#60 閃光の矢
みんなの目の前で自在に空をかけるドローン。
ルミーナもリーリィも安心の表情でミリアのドローンを眺めている。
「もう、ドローンの基本はマスターできたみたいだね、ミリア。」
「はいなのです。 ほんとに凄いのです。
思う通りに動いてくれるのです。
いえ、思った以上に動いてくれます、まるで従魔のようなのですよ。」
「まあね。 私のドローンは基本学習型だから、一緒にいればいるほどミリアの思考を覚えて、より思いを汲んでくれるようになるよ。」
「もう凄すぎなのです!
伝説のゴーレムや魔導人形並なのです。」
「もう、褒め過ぎだって。
それじゃあ、そろそろミリア専用の能力を試してみようか。」
そう言って私は予め用意しておいたテスト場所に向かう。
そうなのだ、ミリアのドローン”ペネトレー”の能力は少々過激なんだよねぇ。
だから、専用の試験場を用意したんだよ。
「ドローン”ペネトレー”の専用能力は、光線砲なんだ。」
「「「「光線砲?!」」」」
「ねえ、光って明るくするだけじゃなくて、力があるって知ってた?
光も使い方次第で、物を焼いたり貫いたりできるんだよ。」
私の言うことを理解できずに、呆けた表情のみんなの中で、さすがにミリアだけは思い当たることがあったようだ。
「何かの古い伝記で読んだことがあるのです。
智謀に優れた将軍が難攻不落の関を、数千の兵士に持たせた鏡のように磨き上げた盾を使い、集めた光で燃やし尽くしたというお話だったのです。」
「そうだよ。
お日様の光でさえ、集めて束ねれば凄い力になるんだ。
ペネトレーには、お日様の光より遥かに強い力を持った光”レーザー光”を糸のように集約した光線砲を使えるにしたというわけ。」
「よくわからないのですが、砲ということは何かを打ち出して攻撃する武器なのです?」
「大雑把に言えばそんな感じかな。
ミリアが中長距離用の攻撃手段が欲しいって言ってたから、アレコレ考えた末にたどり着いたのが、どこからでも敵を撃ち抜ける武器だったんだよね。
ほら、その本体部分にある大きな目みたいなのがその武器だよ。」
飛んでいたペネトレーを捕まえて、しげしげとモノアイを見つめるミリア。
「ということは、この目の部分からすごい力を持った光が出るというこのなのですか?
何かピンと来ないのです。」
「まあまあ、そこのところは一度試してみれば分かると思うよ。
とりあえず、あっちに標的を用意しておいたから、ここからあれを撃ってみて。
やり方は、命中させたいところを明確にイメージして、そこに弓矢を打ち込むような感じでイメージをペネトレーに伝えてみて。」
事前に準備しておいた鋼鉄製の人型、人のシルエットをかたどった鉄板を的と並べておいたんだよね。
かなりの厚みを持たせておいたし、簡単に壊れることはないだろうから、じっくり射撃訓練できると思う。
ミリアのいる位置からほぼ100mほどの場所に標的があるが、この距離は高レベルの弓の使い手が狙って当てられる限界と言われる距離らしい。
「そんじゃ、ここから一発撃ってみよっか。」
「分かったのです。
まずは、頭を狙って撃ってみるのです。
ペネトレー、行くのです!」
ミリアの頭上に漂っていたペネトレーのモノアイが一瞬の閃光を放った。
・・・・・
「・・・ハバネ、あのー、撃ったのです、が。」
派手な爆音も衝撃も何もなく、周囲には静寂だけが広がっていく。
「まあ、光線兵器ってこういうもんだよね、うん。
それより、的には命中したのかな?」
その場の空気を書き換えるため、強引に話題転換を図る私。
そして確認した鋼鉄の標的は・・・、シルエットの頭に当たる部分に1cmほどの穴が空いていた。それもしっかり裏側まで貫通した状態で。
「えっ?! あっさり貫通?!
あの的を軽々と貫通できるって、テクトの防御障壁でも防げないんじゃないの!?
もしかしてまたやり過ぎちゃったかな。」
あっ、ルミーナやリーリィの視線が痛い。
「ミリアお姉ちゃん、凄いね。
あっという間に穴が空いたよ。
何が起きたのか、ラズリ全然見えなかったぁ。」
「やっぱ、ハバネが作るものはどっかおかしいもんばっかりだなぁ。
こんな魔法、見たことも聞いたこともないぞぉ。」
ラズリやフィーリアにはなんかウケてるみたいだけど。
「あー、もういいや!
ミリア、標的はまだまだあるから、この際いろいろ試してみておこう。
細く絞った威力以外にも、あえて絞らずに熱線で相手を焼いてみるとか、連射してみるとか、一度に複数撃ってみるとか、とにかくいろいろ試してみよう。」
そのまま私のアドバイスや、リミーナたちみんなのリクエストに答える形でミリアはペネトレーの能力を色々試してみた。
そしてその結果は・・・
「「「ハバネ、ヤリ過ぎ! 少しは自重しろ!!」」」
「ええーーーっ!!」
全員の総ツッコミをウケて、凹む私。
現時点でのペネトレーの能力はというと、
・正確に狙撃可能な距離は、ミリアが視認できる範囲である。
(ただし、遠視の魔法や望遠鏡などを使えば、距離は更に伸びる)
・絞り込んだレーザー光線を直接防ぐことはほぼ不能。
(私も含まれるが、防ぐ手段がないわけではない)
・手のひら程度の範囲に絞り込んで撃った場合、貫通はできないが対象を焼くことができる。
(それ以上のサイズに拡散した場合は、極端に威力が落ちて攻撃力は無くなる)
・雨中、霧中、水中では威力が大幅に減衰する。
(プリズム効果により威力が拡散霧消するため)
・光線の威力はミリアのイメージ次第で非殺傷から瞬殺まで調整可能。
(長距離、高威力の場合はミリアの魔力を大きく浪費する)
・今のミリアが同時に狙えるのは2箇所まで。
露出した肌に火傷を追わせる程度に威力を抑えれば、かなりの広範囲に散弾のように打ち出せる。
(有効な威嚇手段になりそう)
などなど、実際にテストしてみたら私が驚くような性能連発で流石にちょこっとビビってしまった。
使い勝手の良い弓矢的な何かを作るつもりだったんだけど、空想科学的びっくり超兵器ができてしまった。
単機で相手が探知不可能な超遠距離から百発百中の狙撃が可能で、迫りくる軍隊を面で威嚇できるって、どう考えても盛り過ぎだよねぇ、うん、知ってた。
ううー、今夜はリーリィのお説教が確定かな。
とりあえず、ミリアは好んで戦いをするような娘じゃないし、その辺をちゃんと理解した上でドローンを使ってくれると思う。
これで後方からミリアが的確に支援攻撃を加えてくれれば、ルミーナたちも安心して攻撃に専念できそうだ。
それに念話が使えるようになるから、別れて行動していても状況がわかって安心できるしね、今後のパーティでの活動も色々やりやすくなるなぁ。
なんて感じで今後のことなんかをもやっと考えていたら、逃げるラズリのぷちテクトを、ミリアのペネトレーが追いかけて狙い撃つというドローン版追いかけっこが始まっていた。
「ミリアお姉ちゃん、こっちだよ。
ぷちテクトにまだ一回も当たってないよぉ。」
「むぅー、ラズリちゃんのドローンはすばしっこいのです。
でも、いつか必ず一矢報いるのです。
まだまだ行くのです、待てーぇ、ラズリちゃんのドローン!」
何やってんだかなぁ。
でもまあ、ミリアもレーザーの出力を最低に抑えてるようで、流れ弾で誰かが怪我したり、付近を延焼させてしないようにちゃんと気を使えてるようだし、悪用や乱用の心配はなさそうで安心した。
ペネトレーはペネトレイト(penetrate:突き刺す、貫く)から来ています。
安直で申し訳ありません、ははは。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




