんか前世の日本を思い出されるんだよねぇ。
そういう感じで地域色がはっきり出ている各地をめぐる観光には嫌がうえにも期待が高まるってもんでしょ。
そういうことでパーティの今後の行動予定としては、博物館の仕事が一段落したら各地をゆっくり巡ってみようということで意見が一致したのだった。
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