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#61 標的はミリア

「まったく、忌々しいストレイン商会めっ!」


 中年と呼ぶにはいささか早いが、まともと肥満の間ぐらいには緩んだ風貌の男が、側近らしき数人の男たちと、ランプ一つの薄暗い部屋のテーブルで酒を煽っている。


 男の名は、ルーデス。


 ミリアの実家であるストレイン商会と商売敵として長年対立してきたゲスレアルマーケットの代表だ。


 だが、商売敵とは言ってもストレインが売り出す斬新な新商品を片端から真似た偽物商法というあまり褒められたものではない儲け方をしている二流の商人でもある。


 そしてミリアがハバネと出会ってからの新商品に関しては異世界知識が絡んでいるため、安易な模倣がほぼ不可能であり誰が見ても粗悪品と分かるものしか作れていなかった。


 当然そんなものが売れるわけもなく、彼の商会は業績を右肩下がりで落ち込んで行ったのである。


 そんな追い詰められた彼が選んだ手段は、(彼が勝手に元凶と考える)ミリアの排除とその際に彼女が集めてきた成果を横取りするという、いかにも小悪党らしい結論であった。


「おい、ミリアがウエスタリアに戻ってくるというのは間違いないんだろうな?」


「はい、間違ぇねぇです。

 あの娘が行き先を伏せてクロスロードを出立したのは確認済みでさぁ。

 そしてそのタイミングで娘の実家が慌ただしい動きを見せてるんで、まず間違いなく娘の行き先は実家に間違いねぇと思いやす。」


「それで動向は掴めてるのか?」


「それが途中の町で宿を取ってる形跡がねぇみたいで、足取りが掴めねぇんです。

 たぶん街道を外れて野営をしてるんだと思いやす。」


「ふん、小娘のくせに猿知恵が働くらしいな。小賢しい奴め。」


 そのときの私たちはホバーを思っきり乗り回したくて、あえて人目がつかない場所を選んで走っていただけなんだけどね。


「ですが補給なしの旅程なら、そろそろこちらにたどり着いてもおかしくわねぇはずです。

 それにクロスロードからならこの渓谷を通る以外、まともな道はありませんぜ。」


 クロスロードの街からウエスタリアに向かう場合、ウエスタリアのすぐ手前にある幅の狭い渓谷を抜ける以外にルートはない。


 実際、この渓谷はウエスタリアへの進路を遮るように連なる絶壁にあるのだ。


 絶壁の正体は太古にできた断層で、ウエスタリア側が数十メートルの高さで盛り上がっており、長年の風化によって出来た渓谷が唯一の通り道になっているのだ。


「とにかく、奴らを襲ってとっ捕まえるんだ。

 しばらく軟禁しておいて、ストレインがぶっ潰れたら開放してやるさ。

 商売の諍いで殺しをやると、ウエスタリアで商売できなくなっちまうからな。」


 当然私たちも、どんなルートを辿ろうとも必ずここを通ることになるわけなのだが、ルーデスたちはここでミリアを襲う計画を立てていたようである。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

「ねえ、ミリア。ここを抜けたらいよいよウエスタリアなんだよね?」


「はい、この断層渓谷を抜けた先がウエスタリア国境の関なのです。

 そこを越えた先が私が生まれたウエスタリア商業小国群なのです。」


「それじゃあ、サクッと渓谷を越えちゃおっか。

 と言ってもこの狭さじゃホバーに乗ってくのは迷惑になりそうで、このまま行くのは無理そうだね。

 しかたない、こっからは歩いて行こっかね。」


 街道に人がいなかったのをこれ幸いに、渓谷の間近までホバーで乗り付けたんだけど、そこで皆降車してボバーはさっさと収納する。


 渓谷の細道は、数キロ程度のゆるい上り坂ということなので、のんびり歩いて行くことにする。


 左右にそびえる見上げるような絶壁には、くっきりと地層が見えていて、そのくねるような縞模様はなかなかの見応えがあり、見慣れぬ景観を堪能しながら皆でテクテク歩いて進んでいく。


 ふと、リーリィが何かを察したのか、私に声をかける。


「ハバネ、この先、なんか変な、魔力反応が、ある。」


「あれ? でもサテラには何も反応なかったよ。」


「かなり、微妙な反応。

 ピープじゃなきゃ、見つけられなかった、たぶん。」


「きっと、身を隠すための隠蔽魔法か、魔道具なのです。

 多分、この先に襲撃者が潜んでいるかもなのです。

 こんなことをしそうな連中に少しばかり心当たりがあるので、間違いなく狙いは私だと思うのです。」


 どうやら、仕掛けてきたのはミリアの実家である商会の商売敵らしい。


 ミリアの目利きと、最近は私が教えている流れ人の知恵なんかが、ミリアとこの商会を大躍進させているみたいで、この商売敵さんはそのあおりを目一杯喰らっているようだ。


 そんなこんなで追い詰められたのが、今回の凶行の原因らしいのだが、どうやらその兆候はすでに商会の方で掴んでいたらしく、注意するよう助言をもらっていたとのこと。


 なんとも荒っぽい話に妙な表情をしていた私に、ミリアが慌てて弁解の言葉を口にする。


「こういう荒っぽい闘争はあくまでも商人同士のもので、一般人や顧客を巻き込まないのがウエスタリアの暗黙の掟なのです。

 まあ、そういう荒っぽさもウエスタリア成立から残る慣習みたいなもので、守るも攻めるも己の力で!というのがウエスタリア商人の信条なのです。」


「はぁーー、とりあえず襲ってきたら反撃して叩き潰して構わないんだよね。」


「はい! ハバネの好きなように思いっきりヤッちゃってくださいなのです。」


 今日のミリアは妙に好戦的な気がするけど、この辺がウエスタリア商人気質なのかも。


 そんじゃぁ、ミリアの初陣なんだし、いっちょ派手に行きますか!


読んでいただきありがとうございます。


これからも応援してもらえるとありがたいです。

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