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#63 そろばんで遊んではいけません

 縄でグルグル巻に拘束した暴漢達を数珠繋ぎにして引き連れていく私たち。


 反抗的な態度で進行を妨げようとするものは、ミリアのペネトレーが容赦なく弱めたレーザー攻撃を加えて、反抗の意思を挫いていく。


 そしてようやくたどり着いたウエスタリアの関所前には、入国審査待ちの長蛇の列が出来ていた。


 普段からここはこんなものだと言うミリアは、話をつけてくると言って一人に異国審査をしている役人のところへ向かっていった。


 しばらくして数人の役人を連れてミリアは戻ってきた。


「ハバネ、犯罪者の引き渡しは入国審査とは別で行うそうなので、そちらへ回って欲しいそうなのです。」


 どうやら、犯罪者の引き渡しがある場合は、順番は無視されて最優先に処理してもらえるようだ、うん、待たずに済むのは有り難いかな。


 というわけで、長々と待つ必要もなく事情聴取兼、入国審査となったんだけど、結局は聞き取り調査にかなり時間を取られてしまうのである。


 目に余る行為で当局に目をつけられていたルーデス一派だったが、決定的な証拠がなく放置されていたため、こちらの説明は全面的に信用され彼の査問委員会送りは間違いないのだそうだ。


 そして私たちの入国に関しては、今回の功績とミリアの実家であるストレイン商会の後ろ盾により特にトラブルもなくすんなり完了した。


 懸念だったのが魔族であるラズリに関してだったが、何かトラブルがあるかもと身構えていたけど、こちらも何事もなくあっさり済んでしまった。


 もともと異国、異種族関係なしに手広く商うことを心情とする商人たちが集まってできたウエスタリアだけあって、種族差別とかは基本的にないらしい。


 実際、魔族や獣人が興したという大きな商会もあるほどだそうだ。


 無事に引き渡しと入国審査を終えて、ウエスタリアに足を踏み入れた私たちの前に、ストレイン商会の迎えだという人物が現れた。


 目の前に現れたのはなんとやり手のナイスミドルと言った風貌のミリアの父親だった。


 驚くミリアをよそに、私たちは大歓迎されているようだった。


 ミリアを通してだけどこれまでに、昔の流れ人が残した用途不明の色々に多少アドバイスした来たんだけど、それが商会の業績アップに繋がったんだって。


 その感謝の意味もあって、この先の宿泊先も含めて滞在中の面倒は全部を商会が面倒見てくれるらしい。


 ひとまず、中央通りに面した一等地に立つ商会の本店に招かれ私たちは、来賓用途思われる豪華な部屋に招かれ、トップその他幹部と思われる人たち一同に頭を下げて感謝された。


 まあ、いきなりの光景に私たちは全員ドン引きだったんだけどね。


 ミリアの父親と補佐役のような人だけを残して幹部たちが去ったあと、父親が砕けた口調で話しかけてきた。


「はじめまして、私がこのストレイン商会の当主でミリアの父親のデルガーだ。

 ミリアを助けてくれたことと、ミリアを通して流れ人の情報をもたらしてくれたことには、感謝をしてもしきれない。

 本当にありがとう。」


 厳しそうだった表情がその一瞬、父親の顔になっていたような気がした。


 照れた表情をごまかすように話題を変えるミリア。


「えーと、そんなことよりお父さん、ハバネたちが過ごす拠点は用意してくれたのです?」


「ああ、心配するな。お前の言っていたすべての条件を満たす物件を用意してある。

 ここからそんなに遠くないから、後で案内させる。

 ただ今日だけは、歓迎の宴を用意してあるから屋敷に泊まっていって欲しいがな。」


 宴と聞いて顔をほころばせているのは、ルミーナ、フィーリア、ラズリの食いしん坊共だ。


「しばらくはこの地にとどまると聞いているが、なにかやりたいことや行きたいとこはあるのか?」


 とりあえず、流れ人の残したと言われるものを見たいと言うと、それならば良いところがあるという


 ミリアに是非にと誘われていた使途不明商品倉庫、もとい流れ人歴史博物館を訪問すればそこで色々見ることが出来るはずだと言うので、そこで色々話を聞かせてほしいらしい。


 というか、そもそも私たちを招待した目的がそれだったみたいだし、私も色々諦めていたものが手に入りそうで、これがウィンウィンってやつだね。


 ミリアの父親であるデルガーに招かれた屋敷では、豪勢というか、懐かしの和食が大量に振る舞われ、忘れられない味を心ゆくまで堪能して、そのままその屋敷で一泊した。


 ちなみに、ここでの私たちに拠点となる住宅はすでに確保されており、それ以外にも私たちが滞在するための準備はすでにいろいろ整えられているそうだ。


 翌日、上等な朝食を食べた後、ミリアの案内で当面の拠点となる家屋へ向かう。


 たどり着いた家屋は、ちょっと裕福な庶民が住むような、まあまあ大きな家という感じで、大きなお屋敷だったら持て余すかもという懸念は回避された。


 広さも部屋数もちょうど良い感じでなかなか快適そうな家だったが、立派なお風呂があったのが一番うれしかったかな。


 一応はミリアの部屋もあるのだが、当分商会の方で雑務をこなさなければならないようで、合流は暫く先になると言って嘆いていた。


 まあ、今日は例の博物館への案内ということで一緒に行動するんだけどね。


 その博物館はストレイン商会の持つ倉庫の一つをそのまま使っているというが、早い話、使いみち不明の品で埋まった倉庫を少しでも有効活用しようとして博物館化したのが真相なのだそうだ。


 倉庫まで全部確認すると数日レベルではとても済みそうにないので、とりあえずは陳列してあるものだけ見れば良しということになった。


 博物館を訪れた私たちは、ミリアを先頭に受付をすんなりと通過する。


 本来はギルドカードなどで身元の確認が必要なのだそうだが、まあオーナーの娘の連れはスルーだよね。


 展示物は全て使途不明なものではなく、希少価値の高い遺物などのコレクションも展示されている、というかそっちが本来の展示物で、使途不明品は物珍しさと少しでも情報収集できればとの意図での展示である。


 私はもちろん使途不明品を中心に見て回っている。


 もしかしたら、欲しくなるような前世のアイテムがあるかもしれないからね。


 他のみんなはそれぞれ興味のあるものバラバラに見て回っている。


 ミリアは私から離れる気はなさそうだけど。


 特にラズリとアオは楽しそうに館内を走り回っている。


 そうやって一つずつ展示品を見て回る私は、いくつか気になるものに目が止まった。


 その一つは金属棒の途中に鎖の持ち手らしき物がついており、片方に釣り皿が、反対側には細かく目盛りが刻まれている。


使用方法は完全に不明でやじろべえでは?などと説明されているが、私はひと目見てそれが何か見当がついた。


 それと同じ用途のものを前世で、祖父の家の蔵の中でも見たことがあったのだ。


 私はそれに足りないものを、ドローン創造で即座に作り上げる。


 不思議そうに私のしていることを見ているミリア。


「ハバネ、それが何か分かったのですか?」


 ミリアの前で作りだしたパーツを目盛りの刻まれた金属棒を差し込む。


パーツを滑らせて位置を調節すると、鎖の持ち手で下げられた金属棒が水平にバランスをとって静止した。


「これは、”竿計り.”

 私が追加した重りの位置で重さを量る道具だよ。

 今は適当に作った重りだけど、ちゃんと使うなら正しい重さにする必要があるかな。

 天秤計りより簡単に重さが測れるから、行商なんかには便利なアイテムかね。」


「それは凄いのです。

 こんな便利なものがあったとは?!

 やはり、流れ人の遺産は侮れないのです。」


 感心するミリアをよそに、どこからともなく商会の職員らしき人たちが現れると竿計りを回収して大急ぎで出ていった。


 次に目が行ったのは、玩具と思われていた”そろばん”だ。


 子供が振り回してカチャカチャ音がする玩具ではないかと思われているらしい。


 手にとって目の前でミリアに簡単な計算の仕方を見せると目を輝かせて喰いついてきた。


「面倒な計算がこんな簡単にできるなんて、商人にとっては垂涎のアイテムなのです。

 やはり、ハバネさんをここにつれて来て大正解だったのですよ。」


 大事そうにそろばんを胸に抱いて満面の笑みのミリア。


「どうですか?

 他に何か気になるものはないのですか?」


 急かすように私を促すミリアのテンションが、なんかちょっと危ない気がしてきた、かも。


 そう言われて周囲を見渡す私は、何かの部品か、残骸らしきものに気がついた。


 それは、櫛のようにたくさんのスリットの等間隔に入った金属板と、細かな棘がたくさん植え込まれた乾電池ほどの金属円柱だけだった。


 でも、それを見て私はそれが何かすぐに分かった。


 手に取りそれを見つめる私に、ミリアは不思議そうに問いかけてくる。


「それが何かわかるのですか?

 私達には全く意味不明なもののひとつなのですが、過去の流れ人がとても大切にしていたと言い伝えられているのです。」


「うん、たぶんこれは私のよく知っているものだと思うよ。

 ちょっと待って、これなら私のスキルで再現できるかも。」


 そう言うと私はドローン素材創造スキルで、謎のパーツと同じような金属を生成すると、今度はそれをドローンパーツ加工スキルでいくつかの歯車に作り変えた。


 できあがったパーツと謎のパーツを合わせて何かを組み上げる私。


 前世でドローンをパーツから組み上げていた私には、この程度は細工は大したことはなかったりする。


 カチカチという金属音をさせながら出来上がった小さな機械についた蝶々にような部分を回す。


 そして真剣な顔で私のすることを凝視しているミリアの目の前にその機械をコトリと置いた。


 手を話すと綺麗な音で曲を奏で始めたその機械「オルゴール」から流れてきたのは、懐かしい「エリーゼのために」だった。


読んでいただきありがとうございます。


これからも応援してもらえるとありがたいです。

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