#55 とある商会にて
今回ちょっと短めです。
ウエスタリア商業小国群に本店を構える大陸でも名の通ったストレイン商会。
そこの商会長、いわゆる商会のトップが私、デルガー・ストレインである。
ストレイン商会は主に仲買と運送をメインに商いを行っており、物の流れを握って利益をあげる商人だ。
ある地方にありふれたものを安く仕入れ、それが珍しいという別の土地に行って売り捌く事で利益を生み、またその輸送時に別途依頼人から荷物の輸送を請け負う輸送業も兼ねる事でさらに売り上げを伸ばしている。
そんな私は姉妹を娘に持つ父親でもある。
この商売において私の娘の一人であるミリアメーサが自身の趣味を兼ねている諸国巡りは、ミリアメーサの目利きの高さもあって新たな商材探しという面で大きく商会の利益に貢献してくれている。
ミリアメーサは私の娘の中でもとびきり変わった子供だった。
元々頭の良い子供だったが、それ以上に好奇心の高さが飛び抜けていた。興味を持った事柄にはトコトンのめり込み、周囲が驚くほどのスピードで極めていくのだ。
そしてその興味はもっぱら魔法や魔道具に向いており、成人が近づいてきた頃には、その筋で一目置かれる存在にまでになったしまった。
そんなミリアメーサは、新しい魔法理論や新型魔道具、発掘された古代の魔導遺物などの噂を聞けば、どこへでも一人で飛んでいくが普通の光景になっている。
ただ、そんな奔放な旅でもお土産と言って持って帰ってくるものはことごとく我が商会の主力商品になる程の逸品ばかりだったものだから、誰もミリアメーサの行動を止められなくなってしまっていたのである。
親としては、娘の奇行を咎めるべきか、商売人としての才能を褒めるべきか大いに迷っているのだが・・・。
そんな中、ミリアメーサはある流れ人と運命の出会い(とミリアだけが思っているようだが・・・)をしたというのである。
私の商会は歴代の商会長からの申し送りとその守備範囲の広さから、過去の流れ人が伝えたもの、重用したものと言われるものを見つけては確保と維持に力を注いできた。
それは、流れ人が重要視するものがことごとく優れたもので、その時代において多大な影響を与えたと言われているからだ。
しかし、伝承でその素晴らしさが伝えられているものの、表舞台に登ったものはその一部に過ぎず、その正しい利用方法が失われたものも数多いのが現状だった。
貴重と言われていても、その使い方がわからない商品は商会の負担になっていたのだが、娘が見つけた流れ人によって、そのいくつかの食材の利用方法がもたらせれたのだ。
これは当商会にとって福音と言って良いものだった。
娘より伝えられた調理方法を早速お抱えの料理人に再現させたが、それら全てが想像以上の美味であった。
その硬さゆえ食材と思えなかった鰹節があれほどの美味のベースになるとか、調理しても大して美味しくなく家畜の餌にしか使えなかった大豆にあんな多様な利用法があるなどとは、全く考えていなかった。
それに、ハバネという流れ人は、ドローンというとてつもない魔道具を使いこなすという。
今後は、彼女を商会の最重要人物として最大限の便宜を図るつもりだ。
幸いにも、娘のミリアメーサが良好な関係を築きつつあるという。
といっても、ドローンという魔道具とそれを使うハバネと言う少女への興味が最優先で、商会のことなど何も考えていないだろうがな。
だが、この絶好の機会を、この幸運とも言える繋がりを商会をあげて強固なものにしなければ・・・。
そんな風にあれこれ考えを巡らす日々を送っているところに、娘から重要な知らせが届いた。
なにやら、流れ人のハンターパーティが厄介事に巻き込まれて、所在を隠すために旅に出るという。
イースタン王侯連合のどこかの王国のお家騒動に巻き込まれた際に見せた彼女たちの高い戦闘力が、厄介そうな連中の興味を引いたらしい。
そんな連中に絡まれる前に、身を隠してやり過ごそうということのようだ。
まだ特に目的地も決まっていないという話を聞き、急いで連絡を取り娘にウエスタリアへ来ることを勧めるように伝えたのは言うまでもないだろう。
こんなチャンスを逃すわけには行かない。
状況からそうそう長くこの地に引き止められないだろうが、それでも出来る限り多くの情報を引き出せれば、不良在庫とも言える流れ人関連の商材に莫大な価値が生まれるだろう。
なにはともあれ、伝承でしか知り得なかった流れ人の話を、実際に今生きている当事者から直に聞けるとあれば、商人の信条を超えて好奇心が疼くのを抑えられそうになかった。
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